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去る2019年12月5日、大阪府にある学校法人の元理事長たちや不動産会社の職員らが、業務上横領容疑で大阪地検特捜部に逮捕されました。着服金額はなんと21億円。一般人には無縁の大金ですが、倫理観を問われる教育機関でさえ、大々的な不正事件が起きるのです。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社新書)など複数の著書を持つ公認会計士の山田真哉氏によると、横領事件は大きく3パターンに分けられます。①着服 ②横流し ③キックバックです。例えば、領収書を改ざんして接待交際費や出張費などを架空請求するのは“着服”にあたります。また、製品や会社のものをオークションサイトや金券ショップなどで売るのは“横流し”です(以上、日立システム 公式サイト「企業の存続を脅かす!不正会計の手口と防止策:第1回 横領」を参照)。
横領事件は少額のものを含めると実は比較的よくあり、他人事ではありません。本記事では、2019年に発覚した代表的な横領事件を、前述の3パターンに分けて振り返ります。
着服は、横領事件の中で多くを占める手口です。
被害金額が大きい着服事件は、現金・小切手・収入印紙や、データ関連を直接扱う担当者などが犯人になるパターンが多い傾向です。また、企業のお金ではなく顧客の財産が狙われるケースもあります。
①【約7億円被害・財務担当者が小切手を換金】日本マクドナルド
日本マクドナルドの預金口座の管理などを担当していた財務税務IR部の元統括マネジャーが、2019年1~10月の間で約7億円を横領。同年10月に逮捕されました。同社の当座預金口座から小切手を振り出して銀行で換金し、自身の口座に入れていた容疑者。超有名商社出身者であり、盗んだ大金はFX投資に使ったと供述して、逮捕当時に注目されました。
②【約5億7,800万円被害・架空取引や収入印紙の不正換金など】JDI(ジャパンディスプレイ)
経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)で元経理担当幹部が、会社の資金を架空取引で別会社の口座に不正送金したり、収入印紙を換金したりする手口で横領。2014年7月~2018年10月の約4年間で計約5億7,800万円を着服したとされています。同社は2018年12月に元幹部を懲戒解雇し、翌年8月に警視庁に刑事告訴していました。
また、元幹部から着服とは別に、「経営陣からの指示で、過去の決算で不適切な会計処理を行っていた」という通知を同社が受け取り、新たな問題が発覚。その後、2019年12月に元幹部は自殺しました。
③【約2億5,000万円・ネットバンクで不正入金】大坪電気
電気空調設備などを手掛ける東京都墨田区の大坪電気で、元経理センター長が2013~2017年の約4年間にかけて約2億5,000万円を着服、2019年11月に逮捕されました。元経理センター長は経理責任者という立場を利用し、インターネットバンキングで自身の口座に会社の金を入金していました。
④【約2億円・売上金を着服】GLAD HAND
東京都渋谷区のアパレル会社「GLAD HAND」の元代表取締役と元役員が、2009年から10年間にわたって売上金を約2億円着服し、2019年12月に逮捕。商品をセールで販売価格から値引きしたように見せかけて、実際の売上金との差額を現金で保管していました。
本件は、着服に関与した経理担当の元社員が、特捜部との司法取引に合意し、捜査に協力したことで話題となりました。裏帳簿を特捜部に提出して協力する代わりに、その元社員の起訴を見送るという内容で、司法取引に合意したということです。
⑤【1億3,142万円・顧客の貯金などを着服】JA三島函南
JA三島函南の20代の元男性職員が、2015年8月~2019年7月に犯行を実施。渉外担当として勤務する支店の顧客18人の定期貯金や積金の無断解約、普通貯金の無断出金などを繰り返し、1億3,142万円を着服しました。事件は2019年7月に発覚、容疑者はその直後に失踪し、自殺しています。
“横流し”は、物資を正規の手続きを経ないで他へ売ること。横流しによる横領事件の多くは、製品や資材を直接扱う立場の人が犯しています。
今年特に注目されたのが、日本郵便の切手横流し事件。事件が複数発覚したこと、日本郵便がこれらを長く公表しなかったことが、社会的批判を浴びました。
⑥【約5億4,530万円被害・切手を横流し】日本郵便
港区・千代田区・豊島区にある郵便局の職員3人がそれぞれ、料金別納の仕組みを悪用し、消印のない切手を職場から不正に持ちだして金券ショップで換金。港区の郵便局では2016年4月~2018年3月に約1億4,000万円、千代田区では約4億円、豊島区では2018年8月~2019年4月に527万円が着服されました。
日本郵便は、港区と千代田区の郵便局の2人については2018年中に全額を返還させて懲戒解雇にし、豊島区の郵便局の職員も2019年7月で懲戒解雇になりました。
なお、日本郵便は2019年1月から、料金割引郵便物の料金別納について切手での支払いを廃止しています。
⑦【約6億2,900万円被害・資材を無断転売】寺崎電気産業
電気機器メーカーの寺崎電気産業(大阪府大阪市)で、銅材の買い付け担当だった元社員が、他社から仕入れた銅材を無断で転売。2009年12月~2018年5月の約8年半の間に約6億2,900万円を手に入れ、2019年10月に逮捕されました。
銅材の発注や出入庫の管理システムの入力などを実質的に1人で担当し、事件の発覚が遅れたようです。
従業員が取引業者などと結託して行う“キックバック”の横領は、不正が発覚しにくいと言われています。キックバック自体は必ずしも犯罪行為とは限らないこと、他社も関与することでより隠匿されやすいことが、事件発覚につながりにくいのです。
⑧【約4億3,000万円被害・水増し請求で横領】ローソン
ローソンのIT部門に勤めていた社員が2011~2019年、店舗の受注・発注システムの運用を担っていた取引先の企業と共謀し、業務委託料を水増しして請求させ、9年間で計約4億3,000万円を横領。同社は2019年8月にその社員を懲戒解雇しました。
⑨【約21億円被害・土地売却の手付金を横領】明浄学院
大阪府にある高校や大学を運営する学校法人明浄学院の資金を着服したとして、元理事長たちや地場不動産会社の部長ら5人が2019年12月に逮捕。
高校の土地を売却する際に、元理事長が預かり保管中だった手付金21億円を、不動産会社の口座に送金していました。
いかがでしたか?
横領事件が起こる原因のひとつに、“業務の属人化”が言われています。容疑者の多くは、ベテラン社員や管理を任された立場の人など。業務の権限が分散されておらず、社内監視も成り立っていない職場では、大企業や教育機関ですら不正が起こりやすくなるのです。
横領事件は、どの企業にも起こり得ます。いま一度、自社の業務管理体制を見直し、不正を許さない環境づくりを進めてみてください。
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