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財務省と内閣府は、7~9月期の法人企業景気予測調査で、「大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス3.3となり、3四半期ぶりに改善した」と発表しました。3四半期ぶりの改善となった背景にあるのは?
大企業の全産業の景況判断指数(BSI)とは、自社の景況感が「上昇」したとみる企業の割合から「下降」したとする企業の割合を差し引いた指数です。
景況感を上昇とみる企業の割合が高くなったのは、新型コロナウイルスワクチン接種が進んだことによる、経済回復に対する期待感が大きく、製造業を中心に企業心理が持ち直したことが影響しているようです。
しかし、前回5月調査時点では、7~9月期は「プラス7.7」という見通しでしたから、予想を大きく下回っています。依然として変異株による感染急拡大への不安が根強く残っていることがうかがえ、業種や企業規模によっても、景況感にはばらつきがあるようです。
業種別では、自動車やパソコン向け半導体の需要が拡大した製造業がプラス7.0で、非製造業は広告収入などが回復基調となったことでプラス1.5でした。また、中堅企業全産業ではプラス0.2ですが、中小企業全産業はマイナス18.0となっています。
先行きについては、大企業全産業が10~12月期、2022年1~3月期でいずれもプラス6.8を見込んでいますが、中小企業全産業はマイナス圏で推移するとみられています。
大企業と中小企業では、景況感の受け止め方は違うようですが、3四半期ぶりプラスとなった7~9月期の景況判断指数が、果たして“景気回復の兆候”といえるのでしょうか。
第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、「3四半期ぶりプラスということは2四半期連続で下降していたものがようやく上昇に転じたということ。景況感の水準はまだかなり低いと見るべき」と、7~9月期の景況判断指数についてコメントしています。
一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主席研究員の小林真一郎氏のコメントは、「プラスに転じたということは5月と比べて業績が改善している企業の割合の方が多いことを示しており、景気にとって明るい材料」というものです。
いずれにしても、新型コロナウイルスの感染状況によって、コロナ前のように経済活動が再開されるのか、自粛傾向が続くのかによって、景気が上向きになるか、それとも停滞が長期化するのかに、大きな影響を及ぼすことになりそうです。
ところで、その景気動向に大きな影響を与える新型コロナウイルスワクチン接種を、政府は「10月~11月の早い時期」に、希望者への接種を完了させる方針です。さらに、個人の行動や経済活動の制限緩和もしていきたいようです。
ところが、ワクチン接種での集団免疫獲得は、欧米諸国の例をみてもわかるように、なかなか難しいようです。さらに年末年始に向けて第6波の感染拡大の可能性も専門家から示され、コロナとの闘いは「2~3年は続く」と言及されています。
現在発出されている緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が、予定通り9月末で解除となり、行動や経済活動の制限緩和となれば、今回の5波以上の感染爆発となるというシミュレーションも公表されています。
そのシミュレーション通りに爆発的な感染拡大となり、もし、5回目となる緊急事態宣言が発令となれば「経済損失は3.3兆円程度に上る」と大和総研は想定しています。
また、上向きの景況感の判断をけん引してきた製造業にも、半導体不足による生産活動が停滞することも考えられ、景気停滞の長期化は当分避けられないのではないでしょうか。
景気動向を示すデータはいろいろありますが、一つのデータだけに頼るのではなく、総合的な判断が必要です。10月1日に金融市場が注目する9月調査の日銀短観(全国企業短期経済観測調査)が発表されますが、そこでどのような景況感が示されるかも注目したいところです。
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