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最低賃金の適用は、試用期間中の賃金や宿直勤務の仮眠時間、歩合給など、わかりにくいケースもあります。そこで、最低賃金法の基本と計算方法、よくある誤解と留意点などを再確認します。
精神または身体の障害により著しく労働能力が低い者、試の使用期間中の者、基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている者のうち厚生労働省令で定める者、軽易な業務や断続的労働に従事する者に、最低賃金を一律に適用すると雇用機会を狭めるおそれがあるため、企業などの使用者が、所轄労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、個別に最低賃金の減額の特例が認められています(最賃法7条)。あくまで「許可」が必要ですので、注意してください。
「試の使用期間」とは、解雇予告手当を支払うことなく即時解雇が可能な期間である、入社後14日以内のことを言います(労基法21条4号)。
よくある誤解として、試用期間中は最低賃金額を下回ってもよいというものがありますが、一般的な試用期間については最賃法が適用されます。また「試の使用期間」であっても減額特例の許可がなければ最低賃金を下回ることはできません。
深夜労働などにより、最低賃金の改定日をまたぐ勤務が生じる場合があります。
たとえば、東京都は2024年10月1日に最低賃金額が改定されましたが、同年9月30日から10月1日にかけて勤務した場合、新たな最低賃金額が効力を生じる10月1日の0時以降は、新たな最低賃金に基づいて給与計算を行なう必要があります。
労働者がテレワークを行なう場合、労務を提供する自宅等の場所が事業場であると認定されない限りは、労働者の所属する事業場の所在する都道府県の最低賃金額が適用されます。
たとえば、東京都の企業に勤務している労働者が、秋田県の自宅で労務を提供する場合、原則的には東京都の最低賃金額が適用されます。
割増賃金を毎月定額で支給することを、固定残業代(定額残業代・みなし残業代)と言います。
これ自体は、賃金の支払い方法の1つであり違法ではありませんが、実際に行なわれた時間外労働時間等に基づいて計算された割増賃金額が固定残業代の支給額を上回っている場合は、その差額を別途支給する必要があります。
固定残業代を導入している企業には、基本給につき最低賃金額をベースにして設定している場合があります。そのような場合に最低賃金額の引上げが行なわれると、基本給のみを引き上げて、固定残業代の支給額の見直しを忘れてしまうケースが散見されます。
たとえば、固定残業代が45時間分の時間外労働の割増賃金相当額として支給されている場合に、最低賃金額が引き上げられた後も、「残業時間が45時間を超えていないから大丈夫」と考えてしまうことがあります。
実際には45時間を下回る割増賃金しかカバーしていないため、未払残業代の問題が生じかねませんので、注意が必要です。
近時、企業の実務的な対応が急務とされ、大きな政治的争点ともなっているのが、いわゆる「年収の壁」問題です。
「年収の壁」とは、パートタイマーやアルバイトなどの短時間労働者が働く際に、税や社会保険料の負担が生じる年収の基準の通称です。負担により手取額が減少することを嫌い、短時間労働者が就業調整をしてしまうことが、人手不足に悩む企業などにとって頭の痛い問題となっています。
最低賃金額が引き上げられれば、その「壁」に直面するケースも必然的に増えることになります。企業などが「年収の壁」に関して実務的に対応する際は、最低賃金額引上げについても考慮に入れて、自社の賃金制度や採用計画を検討する必要があります。
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