公開日 /-create_datetime-/
去る10月19日、企業会計基準委員会は、第512回企業会計基準委員会を開催した。 主な審議事項は以下のとおり。
第511回親委員会(2023年11月1日号(No.1692)情報ダイジェスト参照)に引き続き、「(仮称)中間会計基準等」の開発(原則として四半期会計基準等における第2四半期の取り扱いが踏襲される)について審議が行われた。
今回は個別に検討が必要な論点を整理し、検討が行われた。
⑴ 原価差異の繰延処理
四半期会計基準で、四半期特有の会計処理として認められている原価差異の繰延処理について、現行の四半期会計基準の会計処理および取扱いを踏襲し、(仮称)中間会計基準等においても認める案が示された。
⑵ みなし取得日
金商法の改正により四半期決算日が法律上存在しなくなるため、四半期会計基準の「四半期会計期間の末日」を引き続きみなし取得日とする場合には、決算日でない中間会計期間の期中の特定の期日をみなし取得日とすることになる。このことを踏まえ、四半期会計基準16項に「この決算日には、中間会計期間末日又は、中間会計期間の期間内で適切に決算が行われた日を含む」の一文を追加する案が示された。
委員からは「四半期決算日以外の日も含まれると解する可能性があり、従来の四半期決算日であることがわかるような表現がいいのでは」との意見があった。
⑶ 簡便的な会計処理等
① 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理
これまでの前四半期の貸倒実績率等を用いた簡便法は廃止し、前年度の決算との比較に基づく簡便的な取扱いのみを定める。
② 未実現損益の消去における簡便的な会計処理
前年度の決算との比較に基づく簡便的な取扱いのみを定める。
③ 用語の置換えにより現行の会計処理と異なる結果をもたらす場合があるため検討が必要と考えられる事項
有価証券の減損処理に係る四半期切放し法と四半期洗替え法について、簡便的な会計処理として中間切放し法と中間洗替え法を定めることを原則としつつ、公開草案において、その変更の影響について意見募集を行い、重要な影響がある場合には、これまでの処理を一定期間認めるなどの経過措置を定める等の対応を検討する。
*
委員からは、「③は実務に影響が大きい。何とか現行の実務と同じにできないか」等の意見が聞かれた。
第510回親委員会(2023年10月10日号(No.1690)情報ダイジェスト参照)に引き続き、実務対応報告公開草案66号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い(案)」等のコメント対応と文案検討が行われた。
預託電子決済手段や表示に関するコメント対応について、詳細な説明を加える修正案が示され、特段異論は聞かれなかった。
第511回親委員会(2023年11月1日号(N0.1692)情報ダイジェスト参照)に引き続き、日本公認会計士協会が公表した実務指針等の移管プロジェクトについて、審議が行われた。 今回は、移管基準の公開草案の公表方法について検討された。現時点でASBJの基準開発に伴い公開草案が公表されている実務指針等が複数あるが、その移管時期について、次の2案が示された。
案1:公開草案を公表したすべての実務指針等について改正が完了した後、
改正後の内容で移管基準の公開草案を公表する。
案2:実務指針等の内容に関わる改正に係る公開草案について最終化されて
いないものがあったとしても、一定時期で区切りを設けて、その時点
で有効な実務指針等を対象として移管基準の公開草案を公表する。
また、3月決算の混乱を避けるため、移管基準の最終化を2024年7月以降とする案が示された。
委員からは、案2への賛成意見が聞かれた。
去る10月18日、企業会計基準委員会は第135回リース会計専門委員会を開催した。
第134回(2023年11月1日号(No.1692)情報ダイジェスト参照)に引き続き、企業会計基準公開草案73号「リースに関する会計基準(案)」等に寄せられたコメントへの対応の方向性と個別事項について、審議が行われた。
また、10月19日開催の第512回親委員会でも同テーマについて議論された。
貸手による無形固定資産のリースの一部および借手による無形固定資産のリースについて、現行基準と同様に適用を任意とする提案に対し、「ソフトウェアのライセンスは収益認識会計基準が適用される一方、すべての借手による無形固定資産について適用を任意とすることには懸念がある」と、適用範囲から除外すべきではないというコメントが寄せられた。
