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近年、AIの開発は目覚ましいものがあり、今後はビジネスのあらゆるシーンでAIを搭載した機器が導入されていくと予想されます。その際に一つの論点となるのが、AIは企業のバックオフィス業務を人から奪ってしまうのか、という点です。
バックオフィスは定型的な作業が多いのでAIで代替可能といわれており、人が担当する仕事がなくなると指摘されています。 そこで今回は、AIの導入がバックオフィスの仕事を人から奪ってしまうのかどうかについて考えていきます。
ビジネスの場におけるバックオフィスとは、経理・会計部門、総務・庶務部門、人事・労務部門などのことです。営業部門やマーケティング部門、開発部門といった企業の売上や利益に直結する部門のことはフロントオフィスと呼ばれ、バックオフィスはフロントオフィスの活動を支える部門を指します。
企業規模が小さい場合は、経営者自らが本業の傍らで行うことが多いです。しかし、ある程度企業が成長し、組織規模が大きくなってくると、バックオフィス専門の人員を雇用する必要があります。
バックオフィスには書類作成、定型的な計算、電話応対など単純な作業も多く含まれており、そこで働く従業者は「事務員」や「事務職」と総称されることもあります。
AI(人工知能)を搭載し、導入により業務の自動化が期待できるツールのことをRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といいます。
RPAは定期的、定型的、反復的な作業については、人の手を借りずにすべて自動で処理可能です。手順や作業ルールがある程度固定している作業は、スケジュール機能を搭載することで人よりも正確に、ミスなくこなせます。
RPAの強みは、休憩時間や休日・時間外といった概念が必要ないことです。人が就労する場合、日本であれば労働基準法に基づいた労働条件のもとで働きます。就労時間は原則1日8時間、週40時間であり、労働時間が6時間を超えるときは最低45分以上、8時間を超えるときは1時間以上の休憩が必要です。また、企業側は毎週1日以上の休日、もしくは4週間を通じて4日以上の休日を与えることが義務付けられています。
しかしRPAは、所定の光熱費さえ支払い続ければ、24時間365日稼働し続けます。休みなく延々と作業を続けるので、RPAが活躍できる分野については、人よりも効果的な業務遂行ができるわけです。
バックオフィス業務には定期的、定型的な作業が多いため、もしAIを搭載したRPAが導入されれば、多くの業務において人が介入せずに対応できます。
しかも、AI やRPAの導入は初期費用や運用費用はかかるものの、バックオフィス部門の正社員を何十人も雇用して給与を払い続ける必要がなくなります。もし支払う給与額よりも導入費用の方が安ければ、人よりもAIやRPAの方を選択するでしょう。 もちろん、労働組合の兼ね合いなどもあるため、すぐに人員削減とはいきませんが。
実はすでに、銀行業界ではその影響が強まりつつあります。銀行業務にはAIやRPAが得意とするデータ入力・計算作業が多く含まれており、最初に人の仕事が奪われる業界の一つが銀行であるといわれています。現在も急ピッチで導入が進められており、日本の各メガバンクは、2020年代中にこぞって数千~数万人単位での人員削減策を進めることをすでに発表しているのです。
また、AIやRPAの能力自体も年々向上しつつあり、今やプロのイラストレーターに匹敵する画像作成能力、プロのライターに匹敵する文書作成能力をもつようになっています。バックオフィス部門の単純作業は、AIやRPAが余裕をもって取り組めるようになっていき、その代替が加速化されていくとも考えられます。
実際、2016年の経済産業省産業構造審議会・新産業構造部会の場において、シンクタンクの調査結果をもとに「AI導入の影響により2030年までに、バックオフィス要因は約143万人減少する」との報告も行われています。バックオフィス業務の多くが、人からAIへと置き換えられるのは間違いないといえるでしょう。
バックオフィス部門で単純な書類作成・管理、データ作成・管理に従事している人は、AIにより仕事を奪われる可能性が高いと言われています。しかし、AIによる代替が難しいとされる業務もあり、その一つが「ストラテジー」の領域です。
ストラテジーとは企業の戦略的な側面のことで、たとえば、企業が行う事業多角化・縮小、M&A、上場準備、業務提携、組織改編などを指します。これらの領域では、経験豊富なプロフェッショナルがチームを組んで取り組むことが求められ、AIでは対応が難しい領域と考えられています。
こうした戦略的な側面には、「財務戦略」や「人事戦略」などの言葉があるように、バックオフィス部門も関わります。企業が戦略的な意思決定を行うには、ヒト・モノ・カネなどの内部資源の配分や活用が欠かせないからです。バックオフィス部門でキャリアを積みながら、経営全般に関われるようなプロフェッショナルとしての将来像を描いていけば、AIに仕事を奪われない経理・人事・労務の専門家となれるのではないでしょうか。
バックオフィスはAIによって仕事を奪われやすい領域の一つです。AIの導入が進むことで、バックオフィス要因の140万人以上が職を失うとの予測さえあります。しかし、AIによってすべての仕事が奪われるわけではありません。
プロフェッショナルとしてのキャリアを積み、AIでは担当できないような業務(たとえばストラテジーに関わる業務)の経験・スキルを身につけることで、その企業にとって欠かせないバックオフィス要因として活躍できるでしょう。
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