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大激動のコロナ時代、2023年に必要とされる人事とは? - 汐留社会保険労務士法人【特集 2023年に必要とされる人事】

公開日2021/03/28 更新日2021/03/29

2020年、東京オリンピックが開催されるはずであったこの1年は、日本にとって特別な1年となるはずでした。しかし、それは新型コロナウイルス感染症(covid-19)の世界的な感染蔓延という災害により、別な意味で特別な1年、時代の始まりとなってしまいました。

この災害は世界中の経済活動、生活様式に大きな変革をもたらすこととなってしまいましたが、日本にとっても例外ではなく、さらに人事、労務の在り方も大きく変えてしまうことになりました。テレワーク、時差出勤、職場の安全衛生、BCP、雇用体系・・、働き方や労働環境は強制的に大きな変化を求められることとなってしまったのです。

このような、今までの常識とは全く異なる、言わば「新しい時代の到来」を迎えなければならない状況にある中で、私たちはどのような人事体制や労働環境を作り上げるべきなのか、これから必要とされる情報、どのような対応をしていかなければならないのか、本稿では3年後を見据えた2023年に必要とされる人事について、説明をさせていただきます。

今、何が起きているのか

新型コロナウイルス感染症の影響により、労働環境ではどのような変化が起こっているのか、現状を確認してみましょう。

まず多くの会社に変化をもたらしたのは「テレワーク」の実施です。

テレワークは新型コロナウイルス感染症が猛威を奮う以前にも働き方改革として推奨され、さらに東京オリンピックの開催による公共交通機関の混雑緩和も目指して、導入が進められていた制度でした。しかし一般的に広く普及するには至らず、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令をきっかけとして、大きく取り入れられることになります。

東京商工会議所が行ったテレワークの実施状況に関する緊急アンケート[※1] の結果によると、宣言発令前のテレワーク実施率は26.0%であったのに対し、宣言解除後の実施率は67.3%と急増しています。業種により実施率に差があるものの、多くの会社でテレワークが進められたことが分かります。

テレワークは通勤時間削減や業務効率化等のメリットをもたらしました。テレワークの頻度や時間に差は出ることはあっても、働き方は大きく変わり、テレワークが働き方として定着していくことが予想されます。

また労働環境の変化として、「副業・兼業の促進」についても注目しなければなりません。副業・兼業もテレワークと同様に働き方改革の一環としてガイドラインが作成される等、取組が進められていました。しかし副業・兼業を希望する声が増加傾向であるのに対し、実施者は横ばい傾向という状態が続いていました。新型コロナウイルス感染症による労働環境変化により、この状態についても変わっていくことが考えられます。

テレワークの実施率が急増したことにより、緊急事態宣言解除後2020年6月の総実労働時間[※2] は、前年同月比4.0%のマイナスとなっています。就労時間の減少は労働者の意識も変え、会社員へのアンケート調査[※3] では現在の仕事・働き方の問題を解消する、又は満足度を高めるために考えている取組として66%の人が副業を挙げ、ウィズコロナ、ポストコロナの働き方の方向性として60.1%の人が副業・兼業の一般化を挙げています。

労働者の意識だけでなく、企業を対象としたアンケート調査[※4] でも71.0%の企業が企業戦略を見直した、見直す予定があると回答し、会社の戦略と労働者の意識がマッチして、副業・兼業の一般化が進む可能性は高いです。

雇用シェアも注目を集め、これからは「人に仕事を割り当てる」のではなく、「仕事に人を割り当てる」というような考えにシフトしていくことが考えらえれます。副業・兼業だけではなく企業の枠に捉われないより柔軟な働き方が進んでいくことでしょう。

見逃せない政府方針、法改正

2020年7月にはいわゆる今年度の骨太の方針が公表され、新型コロナウイルス感染症の危機を克服し、新しい未来や日常を実現するための取組や改革方針が示されました。これらの方針も人事を考える上で非常に重要となります。