これに対し、事務局は「近年、ソフトウェアの重要性が高まっていることは理解できるところではあるが、一方でソフトウェアという領域については、リースなのか無形固定資産なのかサービス契約なのかという区別が難しく、国際的にも十分に整理されていないことから、借手のソフトウェアのリースの適用範囲は、国際的な会計基準と合わせることが考えられる」と事務局案を変更しない提案を示した。
専門委員からは、「利用者サイドからしても、任意適用で大きくバラツキが出てくる懸念があるので、任意適用によるインパクトの程度に関心がある。また、理由付けとして、無形固定資産の区別が難しいという話があったが、有形資産でも同じではないのか。違った理由付けがあるのでは」といった意見が聞かれた。
事務局は「有形固定資産は目に見える物体があって、リースなのかそうでないのかの認識がしやすい。ところが、無形固定資産は契約の設定によってはサービスなのかリースの範疇に入ってくるのか判断するのが難しい。たとえば、クラウド・コンピューティング契約といった新たな取引はリースなのかそうでないのかの判断が難しい」と回答した。 第512回親委員会では事務局案に特段異論は聞かれなかった。
⑴ リース契約条件の変更が生じた場合のリース負債の計上額の見直し
リース負債の計上額の見直しに慎重であるべきとのコメントに対し、事務局は「リース負債の計上額の見直しを行わない場合、リース負債等の計上額が企業の実態を忠実に反映しないことになる。また、本会計基準案39項に定めているとおり、重要な事象または重要な状況に限定したものであるため、実務上の配慮もなされている」として変更しない提案を示した。
専門委員からは賛意の声が聞かれたが、「40項には重要な事象または重要な状況といった文言がなく、取引を想像しにくい」という意見も聞かれた。
⑵ 割引率の取扱いの定め
リース契約条件の変更に関連した会計処理の割引率の取扱いについて定めるべきとのコメントが寄せられた。
事務局は「簡素で利便性が高い会計基準とすることと、IFRS16号との比較可能性の確保および実務における判断コストとのバランスを考慮し、割引率のように詳細な定めについては取り入れない」とする提案を示めした。 専門委員からは、このまま割引率を定めないとすると、企業が混乱するため、詳細な定めを取り入れるべきという意見が聞かれた。
事務局は「記載することはできるが、さまざまなガイダンスが求められるなかでどこかで一線を引かなければならない。また、簡素で利便性が高い会計基準とすることを考えると入れなくてもいいのでは」と回答した。
第512回親委員会では、委員から「事務局提案の理由として、『利便性が高い』が挙げられているが、定めを置いたほうが明確化されて『利便性が高い』といえるのでは」との意見に対し、事務局から「『利便性が高い』とは、各企業で実情にあわせて決めることができるという趣旨」との回答があった。
去る10月24日、企業会計基準委員会は第88回税効果会計専門委員会を開催した。 前回(2023年11月1日号(No.1692)情報ダイジェスト参照)に引き続き、グローバル・ミニマム課税(以下、「GM課税」という)に関する改正法人税等への対応について審議が行われた。これに先立ち、10月19日開催の第512回親委員会でも審議されている。 主な審議事項は以下のとおり。
事務局からは、連結・個別財務諸表の見積りおよび四半期の代替的な取扱いについて、これまでの議論に基づき、次の文案が示された。
連結財務諸表及び個別財務諸表における取扱い
6 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等については、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積り計上する。
四半期連結財務諸表及び四半期財務諸表における取扱い
7 四半期連結財務諸表及び四半期財務諸表においては、前項の定めにかかわらず、当面の間、当四半期連結会計期間及び当四半期会計期間を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しないことができる。
また、四半期連結財務諸表および四半期財務諸表の代替的取扱いを選択した場合に注記を要求する意見が聞かれており、これを踏まえて、次の2案の文案が示された。
四半期連結財務諸表及び四半期財務諸表における注記
【案1】注記を求める場合
11 四半期連結財務諸表及び四半期財務諸表において第7項を適用している場合は、その旨及びその内容を注記する。
【案2】注記を求めない場合(結論の背景で注記を求めない理由を説明)
