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かつてないほど賃上げ機運が盛り上がるなか、2023年の春闘がスタートしました。連合はベースアップを含め「5%程度」の賃上げを要求する方針で、経営者側もこの要求を前向きに検討する構えです。はたして物価高に見合う賃上げが実現できるでしょうか。
物価高騰が続くなか、労使双方とも賃上げが必要という認識では一致しています。しかし、多くの労組が、ベースアップを含む賃上げを要求しているのに対して、経営者側は慎重な姿勢を崩していません。
ベースアップは、基本給を一律に引き上げるものです。基本給は1度上げてしまうと、業績が悪化したからといって簡単に引き下げるわけにはいきません。また、残業代や各種手当についても、基本給を軸に算定しますから人件費の総額にも影響します。
そのため、賃上げ要求には定期昇給やインフレ手当などで応じたい、というのが経営者側の本音です。賃金の底上げにつながるベースアップが実現するかどうかは、現段階では見通せない状況といえそうです。
賃上げの手法や賃上げ幅を巡る交渉は、これから本格化することになります。経営者側が労働者側の要求する大幅なベースアップを決断できるかどうかが、2023年春闘の課題となりそうです。他にも春闘の行方を左右することになりそうなのが賃上げ率です。
産業別労働組合の要求も、基本給を一律に引き上げるベースアップで過去最高かそれに迫る高水準の要求を掲げています。国内最大の産別労組UAゼンセンは、ベースアップ4%と定期昇給を合わせて6%程度の賃上げ率を目標にしています。
また、電機連合は、ベースアップに相当する賃金改善分の統一要求額を月7,000円以上、JAM(ものづくり産業労働組合)もベア9,000円と定期昇給を合わせて1万3,500円以上と、連合が示す「5%程度」の賃上げ率を上回る要求を掲げています。
値上げラッシュが続き、今年も1万品目の食品が値上げとなる見通しです。実質賃金の前年割れが続いており、たとえ連合が目標とする賃上げ率が実現しても、物価上昇率を上回ることは難しいかもしれません。
日本の労働者の7割を抱える中小企業に、賃上げが波及するかどうかも、大きな課題としてあげられています。しかし、信用銀行が取引先の中小企業に実施した聞き取り調査では、中小企業の7割以上が賃上げを予定していないことが明らかになっています。
賃金を上げられない大きな要因は、原材料や物流コストを価格に転嫁するのが難しいことです。コスト上昇分を上乗せできた転嫁率は、帝国データバンクの調査によると39.9%でした。
経団連などは、大手企業に価格転嫁に応じるよう求めていますが、なかなか思うようには進んでいないのが実態のようです。
労務行政研究所が実施している「賃上げ等に関するアンケート*」によると、東証プライム上場企業の賃上げ率は定期昇給分を含めて2.75%(8,590円)です。
労働者側が要求する目標の半分程度ですが、それでも実現すれば、1998年以来25年ぶりの高水準となるそうです。
これほど賃上げ機運が高まっているなかで、賃上げ率2.75%という日本の給与水準を、はたしてどのように受け止めたらいいのでしょうか。
*・調査・集計要領
1.調査時期 2022年12月2日~2023年1月16日
2.調査対象 7092人。内訳は下記のとおり。
・労働側
東証プライムおよびスタンダード上場企業の労組委員長等1749人(労組がない企業は除く)
・経営側
全国証券市場の上場企業と、上場企業に匹敵する非上場企業の人事・労務担当部長3975人
・労働経済分野の専門家
主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなど1368人
3.回答者数および集計対象
労働側238人、経営側101人、専門家100人の合計439人。ただし、「③物価上昇への対応」については、労働側270人、経営側130人、専門家101人の合計501人。
経済協力開発機構(OECD)によると、1991年以降30年間の雇用者1人当たりの実質賃金伸び率は、米国や英国の50%超に対し、日本は4.9%とほぼ横ばい状態で推移しています。この給与水準では、優秀な人材の海外流出を食い止めることは難しいかもしれません。
■参考サイト
PR TIMES|労使および専門家の計439人に聞く2023年賃上げの見通し
YAHOOニュース|【現実】中小企業の7割以上が「賃上げ予定なし」で価格転嫁進まず…城南信金が738社調査
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