新型コロナウイルス感染症により浮き彫りとなった課題で人事労務に関係する内容として、「デジタル化・オンライン化の遅れ(特に行政分野)」「非正規雇用者やフリーランス、中小・小規模事業者の苦境」が挙げられています。これらの課題についてどのような取組が掲げられているか、確認してみましょう。

「デジタル化・オンライン化の遅れ」については、2020年4月より特定法人の社会保険・労働保険手続き電子申請義務化が始められ、少しずつデジタル化・オンライン化の実施が進められていたところではありますが、まだまだ環境整備が整っている状態ではなく、デジタル化やオンライン化の遅れがテレワークの実施を阻害する要因の一つになってしまいました。

早速、労働政策審議会労働条件分科会では、全ての行政手続きを対象に見直しを行い、原則として書面・押印・対面を不要とし、デジタルで完結できるよう見直しを図るべく、使用者や労働者の押印を求める省令様式について、参照条文の見直しを進める話し合いが行われています。

日本年金機構に書面で提出する届出等についても、押印及び署名がない場合でもそのことのみで届出等の不備返戻を行わないとする通知も出されました。また総務省、法務省、経済産業省が連名で立会人型電子契約についても、電子署名の有効性を認める見解を発表する等、行政主導でデジタルトランスフォーメーションへの推進が進められることにより、人事労務分野でもデジタル化やオンライン化が加速的に進んでいくことでしょう。

ポストコロナ時代の新しい未来の姿として、個人が輝き、誰もがどこでも豊かさを実感し、国民が誰ひとり取り残されることなく生きがいを感じることができる包摂的な社会というのも示されています。

新型コロナウイルス感染症の影響により、生命・生活・雇用・事業を守り抜きつつ、経済財政運営を改革していくというのが最優先事項であることは間違えありませんが、所得や環境の格差により「非正規雇用やフリーランス、中小・小規模事業者が苦境」に陥り、大きな影響を受けてしまったことも事実です。

そこで閣議決定された成長戦略実行計画案ではフリーランスの環境整備も掲げられ、ガイドラインの策定によるフリーランスとの取引ルールの明確化や、労災保険特別加入制度の対象拡大等及び小規模企業共済等の共済制度の活用促進による働く環境の保護が進められる予定となっています。

2021年4月より始まる70歳までの就業機会確保努力義務では、フリーランスや業務委託での就業機会確保も可能となっており、高年齢者雇用安定法によるフリーランスの活用や創業支援等措置を検討する場合には、フリーランスの環境整備の点からも注意が必要です。

また同じ計画案では副業・兼業者の環境整備も掲げられています。2020年8月より失業等給付の支給を受けるための被保険者期間の算定方法が変更され、2020年9月からは労災保険について全ての就業先の賃金支払額を基に給付基礎日額が算定できるようになり、業務上の負荷を総合的に評価し認定を行うようにする等、複数就業者向けのセーフティネット整備が進められていますが、複数就業する65歳以上労働者の雇用保険適用等、今後も環境整備が進められていく予定になっています。

2020年9月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」も改定され、労働時間管理方法について従来の本業・副業の労働時間を合算する方法ではなく、副業・兼業の開始前に全ての会社で労働時間上限を設定し、それぞれの設定労働時間により割増賃金を支払い、他社の実労働時間を把握しなくても法令遵守を可能とする簡便な労働時間管理の方法が新しい指針として示され、注目を集めています。

2020年6月の労働総合施策推進法の改正により大企業にパワーハラスメントの防止が義務付けられ、2021年4月からは中小企業への同一労働同一賃金義務化が始まり、働き方改革による多様な労働環境の整備は継続的に進められています。

これからは正社員、契約社員、パートタイマー、派遣社員だけでなく、フリーランスや取引先といった、あらゆる柔軟性や多様性も踏まえた上で、人事を考えなければならなくなるでしょう。

人事として、今、何をすべきなのか

それではこれらの状況を踏まえた上で、人事としては今、何をすべきなのでしょうか。

根本的に取り組むべきは労働環境や業務分掌の把握と整理です。

特に業務分掌については部署や部門単位ではなく、職務や個人毎の把握をするのがベストです。テレワークを推奨、義務付けしない理由として「職場以外でできる業務内容ではない」ということが多く考えられています。

