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未上場企業が自社をより成長させようとする場合、IPOが有効な選択肢として浮上します。
しかし、IPOを実現するには全社を挙げた周到な準備が必要であり、特に法務部が果たす役割は重要です。
今回はIPOに向けて法務部が直面する課題について詳しくご紹介します。
IPO(Initial Public Offering)とは、未上場企業が証券取引所に初めて株式を公開させることを意味します。上場を実現することで企業の社会的信用や知名度が高まり、より優秀な人材が集まりやすくなる、従業員の士気が向上する、資金調達をしやすくなるなど、得られるメリットは多くあります。
しかし、IPOを実現するには厳格な上場審査を受ける必要があり、この審査基準を超えることは容易ではありません。各取引所における上場審査には形式要件と実質審査基準があり、形式要件を満たした上で、実質審査基準を突破することが求められます。
東京証券取引所の場合、実質審査基準は以下の5項目です。
上場実質審査基準には数値化された尺度はなく、「質」の面が審査されます。審査は提出書類のみならず、ヒアリング、実地調査などを通して行われるので、十分な準備が欠かせません。一般的に、IPOの準備期間として3年以上必要とされています。
この5つの審査基準でみた場合、法務部が特に重要な役割を果たすのは「企業の継続性及び収益性」と「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」の2点です。
上場した企業には株主の利益を守るためにも、事業を継続的に運営し、安定的な収益を得ることが求められます。「企業の継続性及び収益性」に関する審査においては、その企業が今後問題なく事業を続けられるのか、収益を確保できるのか、という点が問われますが、その際にポイントとなるのが法的リスクの有無です。
例えば、もしその企業が、事業を行うに当たって必要となる監督官庁の許認可をきちんと得ていないと疑われる場合、上場後にそのことが発覚すれば事業の継続が難しくなるでしょう。その事業が企業における収益の柱となっているなら、「企業の継続性及び収益性」に多大な影響が出ることは避けられません。
つまり、何らかの法的リスクを抱えている限り、将来にわたって企業の継続性及び収益性を確保できるとは評価されにくいのです。
また、企業が事業を続けていく上で欠かせない技術が、他企業の知的財産権を侵害している恐れがある場合も同様です。もし、特許権の侵害訴訟をされて負けるようなことがあれば、上場後の事業継続が困難になり、収益も落ち込んでしまいます。そうしたリスクを抱えていると、やはり実質審査基準のパスは難しいでしょう。
そのため、法務部としては企業が直面している法的リスクを徹底的に洗い出し、問題があれば解決することが求められます。もし特許侵害の裁判を抱えているなら、勝訴判決が確定されれば上場承認に近づくので、法務部として最善を尽くすことが必要です。
実質審査基準の「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」を実現するには、企業内で不祥事の起こらない体制作りが必要です。ここでいう不祥事とは、粉飾決算、重加算税が生じる脱税行為、従業員による背任行為やハラスメント(パワハラ・セクハラ)行為などを指します。
企業が不祥事を起こした場合、社会に与える影響度によっては業務停止処分が下されるケースもあります。さらにこれら不祥事、処分がマスコミによって報道されることで、企業の社会的信用が大きく低下するでしょう。上場企業の場合、特設注意市場銘柄に指定される恐れがあるほか、状況によっては上場廃止とされます。このようなリスクのある企業では上場審査を突破するのは難しいでしょう。
法務部としては、このような不祥事が起こらないような内部管理体制のあり方を検討する必要があります。必要に応じて弁護士など外部の専門家の力を借りて、問題を未然に防げる体制作りを進めることが大事です。また、企業の役職員へのコンプライアンス研修など、企業内で啓発活動を行うことも求められます。
ほかにも、法務部は自社の経営資源を徹底的に調査し、反社会的勢力との関与がないかも調べる必要があります。反社会的勢力と関係を持つことは上場廃止基準に明記されているほか、IPO審査においても発覚すれば致命的です。通常、そのような関与を意図的に持つ経営者・従業員はおらず、本人も知らないうちに関係を持っていたケースが多いといわれています。
IPOは企業がさらなる成長を遂げる上で有効な方法ですが、上場を実現するには厳格な上場審査をパスする必要があります。その際、「法的リスクを抱えているために、将来的に企業の継続性・収益性に問題を与えないか」、「不祥事を防止する内部管理体制ができているかどうか」という点において、法務部の果たす役割は大きいです。また、不祥事の防止という点では、反社会的勢力とのつながりを徹底調査するということも求められます。
法務部の人材だけで対応できない場合は外部の弁護士の力を借りることも必要です。IPOを実現することで得られるメリットは大きいですが、そのためには時間・労力をかけた準備が欠かせないでしょう。
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