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2020年4月から、職場における受動喫煙防止対策が義務化されることをご存知でしょうか。
違反すると改正健康増進法の規定に基づき過料が発生するため、各企業は来年度に向けて必要な準備・対策を進める必要があります。
今回は職場における受動喫煙、禁煙対策を巡る動向、法制度の現状について解説していきます。
目次【本記事の内容】
たばこの煙は大きく分けて、吸っている本人が吸い込む「主流煙」と、たばこから直接発生する煙や喫煙者が吐き出す煙である「副流煙」とに分かれます。たばこの煙にはニコチンやタール、一酸化炭素といった有害成分が多く含まれていますが、主流煙だとたばこに付いているフィルターを通るのに対して、副流煙はフィルターを通らないもの(たばこから直接立ち上る煙)を含む煙です。そのため副流煙の方が、煙中の有害成分を多く含んでいるといわれています。副流煙を吸い込む「受動喫煙」が重なるとがん、脳卒中、呼吸器疾患など多様な病気のリスクが高まります。妊婦や幼児だと被る悪影響はより大きいともいわれています。
日本における職場での受動喫煙防止対策は、1992年以降、労働安全衛生法に規定されている「快適職場環境形成」の一環として進められ、2003年には各種施設・企業に受動喫煙防止対策の努力義務を定めた健康増進法が制定されました。しかし義務規定ではなかったこともあって、一定の意識の高まり・分煙を進めるなど一部対策が取られるようにはなりましたが、受動喫煙の害が十分に無くなったとはいい切れない状況が続いています。
現状、企業が取り組んでいる受動喫煙、禁煙対策としては、主に「全面禁煙」、「屋内全面禁煙」「空間分煙」「換気設備を整える・禁煙タイムを設ける」の4タイプがあります。
従業員に喫煙習慣自体を無くす取り組みを進め、社内に喫煙室さえ設けないという対策法です。この方針を取る企業では、従業員を対象に禁煙キャンペーンを展開する、企業側が従業員の禁煙治療費を全額負担するなどの対策が行われています。
建物内を全面禁煙にして、屋上もしくは屋外に喫煙エリアを設けるという対策法です。雨除けの屋根や灰皿を設置する必要があります。
建物内に喫煙エリアを設ける対策法です。煙の臭いを遮断できるように、労働エリアから距離を置くなど設置場所に注意する必要があります。新規に設置する場合、空調の整備も含めた社屋の改修が必要となるため、かなり費用がかかります。
職場の換気設備を増やす、もしくは禁煙タイムを設定することにより受動喫煙を抑えるという対策法です。この場合、分煙が十分に行われていないので、一定の受動喫煙はどうしても発生します。
厚生労働省が2010年にまとめた調査報告書(541社を対象としたアンケート調査)によると、就業場所の喫煙対策を何も実施していないとする企業は全体のわずか0.6%にとどまり、ほとんどの企業が受動喫煙を防ぐための何らかの対策を取っています。
具体的に実施している対策を尋ねたところ、最も多かった回答が「喫煙室(喫煙のための独立した部屋)の設置」の57.3%です。以下「全館禁煙(喫煙室を含め、社内に喫煙できる場所を一切設けていない)」が25.7%、「喫煙コーナー(ついたて等で区画された、喫煙可能なスペース)を設置している」が25.1%、「換気等により、有害物質濃度を低くする等の措置を取っている」が18.7%、「場所による禁煙の可否は定めていないが、禁煙タイムを設けている」が0.4%となっていました(複数回答)。全館禁煙に踏み切っているのは規模の小さい企業に多く、企業の規模が大きくなるほど喫煙室を設置し対策を行う傾向がみられます。
冒頭でも述べた改正健康増進法の施行(2020年4月)に伴い、受動喫煙防止対策への取り組みは各種施設・企業が必ず行わなければならないルールとされます。具体的な改正ポイントは、以下の4点です。
①原則として屋内禁煙
②20歳未満は喫煙エリアへの立ち入り禁止
③屋内での喫煙は、喫煙室の設置が必要
④喫煙室には標識掲示を義務化
この改正法の施行によって、各企業は「社内に喫煙室を設ける」、もしくは「社内を全面禁煙にする」のどちらかの実施が義務化されます(罰則規定あり)。そのため、受動喫煙、禁煙対策を全く行っていない企業、あるいは「換気設備を整える・禁煙タイムを設ける」等の対策法しか取っていない企業は、2020年4月に向けて早急の対応が必要です。これから職場に喫煙室を設ける場合、都道府県の労働局に申請すれば助成金(一般施設は工事費用の2分の1、100万円を限度として支給)が出るので、できるだけ活用しましょう。
2020年4月に改正健康増進法が施行されます。制度も重要ですが、やはり大切なのは各職場単位や喫煙者個人単位で受動喫煙に気をつける意識を持つことでしょう。法さえ守ればよいという考え方ではなく、職場組織・喫煙者が最低限持つべき倫理観として受動喫煙対策を考えていくことが大事です。
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