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LINE社との経営統合などで何かと話題のヤフー。少し前ですが、2019年8月2日に行われた、オフィス用品販売会社アスクルの株主総会において、アスクルに約45%を出資する親会社のIT大手ヤフーは、アスクルの業績低迷を理由に社長を含む取締役4人の再任に反対し、アスクルは新体制が発足しました。
株主総会前に行われたヤフー側の再任反対表明に対しアスクル側は猛反発するなど、両者の対立は以前から表面化していました。単なる親子関係であればただの内部対立ですが、この件に関してはアスクルがヤフーと同様に東証一部の上場企業であることも注目されています。
ヤフー・アスクル問題のみならず、日本の歴史においては、親子上場企業に関する騒動がしばしば起こっています。そこで今回は、親子上場の基礎知識を整理し、親子上場におけるメリットやデメリットを解説します。
目次【本記事の内容】
親子上場とは、その名の通り親会社と子会社の両方が上場している状態です。日本は親子上場をしている会社が多い国として知られ、ソフトバンクとヤフー、NTTとNTTドコモ、日立グループ、日本郵政グループなど、有名企業の多くが親子上場しています。
日本の親子上場の歴史は明治時代までさかのぼり、歴史的に親子上場がグループ内のベンチャー企業を育成する大きな役割を果たしてきました。豊富な資金と優秀な人材を抱える大企業により、親子上場が成功する例は多く、親子共に発展することが経験則として知られているのです。
親子上場することで得られるメリットを、親子それぞれの立場から見てみましょう。
1)親会社のメリット
・親会社が新たな事業に投資するための資金を、子会社の市場への売却により調達できる
・子会社の上場による価値の上昇と共に、親会社の価値が向上することも期待できる
・子会社が上場することで信用力が上がり、子会社に対する資金や人材の調達が容易になる
2)子会社のメリット
・親会社から独立することで、子会社における経営の裁量が増える
・上場することにより企業としてのステータスが向上し、従業員のモチベーション向上が期待できる
親子上場におけるデメリットも、親子それぞれの立場から確認しておきましょう。
1)親会社のデメリット
・独立した子会社に対する支配力が弱まるため、グループにおける経営判断の遅れが発生したり、経営判断がブレたりする可能性がある
・子会社が独立することにより、より詳細な情報開示が求められる
2)子会社のデメリット
・上場企業としてハイレベルのガバナンスが求められるため、内部管理のコストが増えたり営業力が低下したりする可能性がある
・親会社のイメージダウンとなり得るリストラを避け、子会社への出向や転籍といったような形を取ることで、子会社が不要な人材の受け皿になる可能性がある
親子上場における親子それぞれのデメリット以外に、親子上場そのものに対しても、さまざまな問題点が指摘されています。主だったものをいくつか紹介します。
1)子会社における少数株主の利益が損なわれる
まず前提となるのが、株式会社を保有しているのはその会社における株主だということです。したがって、株式会社には、株主の利益を最大化することが常に求められます。
そして、親会社を持つ完全子会社であれば、株式会社である親会社の利益を上げるために行動すればよく、また上場会社であれば、投資家などの株主に利益が出るよう事業を運営すればいいわけです。
しかし、親会社を持ちながら自身も上場している会社の場合は、親会社にとって利益になる行動が、株主における利益の最大化につながらない可能性かあります。
例えば、ある上場子会社を取り潰すことが、親会社にとって最適だという結論が出された場合、その結果子会社の価値が無くなったとしても、グループ全体の価値が最大化されれば親会社にとっても得になります。
しかし、上場子会社における親会社以外の株主は、子会社の価値が無くなることにより不利益を被ってしまいます。このように、親子上場は、上場子会社をめぐり親会社とその他株主の利害が対立する危険性を常にはらんでいるのです。
2)資金の二重取り
親子上場により、親会社が子会社も含めた企業価値を裏づけとし、上場時に市場から資金を集め、さらに子会社上場で再び資金を得る、資金の二重取りが行われる可能性があります。
東京証券取引所も、新規上場ガイドブックの中で、「親子上場は新規公開に伴う利得を二重に得ようとしているものではないかと考えられ、上場審査では慎重に対応する」と説明しています。
3)子会社利益の外部流出
子会社における株主の意向が経営に反映され、得た利益の一部が外部流出することで、グループ全体の利益が配当として流出してしまうことが懸念されます。
親子上場は、親会社が子会社の筆頭株主であるため、親会社の利益が優先されやすいというガバナンス上の問題をはらんでいます。
子会社の利益も保証するような工夫を凝らしたガバナンスが実現されれば、親子上場が多い日本企業のガバナンスも次のステージに上がっていくといえるでしょう。
また、親子上場企業に対する投資の考え方も、デメリットばかりに目を向けるのではなく、投資機会が増える側面もあると考えることが可能です。メリット・デメリットをしっかりと理解し、適切な判断をもって投資に臨むことが重要だといえます。
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