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高年齢者雇用安定法は、働く意欲のある高年齢者が活躍できる環境を整備する目的で制定された法律です。2021年4月に改正法が施行され、70歳まで就業機会を確保するよう企業に努力義務が課されましたが、実際に取り組みを進めている企業はわずか約3割との調査結果が報告されています。なぜこんなに割合が少ないのでしょうか。
今回は、改正高年齢者雇用安定法の概要と、法で定められた努力義務に企業の取り組みが進まない要因などについて、詳しく解説していきます。
2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法のポイントは、それまでの「65歳までの雇用確保(義務)」をさらに拡大し、企業に対して「70歳までの就業機会の確保(努力義務)」を規定した点にあります。
それまでの高年齢者雇用安定法では、60歳未満での定年の禁止と、65歳までの雇用確保措置を、企業に対して義務付けるというのが基本的な内容です。ここでいう雇用確保措置とは、「65歳までの定年の引き上げ」「定年制の廃止」「65歳までの継続雇用制度(再雇用制度もしくは勤務延長制度)の導入」のいずれかの制度を講じることを指します。ただ、70歳までの就業という点に関しては、何も言及されていませんでした。
それが改正高年齢者雇用安定法では、これまで通り60歳までの定年の禁止、65歳までの雇用確保措置を義務付ける一方で、70歳までの就業機会の確保を企業に対して努力義務として課す内容が追加されました。具体的には、高年齢者就業確保措置として、以下のうち、いずれかの対応を行うよう企業に求める内容となっています。
・70歳までの定年引き上げ
・定年制の廃止
・70歳までの継続雇用制度(再雇用制度もしくは勤務延長制度)の導入。特殊関係事業主(親法人、子法人、関連法人など)に加え、他の事業主によるものも含む
・70歳まで継続して業務委託契約を結ぶ制度の導入
・70歳まで継続して「事業主が自ら実施している社会貢献事業」または「事業主が委託、出資(資金提供)等を行っている団体が実施している社会貢献事業」に従事できる制度の導入
また、高年齢者雇用安定法の第11条では、企業に対して「高年齢者雇用推進者」の選任を行うことが努力義務として定められていますが、今回の改正法においては、この高年齢者雇用推進者が行うべき業務内容も改変されています。高年齢者雇用推進者とは、高年齢者が働きやすいように、作業施設の改善や各種諸条件の整備を図る者のことです。改正法では、70歳までの就業機会確保を含む高年齢者就業確保措置の推進も、その業務の中に追加されました。
企業に対して70歳まで就業機会を確保するよう努力義務を課した背景にあるのが、日本における少子高齢化の進展です。
最新の人口データである総務省の「人口推計」(2021年10月1日時点)によれば、日本の15歳未満人口は1,478万4,000人で、前年比24万7,000人減となり、総人口に占める割合は11.8%で過去最低値です。また、生産年齢人口である15~64歳人口は7,450万4,000人で、前年比58万4,000人減となり、総人口に占める割合は59.4%で、こちらも過去最低値です。
一方、65歳以上人口は3,621万4,000人で、前年比18万8,000人増となり、割合は28.9%で過去最高値です。
つまり、15歳未満および15~64歳未満の人口は過去最低値を更新しているのに対して、65歳以上の人口は過去最高値を更新しているというのが、今の日本の実情であるわけです。若い働き手が減っていくために現状の社会を維持できなくなる恐れがあるので、高齢者を労働力として活用せざるを得ないのが日本の現状といえます。
改正高年齢者雇用安定法で新たに追加された内容は、企業に対する努力義務であって義務ではありません。そのため、法律の求めに応じず、70歳までの就業機会を確保しなかった場合でも、特に罰則規定などはありません。
では、改正高年齢者雇用安定法が施行されてから1年が経過した時点で、どのくらいの企業が70歳までの就業機会を確保しているのでしょうか。株式会社Works Human Intelligenceは、改正法の施行から約1年後にあたる2022年4月11日~28日にかけて、92法人を対象にアンケート調査を行っています。
その調査結果によると、「70歳までの継続雇用制度(再雇用制度、勤務延長制度など)」を導入している企業の割合は26.7%、「定年の70歳以上までの引き上げ」を導入している企業の割合は3.3%、「70歳まで継続的に業務委託契約を結ぶ制度」を導入している企業の割合は2.2%で、残りの67.8%の企業は事実上「何もしていない」という状態でした。つまり、改正法が求める努力義務を履行している企業は約3割で、約7割の企業が何も対応をしていなかったわけです。
70歳までの就業機会確保が企業で進まない理由の一つとして、企業にとって雇用延長するメリットが少ないという点があるでしょう。
60代後半になると若い世代ほど体力があるわけではないため、役員など経営トップ層ではない限り、雇用延長しても若手への教育係などに落ち着くことも多いです。つまり、新規事業の立ち上げや価値を創出するタスクに従事するなど、第一線でバリバリと働く人材でない限り、企業としては雇用を延長するメリットを感じにくい面があります。
この点は企業の側にも問題があり、年齢によって待遇を決定せず、シニアになっても自分で成果を生み出し、独創的な仕事ができる環境を整えることも重要です。「65歳になったから」といって一律に特定の業務(若手の世話係や簡単な事務など)に回すのではなく、一人ひとりの就業者と向き合い、能力に応じた活躍の場を提供できる体制作りが必要といえます。
2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法は、70歳まで就業機会を提供することを目的とした法律です。しかし、70歳までの雇用はあくまで企業に対する努力義務であるため、改正法施行後1年経過した時点でも、約7割の企業が未対応であるとの調査結果があります。
70歳まで雇用を延長することに各企業がメリットを感じるようになるには、シニア層も活躍できる企業内の組織・体制作りを行うことが必要です。法施行後1年足らずでは、そこまで対応できている企業は少ないとも考えられます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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