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新型コロナウイルスの影響により、業種や規模を問わず多くの事業者が苦しい経営を迫られています。この苦境を一時的に打開するため、役員報酬の減額を検討する経営者も少なくないでしょう。
確かに役員報酬を事業費に回せれば、企業の経営改善につながります。しかし役員報酬の変更は、会社法により厳格に規定されています。新型コロナウイルスの特例として、一時的な役員報酬の減額は可能なのか、その方法について検証します。
2020年6月15日に、コンサルティング業界で世界有数の企業であるウイリス・タワーズワトソンは、日本の上場企業に対する調査結果を発表しました。これは同年3月1日~5月31日の間に、役員報酬の削減を公表した企業についての概要です。
調査期間内に役員報酬の減額を決めた企業は190社にのぼり、時価総額ランクで上位500社に含まれる企業でも、29社が減額を公表しています。減額の幅は10~60%で、期間は3~6カ月、中には1年間を予定する企業もあります。
また6月30日時点で業績予想を下方修正した上場企業は843社に達し、今後新型コロナウイルスの影響が長引けば、役員報酬の減額を検討する企業はさらに増加すると見込まれています。
会社法によると役員とは「取締役」「会計参与」「監査役」の3つを指し、場合によっては「執行役」を加えることもあります。基本的に会社の規模が大きくなるほど、役員数も増えると考えて良いでしょう。
これらの役員に支払われるのが役員報酬で、従業員給与とは区別して扱われます。役員報酬には会社法と法人税法で厳格な規定が設けられていますが、それは会社の利益を意図的にコントロールできないようにするためです。
具体的には定期同額(毎月定額)であることと、会社設立後3カ月以内に決定すること、株主総会で報酬の額を決めることなどのルールがあります。このルールに従わないと、税務署による厳しい指導の対象になります。
年度の途中で役員報酬を変更するには、原則として事業年度開始から3カ月以内という規定があります。また変更できるのは年に1回だけです。経営が悪化した場合でもこの規定があるため、自由に役員報酬を変更できません。
ただし例外ケースもいくつか認められていて、今回の新型コロナウイルスのような緊急事態であれば、例外的に認められる可能性もあります。しかしこの場合でも担当の税理士に相談して、法的に問題がないか確認をおすすめします。
経営が悪化しても安易に役員報酬を変更できないのは、会社の利益が変動して課税金額が変わったり、株主の利益に影響を与える可能性があるからです。しかし今回のように社会的な危機下であれば、株主の理解も得られるはずです。
そこで実際に役員報酬を変更する手順を考えてみましょう。まず前提としては事業年度開始から3カ月以内に行う必要があり、原則的には株主総会を開いて決議しなければなりません。
この場合決議されるのは役員報酬の総額で、それぞれの役員の額については取締役会か代表取締役に一任されるのが一般的です。
新しい役員報酬が決定したら、役員が居住する自治体への届け出と、年金事務所での手続きが必要です。
このように変更の流れと手続きそのものは、意外にシンプルです。つまり会社を存続させるために必要な措置だという理解を得ることが重要なのです。
役員報酬は税法上経費として扱われるため、変更した場合それに応じて法人税も連動して変わります。経営再建のために役員報酬を事業費に回すとしても、減額分を大きくしすぎて会社の利益が増えてしまうと、法人税も増えてしまいます。
逆に減額分が少なすぎると、充分な事業費が確保できないかもしれません。役員報酬を減額するにあたっては、現在の経営状況と今後の見通しを詳細に分析した上で、役員と担当税理士全員で協議する必要があるでしょう。
また、どうしても事業年度開始から3カ月以降に変更が必要な時にも、担当税理士に相談して特例措置の対象になるかどうかを調べておくべきです。このタイミングで役員報酬を減額すると、以前の額と新しい額との差額は経費として計上できなくなります。
今回のように社会的危機から会社の経営が難しくなり、役員報酬の減額が認められた場合、もしその後業績が回復した時に再び役員報酬を元の額に戻せるのでしょうか。
現行の税法上では答えはノーです。
原則として役員報酬の変更は1年に1回と限定されている上、減額した分を元に戻すという行為は、利益調整と受け取られ税務調査の対象になる可能性があります。また元に戻せたとしても、増額した分は経費として計上できなくなります。
新型コロナウイルスの危機下にあっても、役員報酬を変更するにはバランスが非常に重要といえるでしょう。
新型コロナウイルスの影響がいつまで続くのか、現在その見通しはまったく立っていません。企業や個人事業主は先が見えない状況の中で、何とかして事業を継続しなければなりません。
役員報酬の減額はその一つの手段になり得ますが、慎重に手続きを進めないと税法上の壁にぶつかる可能性もあります。検討する場合は税の専門家に相談した上で、タイミングとバランスを見極めることをおすすめします。
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