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予防接種とは感染症を予防するためワクチンを接種することです。また、ワクチンとは毒性を弱めた病原体(ウイルスや細菌)のことです。
ワクチンを接種することにより、病原体に対する免疫力が生まれ、感染症に罹りにくい体にすることができます。このため、国は予防接種法施行規則の「定期接種実施要領」により、定期的に接種すべきワクチンの種類と接種間隔を定めていますが、その間隔が2020年10月1日から一部変更されました。
この記事では、変更した内容について、詳しく解説します。
目次【本記事の内容】
今回の接種間隔一部変更は、2020年1月に公布された予防接種施行令の一部改正により、ロタウイルス感染症が予防接種法に基づく定期予防接種の対象疾病に追加されたのが発端です。そこで定期予防接種を円滑に実施するため、予防接種法施行規則の定期接種実施要領が一部改正され、定期予防接種の間隔が10月1日から変更されたものです。
具体的には、「異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔」は2020年9月30日まで、
・注射生ワクチンと経口生ワクチンは初回接種から次回接種まで27日以上の間隔を空ける
・不活化ワクチンは初回接種から次回接種まで6日以上の間隔を空ける
との制限が設けられていました。これが10月1日以降、
・注射生ワクチンの接種間隔は従来通り27日以上の間隔を空ける
・経口生ワクチンと不活化ワクチンの接種間隔は無制限(初回接種の翌日に次回接種も可能)
に変更されました。
なお「同じ種類のワクチンを接種する際の接種間隔」は従来通りで、変更はありません。
ワクチンは製剤法により次の種類に分かれています。
・生ワクチン……生きたウイルスや細菌を繰り返し培養するなど、病原性が弱くなったものを選別して製剤したワクチン。生ワクチンは注射で接種する「注射生ワクチン」と飲んで接種する「経口生ワクチン」に分かれている
・不活化ワクチン……ウイルスや細菌の毒性を無毒化するため、ホルマリン処理を施すなどにより製剤したワクチン
・トキソイド……細菌が持つ毒素を抽出し、その毒素を無毒化するため、ホルマリン処理を施すなどにより製剤したワクチン(トキソイドは不活化ワクチンの一種)
・混合ワクチン……2種類以上のワクチンを混合したワクチン
日本では感染症を予防するため、国は従来、予防接種法施行規則の定期接種実施要領により公費負担で定期的に異なるワクチンの接種を受ける「法定定期接種」を推奨しています。
たとえば乳幼児の場合、4種混合ワクチン、BCGワクチン、MRワクチン、B型肝炎ワクチン、日本脳炎ワクチンなど9ワクチンに上ります。これらのワクチンはそれぞれ接種できる月齢、年齢、接種回数などが決まっています。
この法定定期接種にはワクチンの種類により初回接種から次回接種まで6日または27日以上の間隔を空ける制限が設けられていました。そのため、特に乳幼児を持つ保護者の場合、時間的な負担がかねてから問題になっていました。
そのような状況下で予防接種施行令の一部改正によりロタウイルスワクチンが法定定期接種の対象に追加されたことから、もともと過密だった法定定期接種のスケジュールが問題化。その解決策として接種間隔の制限緩和が図られ、今回の接種間隔一部変更になったといわれています。
また、この法定定期接種の「過密スケジュール問題」に対しては、日本小児科学会と日本小児科医会が2012年9月と2019年12月の2回にわたり「異なるワクチンの接種間隔変更に関する要望書」を厚生労働大臣に提出、過密スケジュール問題の善処を求めていました。
たとえば日本小児科学会の五十嵐隆会長(当時)は、2012年9月に提出した要望書の中で「近年、乳幼児に接種すべきワクチン数は増加している。そんな中で我が国においては、生ワクチンは接種後27日以上、不活化ワクチンは接種後6日以上の間隔を空けるよう定めているおり、適切な時期に適切な数のワクチン接種が行いにくい状況になっている。しかし不活化ワクチンと経口生ワクチンにおいては接種間隔を空けなければならない特段の科学的理由は見当たらない。事実、欧米を始め海外の大半の国では注射生ワクチン同士の接種間隔は規制しているが、ほかのワクチンの接種間隔は規制していない」(要旨)と、接種間隔の制限緩和を求める理由を説明していました。
こうした学会の要望も踏まえ、厚生労働省は2019年12月に予防接種法施行規則の「定期接種実施要領見直しに関する意見募集」を実施。その結果が厚生科学審議会予防接種基本方針部会の審議に反映され、今回の制限緩和が実現したとの経緯もあるようです。
予防接種には大別すると、法定定期接種の他に法定外接種、地方自治体独自の公費補助による任意接種、個人全額負担の任意接種と4種類の予防接種があります。また、予防接種のスケジュールも乳幼児期、学童期、高齢期、海外渡航期などがあるため、予防接種のワクチン数、回数、期間、接種を受ける医療機関と場所があるなど、結構複雑なものがあります。
このため、今回の接種間隔に関する制限緩和は、特にインフルエンザを始め自分自身の予防接種が必要な上に、接種すべきワクチン数と回数が多い乳幼児期の子供を持つ保護者にとっては、時間的負担軽減の点から朗報と見られています。
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