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健康保険組合の財政悪化はなぜ?制度の概要から原因まで解説

公開日2022/06/30 更新日2022/07/01

健康保険組合連合会が4月22日に公表したデータによると、2021年度は約8割の組合が赤字の見込みとなっています。
企業に勤めている会社員と家族が加入する健康組合ですが、その財政は悪化の傾向にあるようです。

健康保険組合の財政が悪化した原因はどこにあるのでしょうか?

今回の記事では、組合の概要や制度のしくみを解説しながら、健康保険組合の財政悪化について重要な論点を整理します。

健康保険組合とは?

健康保険組合は、政府に代わって健康保険事業を行っている公法人です。職場で加入する医療保険としては、健康保険組合の他にも、協会けんぽや共済組合・共済制度、船員保険などがあります。その中でも健康保険組合は、大企業に勤める会社員とその家族が加入する保険です。

健康保険組合が行っている事業は、保険給付と保険事業の2種類です。保険給付は健康保険組合を代表する事業であり、医療費の支払いや給付金の給付などを行っています。病気によって休職をしてしまったり、出産・死亡のような出来事が起こった際に、組合員の状況に応じて適切なサポートをします。

保険給付とともに重要なのが保険事業です。「何かアクシデントが起こった際の救済措置」といった性質を持った保険給付に対して、保険事業は「そもそもアクシデントが起こらないための事業」となっています。疾病予防や施設・設備の充実などが典型的な例です。

もちろん事業を行うには、そのための予算が必要です。健康保険組合の財源は、会社員と事業主が保険料を出し合うことによって賄われます。そのため保険料の収入が減ってしまえば、健康保険組合は「赤字」になってしまい、財政危機に陥ることになります。

健康保険組合の収入と支出

なぜ健康保険組合の財政が悪化しているのかを理解するために、組合の収入と支出について整理する必要があります。先ほども少し触れたように、健康保険組合の収入のほとんどは、会社員と事業主によって支払われる保険料です。

一方の支出は、保険料給付と拠出金が大部分を占めており「義務的経費」と呼ばれます。拠出金は高齢者に関わるものなので、高齢化が進めば進むほど増大する支出です。収入が少なくなればなるほど、そして支出が多くなればなるほど、組合としての財政が悪化します。

健康保険組合の財政が悪化している原因

健康保険組合の財政が悪化している原因は、収入面と支出面の両方から整理できます。まず収入面で言えば、コロナ禍によって企業の収益が悪化してしまい、それに伴って保険料が減少してしまったことが大きいでしょう。

事実、健康保険組合連合会の調査(令和3年度 健康保険組合 予算編成状況について-予算早期集計結果の概要-)によると、平均標準報酬月額と平均標準賞与額がどちらも下がっています。具体的には平均標準報酬月額が前年に比べて1.3%減、平均標準賞与額が7.2%減です。2020年度の保険料収入は8兆2,227億円でしたが、2021年度の保険料収入は、8兆60億円(2.6%減)となっています。

健康保険組合の財政が悪化している原因を、支出面でも考えてみましょう。支出が増えてしまった原因は、主に拠出金の負担が大きくなってしまったためです。拠出金には、前期高齢者納付金と後期高齢者支援金があり、特に前期高齢者納付金の費用が大きくなっています。

具体的な数値を見るために、経常支出の増大について確認しましょう。保険料給付費は前年に比べて1.5%減少していますが、拠出金の合計が3.6%、具体的には1,289億円増加しています。これらと保険事業費を掛け合わせた経常支出は、前年に比べて0.6%増大です。

2022年以降は、戦後のベビーブームによって誕生した「団塊の世代」が後期高齢者となるため、より一層高齢化が進んでいくでしょう。予想される急激な財政悪化に対して、どう対処していくかが課題となりそうです。

保険料率が10%を超えてしまうと「解散」も

健康保険組合は、組合員の状況などに応じて自主的な運営ができるようになっており、給与・賞与に対する保険料の割合を組合独自の数値に設定できます。健康保険組合連合会の調査によれば、2021年度の平均保険料率は9.23%です。名目保険料率として過去最高値であり、実質保険料率を計算すると平均で10.06%となります。

保険料率の10%は、健康保険組合が解散するかどうかの重要な境目です。特にコロナで大きな打撃を受けてしまった業界であれば、保険料率の上昇は避けられないでしょう。企業収益が悪化し、さらには高齢化が進んでいく中で、どのように制度を整えていくかが求められています。

まとめ

健康保険組合の財政の悪化は、今後も継続するとみられています。給与・賞与が保険料とリンクしている関係上、このまま企業収益の減少が続いてしまえば、保険料率が10%を超える組合も多くなってくるでしょう。

収入と支出で分けて考えたことからもわかるように、「収入面」「支出面」それぞれの課題に対応する必要があります。特に高齢化が進んでいる社会で、拠出金計を抑えるのは難しいでしょう。健康保険組合の適切な運営のためにも、制度を見直す必要があるのかもしれません。

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