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【社労士執筆】令和6年4月以降の障害者雇用における法定雇用率の引上げと支援の強化

公開日2024/11/14 更新日2024/11/13 ブックマーク数
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令和6年4月以降の障害者雇用における法定雇用率の引上げと支援の強化

この記事の筆者
上見 知也
イデアル社会保険労務士事務所
社会保険労務士

IT業界に10年間身を置き、Webサイトの制作者としてチームリーダー等を経験。社労士試験合格後、社会保険労務士法人、一般企業の人事・労務部門での勤務を経て、2023年に独立開業。
主に中小企業の人事労務面のサポートを行っている。

障害者雇用の現状

令和5年6月1日時点において、民間企業(43.5人以上規模の企業:法定雇用率2.3%)に雇用されている障害者の数は642,178人となり、前年より28,220人増加(対前年比4.6%増)し、20年連続で過去最高となっています。

雇用者のうち、身体障害者は360,157.5人(対前年比0.7%増)、知的障害者は151,722.5人(前年比3.6%増)、精神障害者は130,298人(前年比18.7%増)であり、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きくなっています。

実雇用率(常用雇用労働者に占める、障害者である労働者の数)は2.33%、障害者雇用率達成企業割合は50.1%で、障害者雇用は着実に進んでいると言えます。

障害者雇用のご案内

出典:障害者雇用のご案内

障害者雇用率制度

障害者雇用率制度とは、全ての事業主は従業員の一定割合、つまり法定雇用率以上の障害者を雇用する必要があり、民間企業や国・地方公共団体に一定以上割合で障害者を雇用するように義務付けられています。雇用率の対象となる障害者は、身体障害者手帳1~6級に該当する者、知的障害者は児童相談所などで知的障害者と判定される者、精神障害者は、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者のことです。

障害者法定雇用者数と算定方法について(法定雇用率2.5%の場合)

障害者法定雇用者数と算定方法

障害者法定雇用者数と算定方法

出典:障害者雇用のご案内

●令和6年4月1日以降の民間企業における障害者の法定雇用率

令和6年4月1日以降の民間企業における障害者の法定雇用率

出典:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

障害者を雇用しなければならない対象事業主には以下の義務があります
①毎年6月1日時点での障害者雇用状況をハローワークに報告
②障害者の雇用の促進と継続を図るための障害者雇用推進者の選任(努力義務)

令和7年4月1日以降の除外率

除外率制度とは、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、職務の割合に応じて障害者の雇用義務を軽減させる制度の事です。

この除外率制度は、ノーマライゼーションの観点から、平成14年の法改正により、平成16年4月に廃止されました。経過措置として、当分の間、除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、平成16年4月に一律10ポイントの引下げが行われ、平成22年7月に一律10ポイントの引下げが実施されています。

平成22年7月見直し後の除外率設定業種及び除外率

令和7年4月1日以降の除外率設定業種及び除外率は下記となります。(現在除外率が10%以下の業種については除外率制度の対象外となります。)

除外率設定業種及び除外率

出典:障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について

令和6年4月1日以降の障害者の算定方法

週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者について、雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになりました。

週所定労働時間 30時間以上 20時間以上 30時間未満 10時間以上 20時間未満
身体障害者 0.5 -
重度身体障害者 2 1 0.5
知的障害者 1 0.5 -
重度知的障害者 2 1 0.5
精神障害者 1 1※ 0.5

※当分の間の措置として、精神障害者である短時間労働者は、雇入れの日からの期間等にかかわらず、1人をもって1人とみなすこととしています。

令和6年4月1日以降、特例給付金は廃止となりました。なお、令和6年3月31日までに雇入れられた週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度以外の身体障害者及び重度以外の知的障害者については、1年間の経過措置があります。

令和6年4月1日以降の障害者雇用調整金・報奨金の支給調整について

令和6年度からの障害者雇用調整金や報奨金の支給調整の方法については下記の通りとなります。

①障害者雇用調整金の支給について(常時雇用している労働者数が100人超の事業主)
法定雇用率を超過して障害者を雇用している事業主に対し、申請に基づき1人あたり月額29,000円を支給しますが、支給対象人数が10人を超える場合には、支給額が月額23,000円になります。

②報奨金の支給調整について(常時雇用している労働者数が100人以下の事業主)
法定雇用率を超過して障害者を雇用している事業主に対し、申請に基づき1人あたり月額21,000円を支給しますが、支給対象人数が35人を超える場合には、支給額が月額16,000円になります。

令和6年4月1日以降の障害者雇用を支援する助成金

障害者雇用について事業主の支援を強化するため、助成金の新設・拡充がされました。

中高年齢等障害者(35歳以上)の雇用継続を図る措置への助成
障害者作業施設設置等助成金・障害者介助等助成金の一部・職場適応援助者助成金について、加齢による変化が生じることで、当該障害に起因する就労困難性の増加が認められる場合で、継続雇用のために当該障害者の障害特性から生じる業務遂行上の課題を克服するために必要な支援措置と認められる場合に支給されます。支給対象となるのは、35歳以上で雇用後6か月を超える期間が経過している障害者ですが、対象となる障害者、助成率、支給限度額、支給期間等については各助成金によって異なります。

