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HRテクノロジー活用やデータ分析を経営に活かすことの有用性を啓発・推進する一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム(代表理事:香川 憲昭氏、以下HRT)は、2021年7月29日に、「政・官・学・民」の様々な登壇者が参加するオンラインシンポジウム「ISO30414と“人的資本の開示”がもたらす日本の未来」を開催した。
イベントは、参議院議員で早稲田大学の客員教授でもある藤末健三氏による「ポスト・コロナの中国と世界」から始まり、国内の新聞やメディアではあまり取り上げられていない中国の最新動向について、リアルな解説をした。
世界のどの国よりもIT投資を強化する中国は、既に特許の出願数ではアメリカを抜いて世界1位となっており、国家間の競争力でも中国の動きが非常に重要になっているとのことだ。
世界の動きに続き、国内のデジタル化の動きについては、内閣官房情報通信技術総合戦略室の参事官で総務省行政管理局行政情報システム企画課長の奥田直彦氏が解説。
今年9月に設置が予定されているデジタル庁をはじめ、日本政府が進めるデジタル改革に関する最新動向について、様々な視点から説明された。
コロナ禍で浮き彫りになったデジタル化の課題はビジネスだけでなく、生活や行政、教育、医療など様々な分野で発生した。それらの解決に向けたデジタル庁のビジョンや、デジタル改革関連法の全体像について、改めて解説した。
3つ目の講演では、早稲田大学教授の藤本隆宏氏がものづくり企業の現場における人的活用のあるべき姿や、近い将来の予測に関して持論を展開した。
コロナ禍でリモートワークが普及したことで、ジョブ型雇用という言葉も以前より聞こえるようになったが、それにはいくつかのタイプがあるという。1990年代欧米企業(コントロール型)は現在のシリコンバレーのもの(タレント型)とは異なっているという。
また、今後はトヨタが代表するような、コミットメント型のジョブ型雇用が日本のメーカーで発展して行くとした。世の中の流れに合わせて雇用の形態も進化させなければ、企業は徐々に競争の波に飲まれてしまうことを予感させるものであった。
4つ目の講演では、きづきアーキテクト株式会社代表取締役社長の長島聡氏が、ジョブ型雇用の仕組みを経営の効率化にとどまらせるのではなく、イノベーションを量産することにもつなげていくことの必要性を解説した。
業務時間の効率化ではなく、新たな価値をどれだけ作ることができるかを測ること「創造生産性」を向上させることでイノベーションを量産していくのだという。
最後に今回のシンポジウムのメインテーマである「人的資本開示の未来」について、同テーマにいち早く取り組みを進めているKDDI株式会社 執行役員 人事本部長の白岩氏、帝人株式会社のCSR・信頼性保証部企業倫理・コンプライアンスグループ長の黒瀬友佳子氏と、慶應大学 岩本特任教授とHRTの代表理事 香川憲昭氏の4名でパネルディスカッションが行われた。
人的資本の開示が国内外で加速している背景には「企業への投資判断の基準として非財務情報の開示が重要視される流れに起因している(香川氏)」という。
この流れは日本でもより高まっていくのか?という問いに対して岩本氏は「機関投資家の要求は高まっているため上場企業では必須になる、また金融機関からの貸し付けの条件に人的資本の開示が求められる流れも出てきており、中小企業でも無視できない状況」になるという。
このような状況になる前から、いち早く統合報告書という形で環境報告や人的資源報告を始めている帝人の黒瀬氏は「報告書は経営者から機関投資家へのラブレター」であると言い、財務&非財務ともに自社が健全であることを丁寧に伝えているという。
人的資源の開示にあたってKDDI版ジョブ型雇用の確立に向けて取り組みを始めた同社の白岩氏によると、人的資本開示の課題解決のために「まずは人事データの可視化が必要」であり、どのようにまとめるかの参考としてはISO30414の標準化された情報が参考になったという。
グローバルに展開するにあたって「海外投資家やダウジョーンズなど組織に対しての見せ方も重要、その際に国際標準であるISOを参考に情報開示するのは有効(黒瀬氏)」とのことだ。
SDGsに代表される非財務情報の開示のトレンドは今後も続くだろう。
その際に、自社独自で開示情報を用意するのもよいかもしれないが、せっかく開示しても伝えたい情報が正しく伝わらず誤解されては困る。
せっかくならISOなどの基準を参考に、どういう人材にどの程度の投資をして、どの程度のリターンを得ているかを可視化して報告するとともに、自社の健全性を伝えていきたいものだ。
まだ国内の前例が少ない分野かもしれないが、財務やHRなどバックオフィスにかかわる方にとっては、押さえておくべきトピックであることは間違いない。
今はまだ・・・、と考えるのもよいが世の中の要求に遅れることがないようにしたいものである。
取材・文:マネジー編集部 有山智規
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