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2020年6月1日に改正労働施策総合推進法が施行され1年以上が経ちました。同法にはパワハラを防止する規定が盛り込まれており、パワハラ防止法と呼ばれています。
一部時限措置が取られていた、パワハラ相談窓口が義務化について、2022年4月1日からは中小企業にも適用が開始されます。
この記事では、法律で規定されているパワハラ相談窓口の内容や、実際の運用において注意すべきポイントを解説します。
厚生労働省の「職場におけるハラスメント関係指針」では、相談窓口の整備として以下のような内容を定めています。
制度については、相談窓口の担当者が相談を受けた場合、人事部門と担当者が連携を図れる仕組みを構築することや、留意点を記載したマニュアルに基づく対応を求めています。また、相談窓口の担当者に対しては、対応についての研修を行う必要があります。場合によっては外部の機関に対応を委託することも求めており、ハラスメント対策チームや制度の構築が必要となります。
厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年でパワハラの相談件数が増加していると答えた企業は全体の9.2%、件数は変わらないが14.7%でした。パワハラ問題は頻繁にニュースで取り沙汰されるようになりましたが、今でも増加していると回答している企業がある通り、簡単になくせるものではないことがわかります。
企業の取り組みとして、相談窓口の設置と周知を行っているのは全体の78.6%と高い傾向があります。しかし、実際にパワハラ被害にあった人のうち、社内の相談窓口で相談した人の割合はわずか5.4%でした。
このデータをみると、会社側は相談窓口という仕組みを用意しているものの、それがほとんど活用されていないことがわかります。
パワハラを受けた経験のある人の職場の特徴として、「ハラスメント防止規定が制定されていない」との回答が21.0%に及んでいます。窓口を設けることも大切ですが、利用を促すためには何がパワハラなのかを明確に規定することが重要です。
「職場のパワーハラスメント対策取組好事例集」には、各企業のパワハラ封じ込め事例が掲載されています。その中に従業員数250名の製造業の会社の事例があります。
この会社では、過去にハラスメントを原因とするトラブルが起こりました。そのため、二度と起こさないよう、パワハラ防止に力を入れるようになりました。
手始めに取り組んだのは、ハラスメント全般の禁止規定を作成したことです。パワハラの取り扱いが難しいのは、人によってとらえ方が異なることです。まずは規定を設けて相談窓口を設置するのが良いでしょう。
相談しやすい環境作りも重要です。従業員数9,300名の娯楽業を営む会社では、パワハラの受け皿を4つ用意しています。1つ目は上司や人事担当に相談する通常のルートです。2つ目はコンプライアンスのためのホットライン。3つ目が気軽に心身の相談ができる「グループ相談室」。4つ目が外部の専門会社に委託をしている「相談室」です。
上司からのパワハラに悩んでいても、昇進を気にするあまり人事と直結する窓口には相談しづらいという人もいます。それぞれが持つ悩みや従業員の目線に合わせることで相談しやすい環境を整えることができます。
相談窓口を設けるだけで、パワハラ対策を行っていると過信するのは危険です。法律で定められているからという理由で、中身が形骸化する可能性があります。
「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、パワハラを受けた人の中で社内の同僚に相談したという人が22.0%で最も高くなっています。パワハラを受けている人は身近な人に相談するのが普通です。パワハラ相談窓口が人事部や役員と繋がっていれば萎縮して、気軽に相談できないこともあります。悩んでいる本人が利用しやすい体制を作ることが企業努力の一環となります。
相談窓口の設置の義務化はゴールではありません。これを起点としてパワハラ撲滅へと組織が一丸となって取り組むことに意味があります。組織の規模や職場の環境、取引先・競合他社の状況などを把握し、パワハラ解決に向けた体制作りが今後重要になります。
パワハラがある職場の特徴としてもっとも多いものは、「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」というものでした。パワハラ防止という旗印のもとで活動をするのではなく、職場の風通しを良くし、十分なコミュニケーションがとれるよう改善を重ねることもパワハラを取り除く対策となりそうです。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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