第512回親委員会で、委員からは、「利用者に有用な情報」、「計上額があるが計上していないケースやGM課税制度の適用外であるから計上していないケース、適用されるか判断がつかないといったケースなど、計上しない理由もいくつか考えられる。理由も有用な情報であり、注記してほしい」など、案1を推す意見が聞かれた。その一方、「すべての企業でなく、重要性が見込まれる企業のみでいいのでは」など注記を不要とする案2に賛同する意見も聞かれた。
これらの意見を受けて、専門委員会で、次の事務局案が口頭で説明された。
前期にすでにGM課税制度に係る法人税等を計上していて、当四半期において、前事業年度において入手した情報に基づいて当期についてもGM課税制度に関する法人税等が重要であることが合理的に見込まれる場合、第7項を適用するのであれば、その旨を「その他の事項」として注記する。
専門委員からは、「重要性の要件が実務で判断できるのであれば賛成」など、本事務局案に賛成の意見が多く聞かれた。
去る10月16日、SSBJは第23回サステナビリティ基準委員会を開催した。
第22回(2023年10月20日号(No.1691)情報ダイジェスト)に引き続き、IFRS S1・S2号に相当する日本基準の開発の審議が行われた。
審議された具体的な検討事項は主に次のとおり。
⑴ 気候関連の指標及び目標
日本版S2基準において、IFRS S2号の定めを取り入れる。また、気候関連の目標の開示については、重要性がある情報の開示を要求するIFRS S1号17項の定めでは、どの目標を開示するかの判断に困難が生じるため、事務局はその対応として次の2案を提案し、案Aを事務局案とした。
【案A】日本版S2基準において、IFRS S2号の定めをそのまま取り入れたう
えで、どのような目標について開示するのかについて、規範性のないガ
イダンスを開発する。
【案B】日本版S2基準において、開示の対象となる目標を識別するための
わが国独自の要件(たとえば、「企業において経営者やガバナンス機関
または個人に定期的に報告されている」、「外部とのコミュニケーショ
ンにおいて用いられている」)を追加する形でIFRS S2号の定めを取り入
れる。
委員からは、事務局案に対し賛意が聞かれた。一方で、規範性のないガイダンスの中身については企業に与える影響が大きいため、十分に検討すべきという意見が聞かれた。
⑵ S1号における指標及び目標
日本版S1基準において、IFRS S1号の定めを取り入れる。
また、⑴と同様に、企業がどの目標を開示するかの判断に困難が生じるため、その対応として⑴と同様の2案を提案し、案Aを事務局案とした。委員からは賛意が聞かれた。
⑴ 絶対総量の開示における重要性の判断の適用
日本版S2基準において、IFRS S2号の定めを取り入れる。
また、日本版S2基準では、IFRS S2号には定められていないものの、より具体的な重要性の判断基準を設けることで、重要性の乏しいカテゴリーについてまで温室効果ガスの排出量の算定を求めないこととし、次のように定量的な重要性の判断基準を設けることとしてはどうかと提案された。
「スコープ3カテゴリー」の15のカテゴリーのうち、温室効果ガスの排出量が最も大きいカテゴリーを特定したうえで、当該カテゴリーの温室効果ガスの排出量の100分の1以下の排出量となることが見込まれるカテゴリーについては、スコープ3の温室効果ガスの排出の測定に含めないことができる。
委員からは、賛意の声も聞かれたが、一方で「数値基準を取り入れる弊害として、スコープ3の総量が小さな会社は、突出したカテゴリーがないばかりに、数千トンといった重要性の乏しいものまで開示しなければならなくなる」という意見が聞かれた。
事務局は「数値基準の弊害は理解しているが、定性的な情報とS1号17項で企業が重要性に関して判断するのは難しいと考え、あえて数値基準を設けている。結局、総量の小さな会社をどうするかという話に行き着くので、よく検討する」と回答した。
⑵ 温室効果ガス排出の絶対総量の開示
日本版S2基準において、IFRS S2号の定めを取り入れる。また、「スコープ1、2、3温室効果ガス排出の絶対総量の合計値を開示しなければならない」とする定めを日本版S2基準に追加する事務局案を示した。
委員は賛否がわかれており、「財務諸表利用者として合計値を使うため開示に賛同する」との意見や、「ISSB基準において義務づけられていない合計値の開示を義務づける必要性はないのでは」といった意見が聞かれた。
事務局は、「意見がわかれているので検討したい」と回答した。
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本記事は、旬刊誌『経理情報』に掲載している「情報ダイジェスト」より抜粋しています。
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