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女性のライフステージにおける出産・育児と就労の両立をサポートする制度として、産休や育休が挙げられます。日本では現在、女性の社会進出と子育てしやすい環境の整備が進められていますが、日本以上に女性の社会進出が進んでいると言われる諸外国の制度はどのようになっているのでしょうか?
今回は、産休や育休について、日本と諸外国との制度の違いをご紹介します。
日本では、出産前6週間前(双子以上の場合は14週間前)の産前休業と、出産翌日から8週間の産後休業の取得ができます。産前休業は申請が必要ですが、産後はそもそも就労が禁止されています。ただし、医師が認めた場合のみ6週間で就労できるようになります。
休業の間は、大抵の企業で給与の支払いはありませんが、厚生年金や健康保険料の免除、出産手当金の支給といった支援が受けられます。
出産後は、子供が1歳未満の場合、取得要件を満たせば申請して育休を取得することができます。取得可能な期間は1歳までですが、認可保育所等に入所できない場合や、子供を育てる予定だった人が病気やケガなどで育てることが難しくなったなどの理由があれば、申請をすることによって1歳6か月まで、さらに最長2歳になるまで延長することができます。
育休の取得要件は、次のとおりです。
育休期間は、最初の6か月は1か月あたり賃金の67%、その後からは50%の育児休業給付金の支給があります。また、厚生年金や健康保険などの社会保険料も免除されます。
1人の子供に対して両親がともに育休を取得すると、育休期間を1歳から1歳2か月まで延長することができる「パパ・ママ育休プラス」制度があります。これによって、夫婦がともに子育てに参加しやすいようにしようという制度なのですが、2013年の調査によると男性の育休取得率は2.03%にとどまっており、男性の育休が取得しにくい職場状況がうかがえます。
また、待機児童問題が解消しなければ、女性の復職がしにくい状況が続くことは明らかであり、労働市場から女性が離脱してしまう理由にもなっています。
NGO団体セーブ・ザ・チルドレンが公表した「お母さんにやさしい国ランキング(母親指標:Mother’s Index)」によると、179か国中1位となったのは北欧のノルウェーです。ノルウェーは、徹底した個人主義で知られ男女問わず経済的な独立をする考え方が根付いています。
そんなノルウェーでは、出産前3週・出産後14週(最低6週間が義務)の産休があり、その間は賃金の100%が給付されます。さらに、育休中に関しては、賃金を100%・32週間受け取るか、80%・42週間受け取るかを選ぶこともできます。
また、ノルウェーでは父親の育休取得率は90%と高く、希望すれば子供は必ず保育所に入所できることから出産後に離職する女性はほぼ皆無と言います。出産費用も無料となっており、まさに子供を産みやすく、育てやすい国と言えるかもしれません。
自由と権利を重んじる国、アメリカの子育て事情は日本以上に厳しいと言われています。
アメリカでは、FMLA休暇(Family and Medical Leave Act)という制度があり、出産、育児、傷病、看護・介護の4つの事由に当てはまれば、年間最大で12週間休暇を取得してもよいというものです。ただし、休暇取得中の経済的支援はありません。
この制度では、休暇取得中の女性は無給状態となってしまうため、多くの女性が生活のために休暇取得ができず、出産後すぐに職場復帰することを余儀なくされています。
さらに、この制度の適用条件が「従業員50人以上の企業」で「1年以上勤務した場合」となるため、アメリカの労働人口の40%が適用されないという状況です。ある意味で、厳しい個人主義と言えるでしょう。
こうした状況の改善を訴えて、ハリウッド女優アン・ハサウェイがニューヨークの国連本部でスピーチを行ったことでも話題になりました。いくつかの州や大企業の一部では改善する動きもみられますが、住んでいる州や、就業する企業によって制度の格差があるため、育児環境も格差が激しくなっているのが現状のようです。
少子高齢化問題を抱えているのは日本だけではありません。他のアジア諸国でも同様の問題を抱えており、中でも韓国は最も深刻な国の一つとなっています。
韓国行政機関が発表したところによると、2018年には出生率が1.0人を割っており、「2750年に韓国人は自然絶滅する」という衝撃的な報道まで出ています。出生率が1.0人を割るのは世界でも最低水準となっており、子育てしやすい制度を整備し、出生率改善につなげることが急務となっています。
韓国では、出産前後90日間(45日間は義務)の産休が認められており、その間最初の60日間は企業の有給義務期間として、賃金の100%が給付されます。また、復職後の身分保障もされており、違反した企業へは罰則規定も設けられています。これは日本にはない制度で、妊娠や出産でキャリアが分断されることが懸念される女性にとっては、頼もしい制度です。
育休については、子供が8歳になるまでの間の1年間の取得が可能で、最初の3か月は賃金の80%、4か月目からは40%の給付金が受けられます。ただし、男女が同時に育休を利用することはできませんので、給付金は必ずどちらかの親しかもらえません。
また、育休には時短勤務やそれらの分割取得などのパターンがあり組み合わせて利用することができることから、女性の育休取得は増えており、産休取得者のほとんどが育休取得をするものの、男性の育休取得率は13.4%となっています。
とは言え、多くの女性が就労する中小企業の制度導入率が低く、育児休業給付金もOECD主要国に比べて低いことから、出生率の改善にまでは至っていません。
日本の産休・育休制度そのものは、世界と比べても特に遅れてはいませんが、出産後に女性が復職しても非正規社員の割合が高く、男性は育休取得率の低さが目立つため、こられが改善できる仕組みづくりが課題と言われています。
北欧諸国のように、産休・育休の制度整備が進んでいる国々を参考に、日本でも長期での取り組みをしながら、社会全体での子育てに関する意識の変革が必要なのかもしれません。
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