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社外との人間関係に対して、従業員の安全と安心は守られていますか。厚生労働省は、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為を「カスタマーハラスメント」と示し、対策を進めています。ハラスメントは社外とのかかわりのなかでも生まれます。個人の責任や職能で自己解決を求めたり、潜在的かつ長期間に及ぶと離職を選ばざるを得ない従業員がでてくることは否めません。組織の発展のためにも、カスタマーハラスメントに対する体制づくりが求められているのです。
令和元年6月に、労働施策総合推進法等が改正され、職場におけるパワーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが、事業主の義務となりました。
この改正を踏まえ、令和2年1月に、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)が策定されました。
カスタマーハラスメントに関して、事業主は、相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や被害者への配慮の取り組みを行うことが望ましい旨、また、被害を防止するための取り組みを行うことが有効である旨が定められました。
厚生労働省は、カスタマーハラスメントの防止対策の一環として、カスタマーハラスメント対策企業マニュアルやリーフレット、周知・啓発ポスターを公表しています。
令和2年10月に厚生労働省が企業と従業員に対して実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」の結果のうち、過去3年間に相談があったと回答した企業の割合では、パワハラ(42.8%)、セクハラ(29%)についで、カスハラ(19.5%)が高くなっています。
カスハラがあったと回答した企業のうち、92.7%が事案があったと回答しており、カスタマーハラスメントは組織にとって身近な課題になっているとも捉えられます。
また、20~64歳 の男女労働者のうち、過去3年間に勤務先で顧客等からの著しい迷惑行為を一度以上経験した者の割合は、15.0%で、パワハラ(31.3%)よりは、回答割合が低いものの、セクハラよりも回答割合が高いという結果になりました。最も多いのは、「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム(過度なもの)」 (52.0%) 、ついで、「名誉毀損 ・侮辱・ ひどい暴言」 (46.9%)の内容になっています。
一歩間違えれば、コンプライアンス違反を犯すほどの無理を強いられ、取引終了の不安や恐怖から言われるがまま、といった事態に陥ることがあります。逆も然り、自社の従業員が顧客等に迷惑をかけたり、被害を与えたりしていないかとも置き換えることも必要です。
先日、ある会社で、勇気をもって上司に顧客からのハラスメントを相談したところ、「思い過ごし」「原因が不明瞭」と言われ、取り合ってもらえず、自らの対応に不手際があったのではないかと指導対象にまでなってしまったケースがありました。
カスタマーハラスメントとは、具体的にどういったことをいうのでしょうか。仕事をするうえで、改善を目的にしたクレームは貴重な意見として真摯に受け止めなくてはなりません。
しかし、なかには、過剰な要求を行い、商品やサービスに不当な言いがかりをつける悪質なクレームもあります。業種や組織理念により、顧客等への対応方法・基準が異なることが想定されます。しかし、報告・連絡・相談を密に行う上司と部下の間では、カスタマーハラスメントに対する定義への共通認識が必要になってきます。
ちなみに、厚生労働省は、「手段や様態が社会通念上不相当なものであって、労働者の就業環境が害されるもの」として、以下のようなものがカスタマーハラスメントであると示しています。
●顧客等の要求の内容が妥当性を欠く場合
例)
・企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が 認められない場合
・要求の内容が、企業の提供する商品・サービス の内容とは関係がない場合
●要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な言動
例)
・身体的な攻撃(暴行、傷害)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
・威圧的な言動
・土下座の要求
・継続的な(繰り返される)、執拗な言動
・拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
・差別的な言動
・性的な言動
・従業員個人への攻撃、要求
暴言や暴力など、耳や目にインパクトを与え、明確な言語化ができる状況であれば、記録に残しやすく、報連相も行いやすくなります。
常日頃から、カスタマーハラスメントについて向き合い、組織風土を醸成しておきましょう。
厚労省が公表している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、基本的な枠組みを構築するため、以下の取り組みを挙げています。
・カスタマーハラスメントを想定した事前の準備
① 事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
② 従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
③ 対応方法、手順の策定
④ 社内対応ルールの従業員等への教育・研修
・カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応
① 事実関係の正確な確認と事案への対応
② 従業員への配慮の措置
③ 再発防止のための取組み
たとえば、相談窓口の設置は従業員の心理的負担の軽減が期待でき、非常に有効です。
悪質なクレームでも、部署内やチーム間での業務報告の一つとして共有・解決できる場合は問題ありません。
しかし、上司や部下といった日頃の関係や双方の内的評価が影響され、ハラスメントが顕在化しないまま事態が複雑になることがあります。
企業としての信頼喪失や従業員のメンタルヘルスの不調・離職など直面しないように、客観的に相談の対応ができる体制を整えておきましょう。さらに、従業員が相談する際に、事態を冷静に捉えられるように、記録に残すポイントや記録自体が負担にならない雛型を作成しておくと、報告や相談する際、スムーズに行えます。
また、研修での事例検討やロールプレイは、いざというときに大いに役立ちます。接遇を心がけ、誠実に対応していても、難癖や言いがかりをつける人はいます。「カスタマーハラスメント対策」を公式化することで、従業員に関心が芽生えやすくなります。人の意識改革は自分事に捉えたときに、ようやく始まるのです。
企業の健全な発展は従業員の健康的な働き方で成り立っています。社会貢献は社内貢献から始まります。カスタマーハラスメントの取り組みは、従業員個人のキャリア構築を支援すると言っても過言ではありません。本来の業務に安心して打ち込める体制を強化していきましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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