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日本国外において事業展開を行う企業が留意しなければならない税務事項として、企業グループ内取引に係る国際税務の論点がある。本項では、国際税務の中でも重要性の高い項目に関して基本的事項を解説する。
移転価格税制とは、企業グループ内のクロスボーダー取引における取引価格の操作を通じた所得の海外移転を防止するための制度である。国を跨ぐグループ内取引における取引価格の合理性を税務当局に説明できない場合、所得計算上、当該取引は独立企業間価格(グループ企業ではない第三者との取引価格)によって行われたものとみなされ、所得の移転元の国において追徴課税が行われることになる。
日本の親会社に対する経営指導料、ロイヤルティ等といった取引についても移転価格税制の対象となるため、取引価格の妥当性について説明ができるように準備しておくことが必要である。なお、国によっては、移転価格に係る算定方針、算定方法等、所定の内容に関して作成・保管が要請される書類が定められている(移転価格の文書化義務)ため留意されたい。
【移転価格税制が絡む典型取引】・海外子会社との物品売買取引親会社が海外子会社と物品の売買を行う場合、取引当事者双方の所在地国の税務当局に対して取引価格の合理性を説明できるように設定する必要がある。 ・親会社から海外子会社に対する製造技術やノウハウ等の供与海外子会社の利益水準が所在地国の同業他社と比較して高い場合、親会社は日本の税務当局から、当該超過利益の源泉は日本の親会社による製造技術やノウハウ等の提供に起因するものであり、海外子会社からのロイヤルティの回収不足があるのではないかと指摘される可能性がある。一方で、海外子会社の所在地国の税務当局から、親会社に支払ったロイヤルティの金額の一部もしくは全額について損金性を否認される場合もある。 ・海外子会社への貸付日本親会社が海外子会社に資金の貸付を行う場合、利率の設定について所在地国双方の観点から移転価格税制に留意することが必要である。 |
外国子会社合算税制とは、実質的活動を伴わない海外子会社等を通じた租税回避を防止することを目的として、当該海外子会社等の所得を日本の親会社の所得に合算して課税する制度である。海外子会社等がペーパーカンパニー等に該当する場合や、事業基準、実体基準、管理支配基準、非関連者基準または所在地国基準といった経済活動基準のいずれかを満たさない場合は、合算課税の対象となる。
また、海外子会社等が経済活動基準を全て満たす場合であっても、利子や配当、有価証券の譲渡益等の受動的所得は合算課税の対象となる。
なお、企業の事務負担軽減のため、海外子会社等の租税負担割合が一定(海外子会社等がペーパーカンパニー等に該当する場合は30%、それ以外の場合は20%)以上のときは本税制は適用されないことが定められている。
【タックスヘイブン対策税制に係る留意点 】・管理支配基準の充足経済活動基準のなかで、実務上よく問題になるのが管理支配基準である。管理支配基準とは海外子会社等の実体について事業の管理面から判断する基準であり、その判定にあたっては、株主総会及び取締役会の開催状況(場所)や、業務遂行上の重要事項を自らの意思で決定しているか否かといった点等を総合的に勘案するものとされている。親会社および海外子会社等の経理部は、海外子会社等が管理支配基準を満たしているか否か、また満たしていないと考えられる際には日本親会社から海外子会社等に対してどのようにして管理支配権限を委譲するかについて検討する必要がある。 |
租税条約とは、二重課税の排除等を目的として国家間で締結される成文による条約であり、これにより企業等の所得についての源泉地国や源泉税率等が取り決められる。租税条約と各国の国内法が異なるときは、原則として租税条約が優先して適用される。なお、源泉税率等について租税条約よりも国内法を適用した方が有利になる場合は、一般に国内法の規定を優先適用できる(プリザベーション・クローズ)。
なお、本稿の執筆にあたっては以下の執筆物を参考とした。
・CaN International 『特集 -海外取引支援アドバイスのポイント(税務パート)(銀行法務21(経済法令研究会))、2018
・CaN International 『アジア進出企業の会計・税務 事業展開における実務マニュアル』(清文社)、2017
記事提供元
CaN International Group国際会計事務所
CaN Internationalは、日本、タイ、ベトナム、香港、シンガポールに自社拠点及びその他各国に複数の提携先を持ち、新規進出やM&Aサポート、国際税務、清算撤退までの海外事業に関する一連のコンサルティング業務を行うとともに、各国における会計帳簿、税務申告書作成支援等の現地コンプライアンス業務を提供しています。
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