障害者雇用相談援助助成金
一定の要件を満たす事業者として労働局から認定を受けた事業者(認定事業者)が労働局等による雇用指導と一体となって障害者の雇入れや雇用管理に関する相談援助事業(障害者雇用相談援助事業)を利用事業主に実施した場合に支給されます。※助成金は認定事業者に支給されます。

障害者介助等助成金等において次の措置への助成を新設
・障害者を雇用したことがない事業主等が職場実習の実習生を受け入れた場合等
・障害者の雇用管理のために必要な専門職(医師または職業生活相談支援専門員)の配置または委嘱
・障害者の職業能力の開発および向上のために必要な業務を担当する方(職業能力開発向上支援専門員)の配置または委嘱
・障害者の介助の業務を行う方の資質の向上のための措置
・中途障害者等の職場復帰後の職務転換後の業務に必要な知識・技能を習得させるための研修の実施

上記助成金についての詳細は、「障害者雇用納付金関係助成金の主な変更点について」を確認ください。

障害者を雇入れた場合や雇用継続するための助成金

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)
就職が困難な障害者を、ハローワークなどの紹介により、一定期間試行雇用する事業主に対して助成されます。

トライアル雇用助成金 (障害者短時間トライアルコース)
雇入れ後直ちに、週20時間以上勤務することが難しい精神障害者や発達障害者について、3~12か月の期間をかけながら20時間以上勤務を目指して試行雇用を行う事業主に対して助成されます。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
障害者などの就職困難者を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇入れた事業主に対して助成されます。

特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
発達障害者や難病患者を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇入れた事業主に対して助成されます。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
障害者の雇用促進と職場定着を図るために、次の①または②のいずれかの措置を講じた場合に助成されます。
①有期雇用労働者を正規雇用労働者、多様な正社員または無期雇用労働者に転換
②無期雇用労働者を正規雇用労働者または多様な正社員に転換
※助成額は、措置ごとに異なります。

その他支援等

ジョブコーチによる支援
ジョブコーチ(職場適応援助者)による支援は、障害者に対して、職場の従業員との関わり方や、効率の良い作業の進め方などのアドバイスをし、事業主に対して、障害者が力を発揮しやすい作業の提案や、障害特性を踏まえた仕事の教え方などのアドバイスをし、障害者の職業定着と雇用の安定をサポートします。

ジョブコーチの種類
配置型地域障害者職業センターに所属するジョブコーチが、事業所に出向いて支援を行います。
訪問型就労支援を行っている社会福祉法人などに所属するジョブコーチが、事業所に出向いて支援を行います。
企業在籍型自社の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて、自社で雇用する障害者の支援を行います。

もにす認定制度
もにす認定制度とは、障害者雇用の促進及び雇用の安定に関する取り組みの実施状況などが優良な中小事業主(常時雇用する労働者が300人以下の事業主)を厚生労働大臣が認定する制度で、共に進む(ともにすすむ)という言葉に由来し、企業と障害者が共に明るい未来や社会に進んでいくことを期待し、名付けられました。

認定を受けた事業主が障害者雇用の身近なロールモデルとして認知され、地域全体の障害者雇用の取り組みが一層推進されることが期待できます。認定されると、自社の商品・サービス・広告などに「認定マーク」を表示させることができ、日本政策金融公庫の低利融資対象となるほか、厚生労働省ホームページへの掲載など、周知広報の対象となるなどのメリットがあります。

法改正による企業への影響と対応について

令和6年4月1日以降、民間企業における障害者の法定雇用率が変更されたことにより、40人以上の従業員を雇用している場合は1人以上の障害者を雇用する義務があるとともに毎年6月1日時点での障害者雇用状況をハローワークに報告する義務があります。

令和7年4月1日以降の除外率変更により、現在除外率が10%以下の業種については除外率制度の対象外となり、除外率が10%引き下げられた業種については、変更後の除外率により障害者雇用人数を算定することとなります。よって、それらの業種については障害者雇用人数を見直す必要があります。

まとめ

令和6年4月以降の障害者雇用における法定雇用率の引上げと支援の強化について解説しました。

令和4年障害者雇用促進法改正では、事業主の責務として障害者の職業能力の開発及び向上が含まれることの明確化、週所定労働時間10時間以上20時間未満で働く重度の障害者や精神障害者の実雇用率への算定による障害者の多様な就労ニーズを踏まえた働き方の推進、企業が実施する職場環境の整備や能力開発のための措置等への助成による障害者雇用の質の向上などが盛り込まれ、令和5年4月1日以降に順次施行されています。

障害者雇用について、民間企業の実雇用率は着実に進展していますが、障害者が能力を発揮して活躍することよりも、雇用率の達成に向け障害者雇用の数の確保を優先するような動きがあるといわれています。今後は、障害者雇用率を満たすだけでなく、障害者が個々に持てる能力を発揮していきいきと活躍できるよう、会社は障害者と十分に対話し、雇用の質を向上させることが求められるようになります。

【筆者のご案内】
イデアル社会保険労務士事務所
社会保険労務士 上見知也

【参考】
障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について
障害者雇用状況報告の集計結果
除外率制度について 改正後(H22.7~)
特例給付金のご案内
障害者雇用調整金・報奨金の支給調整について
障害者雇用納付金関係助成金の主な変更点について
職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について
障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)


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