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最近では働き方に関する考え方もずいぶん変わってきましたが、まだまだ「残業しろと命令されたら残業しなければならない」「日曜日にも仕事をしろと上司にいわれたら、休みでも出勤しなければならない」という考えの従業員もいるかもしれません。しかし、残業や休日出勤は、会社が当然に命令できるものではないのをご存知でしょうか。
この記事では、従業員に残業や休日出勤をさせるための最低条件である「36協定」について、基本的な情報と2019年4月に改正される労働基準法の内容についてまとめています。
従業員の労働時間は、一部の例外を除いて、1日8時間、週40時間が上限となります。具体的には月曜日から金曜日の平日に、休憩時間1時間を含めて朝9時から午後6時まで勤務する場合が挙げられます。あるいは、朝8時から午後5時、朝9時から午後6時、朝10時から午後7時の勤務で、昼休み1時間を取るのが通常でしょう。
これ以上、従業員を働かせることは原則として許されないのです。
そして、週に少なくとも1休日、4週で4休日を与えなければなりません。一般的には日曜日をその「法定休日」として、土曜日は会社が独自に休日と定めて、週休2日制としています。休日とはもちろん、仕事をする義務から従業員を解放して、プライベートを充実させ、次の勤務に向けてのリフレッシュを認める日です。
この基本的な勤務態勢に反する労働契約、つまり残業や休日出勤、は法的に無効となります。
ただし、36協定を結ぶことによって「例外的に」残業や休日出勤をさせることができるのです。残業や休日出勤は法律上、あくまでも例外的な措置なのです。
この例外は労働基準法36条1項によって定められていることから、「36協定」と呼びます。
36協定は、事業場ごとに「労働組合」または「過半数代表者」との間で、「書面」によって締結しなければなりません。つまり、従業員側の立場や意見に配慮した、民主的な手続きを踏む必要があり、会社側の都合を一方的に押しつけることはできません。
そうして、できあがった36協定は、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に届けなければなりません。
36協定には、次のことを定めておかなければなりません。
特に「時間外労働または休日出勤をさせる必要があるといえる具体的な事情」は、詳細に書く必要があります。たとえば「繁忙期の一時的な業務量増加に対応するため」といった書き方では、具体性に欠けるものとして労働基準監督署から注意を受ける可能性があります。
労働基準法には、36協定に違反した場合の罰則規定も定められています。そして、36協定がないのに「1日8時間、週40時間」を超える労働をさせたならば、会社の経営者が労働基準法32条違反の罪を犯したことになります。その罪を裁判所が認定した場合、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」の範囲内において刑事処罰の対象となります。
つまり、36協定を取り交わすことによって、経営者は「1日8時間、週40時間」を超える労働も合法化する効果があるのです。これを36協定の「免罰的効力」といいます。
ただし、従業員に残業や休日出勤をさせるためには、36協定を置くだけでは不十分ですので、その点は十分に注意する必要があります。
36協定を置いたことで免罰的効力が生じる事実と、会社が残業命令や休日出勤命令を出せるかどうかは別問題だからです。
残業命令や休日出勤命令を有効に出すためには、36協定に加えて、会社側と労働者側の間で取り交わされた雇用契約(労働契約)の契約書、あるいは就業規則の中で、時間外労働や休日出勤について盛り込まれていなければなりません。
日立製作所残業拒否事件(最高裁判所1991年11月28日判決)によれば、その事業場において適用される就業規則で締結された36協定の範囲内で、一定の業務上の事由があれば労働契約に定める労働時間の延長が認められる旨が定められていれば、その規定内容が合理的である限り、労働者は残業命令に従う義務を負うものとしています。
もし36協定に定めた条件を超えて、従業員に時間外労働をさせた場合には、その超過分について、経営者に労働基準法違反の罪が成立します。
36協定があれば、残業や休日出勤などによって、従業員の労働時間を延長させることができます。ただし、延長させることができる労働時間にも上限(限度時間)があるのです。労働基準法36条2項に定められています。
その「限度時間」は、具体的に次の通りです。
1週間で15時間
2週間で27時間
4週間で43時間
1カ月で45時間
2カ月で81時間
3カ月で120時間
1年で360時間
たとえば、第1週・第2週・第3週に各10時間ずつ、第4週に14時間の時間外労働をさせた場合、「1週間で15時間」「2週間で27時間」の限度時間内には収まっていますが、「4週間で43時間」の限度時間はオーバーしていますので、このままでは違法となります。
もし、これ以上の時間外労働をさせるためには、「限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情」を、改めて36協定で定めておく必要があるのです。
これを「36協定特別条項(特別条項付き36協定)」といいます。
36協定特別条項は、時間外労働時間の限度時間を超えて従業員に働いてもらうための「例外中の例外」ですので、会社側が濫用しないよう、厳しい歯止めが掛けられています。
過労死ラインは、労働法上の規制ではありませんが、もしも過労死ラインを超過した残業のさせすぎによって、従業員が命を落とした場合、会社は労働者健康配慮義務(安全配慮義務)違反として、遺族に対して損害賠償義務を負う可能性が高まります。
36協定について、以下のような法改正が加わります(ただし、中小企業では2020年4月1日以降の適用となりますし、建設業、自動車運転業、医師については、2024年4月まで適用が猶予されます)。
36協定には、新たに次のような事柄が定められることになりました。
また、限度時間規制(36協定特別条項)の例外も加わります。
通常予見できない程度の業務量の大幅な増加などに伴って、やむをえず限度時間を超えて臨時的に労働させる必要がある場合には、月100時間未満、年間720時間未満の延長時間を定められるようになりました。
つまり、36協定特別条項は万能ではなく、法律によって上限が定められることによって、従業員が際限なく残業させられることがなくなりました。いわゆる「ブラック企業」対策であり、従業員を法的に保護し、健康的に働き続けられるための規制です。
さらに、36協定に基づく、時間外労働などの時間制限について、会社が遵守すべき条件も定められています。
つまり、1カ月の時間外・休日労働は100時間未満とし、対象期間の初日から1カ月ごとに区分した各期間に、その各期間の直前の1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月の期間を加えたそれぞれの期間の時間外・休日労働の1カ月平均は80時間以下としなければなりません。
会社が労働組合などとの間で36協定を取り結ぶことは、従業員に対して例外的に、残業や休日出勤をさせることができる最低条件です。さらに「特別条項」の定めで、長時間の残業などをさせることが可能です。ただし、従業員の健康状態(メンタルヘルス)に配慮し、会社の収益性向上の犠牲として、従業員の心身を損なわないよう、常に細心の注意を払わなければなりません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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