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2015年の国連サミットでは、2030年までに人類社会が達成すべき国際目標として「SDGs(持続可能な開発目標)」が定められました。SDGsは合計17の目標で構成されていますが、「平和と公正をすべての人に」はNo.16に位置付けられている目標です。
今回はSDGsの「平和と公正をすべての人に」に注目し、なぜこのような目標が設定されたのかについて解説していきます。
「平和と公正をすべての人に」とは、すべての形態の暴力を削減し、紛争や情勢不安を恒久的に解消していくことを狙いとした目標です。目標実現のためには、無法地帯と化している地域・分野に法の支配を強化して人権を推進すること、違法兵器の流通を削減すること、開発途上国にグローバルガバナンス機構への参加を求めること等が重要になります。一言でいえば、「争いと差別のない世界を目指す」ということが本目標における基本理念です。
日本には紛争や深刻な民族対立などは生じていませんが、世界には武力を伴う紛争と情勢不安に直面している国・地域は少なくありません。
例えばシリアやイエメン、ナイジェリア、南スーダン、ミャンマー、コンゴ共和国等の国では、紛争・内戦の中で誘拐、強制結婚、性的暴行等の被害にあう人々が発生し、子どもが人間の盾として扱われることもあります。
これら紛争の影響によってそれまで住んでいた場所を追われ、難民となってキャンプ生活を余儀なくされる人も多いです。
さらに近年では、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)に対する差別・偏見の問題も世界的に認識されるようになりました。かつて差別というと人種や宗教によるものがメインでしたが、現在ではそれに加えてLGBTの問題も加わっています。
このような暴力、偏見は世界に多く存在しているのが現実であり、「平和と公正をすべての人に」という目標は、その解決を目指すために設定されたのです。
紛争によって生活を脅かされているのが難民です。紛争による暴力から逃れるために、かつて住んでいた場所を離れて難民となった人が、世界には約6,850万人いるといわれています。
例えば2011年から紛争が続いているシリアでは、多くの国民が難民として他国に移動。ヨルダンに巨大な難民キャンプが形成されています。
さらに南スーダンやアフガニスタン、ソマリアなどでも、これまで100万人以上の人が紛争を理由に国外に移動しました。
難民には女性や子どもが多く含まれ、移動先で苦しい生活を送っています。国際的な支援団体が日々物資を届けていますが、健康で幸せな暮らしが確保されているとは決していえません。
SDGsのNo.16では、紛争等すべての形態の暴力を撲滅・減少させること、あらゆるレベルにおいて有効で透明性のある公共機関を発展させること、そして対応的・包摂的・参加型・代表的な意思決定を確保すること等が盛り込まれ、難民問題に国際社会が取り組むよう促しています。
こうした紛争に巻き込まれるのが子どもたちです。紛争地域で生活する子どもの数は世界で約2億5,000万人に上るといわれており、暴力や迫害によって家族を失う、命を奪われるという事態に直面しています。
また、生まれたときに所属する国・自治体等に「出生登録」をしてもらう、国際社会で認められている子ども自身が持つ権利を、すべての子どもが行使できていないという問題もあります。
例えば日本では、親は赤ちゃんが生まれるとすぐに出生届を市町村役場に提出し、戸籍に登録する必要があります。それにより社会から、医療や教育など必要な公的サービスを受けられるようになるわけです。
しかし現在、発展途上国における子どもの出生登録の数は、実態の半数程度であるといわれています。地方の農村地域では親が出生届の必要性を認知していない場合もあり、子どもの人権を守るためにも、出生登録の重要性を周知徹底していく活動も必要です。
SDGsのNo.16には11個のターゲットが設定されていますが、子どもに対する虐待、搾取、取引およびあらゆる形態の暴力・拷問を撲滅する項目、すべての人々に出生登録を含めた法的身分証明を提供する項目等も盛り込まれています。
「公正」という点では、人種や宗教による差別の問題だけでなく、近年ではLGBTの問題が世界的に認識されるようになりました。
性的マイノリティに対しては偏見を持つ人が多く、結婚や就職において不利になることが珍しくありません。この点は日本社会においても解消されているとは言い難く、今後さらに多様な性のあり方を認める価値観を広めていく必要があるでしょう。
SDGsでは「すべての人々」に対して司法への平等なアクセスを提供すること、法的身分証明を提供することが定められています。
SDGsの達成にあたっては、政府だけでなく企業など民間組織にも役割が期待されています。日本においても、既に「平和と公正をすべての人に」の目標に沿う取り組みをしている企業は多いです。これからSDGsに本格的に取り組もうとしている企業・経営者の方は、平和と公正の理念に対して自社はどのような貢献ができるのか、検討してみてはいかがでしょうか。
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