もちろん実際に職場以外でできる業務内容ではないという状態が事実である場合はありますが、デジタル化できる部分の仕事の切り分けが行われていない、総合職採用や年功型の雇用体系が阻害要因となり、業務の分担が出来ていないためにテレワークが進まない、という例があるのも事実です。

労働者の職務内容が明確になっているか、職務内容にあった労働生産性を最大化できる労働環境になっているかどうかという確認は、テレワークやデジタルトランスメーションを進めるにあたり必要であり、副業・兼業やフリーランスといった自社雇用以外の人材活用方法を検討する上でも重要となります。いち早く取り組むべき課題です。

現状の労働環境が整理され業務分掌が明確になってくると、労働環境の変革の道筋が見えてきます。業務のテレワーク化やデジタル化はスムーズに移行が進むことでしょう。

よくある事例として、所属部署や職務内容、労働者個人毎の事情を考慮して、不公平や不利益がないことを最優先し、全社一斉の制度改革を必須とすることがあります。全てにおいて完璧な制度を作り上げることは難しく、多くの時間を要することから、特にこの急激な変化を求められる状況下で変革を目指すためには、「一部の部署や職務から導入する」「対象者を限定して取り組む」という進め方も必要です。

テレワークやデジタル化が進んでいくと労働生産性が上がることで労働時間減少につながり、さらに業務分掌が明確になることで副業・兼業やフリーランスを活用するための方向性も整理しやすくなる、ということも考えられます。

またテレワークや副業・兼業の一般化が進まない原因として、「成果が見えづらい」「自社への貢献度を図るのが困難」「要求する(される)内容が分かりづらい」というようなことも挙げられています。

業務細分化や職務・職責の範囲が明確になってくると、労働者に何を求めるのかという基準を明確にすることができ、評価制度の変更も進めることが可能となります。「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」への移行は注目を集めていますが、人ではなく仕事を基準とする人事制度、評価制度へ変えていくことにより、上記のような課題を解決することが出来るようになります。

加えて、同一労働同一賃金の義務化や、高年齢者、女性活躍、障害者雇用等のあらゆる人事課題の解決するきっかけにもなるでしょう。

コロナ禍や法改正による労働環境の変化に対応した制度変更を作り上げるために、セキュリティや機能を重視した業務ツールの導入、労働環境の用意も必要不可欠となりますが、労働環境や業務分掌の整理は重要であると考えます。取り組んだ内容がベースとなって様々な変革につながり、3年後を見据えた人事戦略を描くことが可能となるはずです。

まとめ

新型コロナウイルス感染症により、新しい生活様式にあわせた「新しい働き方」に変わる必要があります。採用、人材の定着、生産性の向上について、新しい働き方への対応が出来ているかどうかが、今でも影響を及ぼし始めています。対応ができていない会社は人材の流出や生産性の低下が予想され、淘汰されていくことが考えられます。現状の把握と課題、将来のイメージをしっかりと認識し、戦略的に人事に取り組むことが出来る会社が生き残り、その流れは今後さらに進んでいくことでしょう。

[※1] https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1022367(スライドP3)

[※2] https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/covid-19/c11.html#c11-1
(総実労働時間、所定内労働時間、所定外労働時間(前年同月比)就業形態計)

[※3] 未来投資会議(第39回 令和2年6月16日)基礎資料
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai39/siryou1.pdf
(P2- 兼業・副業の意向)

[※4] 未来投資会議(第42回 令和2年7月30日)基礎資料
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai42/siryou2.pdf
(P2- ウィズ・コロナ、ポスト・コロナの企業戦略)


【執筆】

汐留パートナーズグループ 汐留社会保険労務士法人
社会保険労務士/行政書士 新井将司

東京都港区東新橋1-1-21 今朝ビル5階
Tel : 03-6264-6680(代表)03-6264-6683(直通)
Fax : 03-6264-6681

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