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改正労働施策総合推進法によって、大企業にはハラスメント対策が義務化(中小企業は努力義務)され、ハラスメントの行為者だけではなく、会社に対しても法的責任が問われることになりました。しかし、依然としてパワハラはなくなりません。なぜなくならないのかを探っていくと、パワハラが起こりやすい職場には、ある種の共通項があるようです。
大手士業系コンサルティングファーム・名南経営コンサルティング取締役で、社会保険労務士法人名南経営の代表社員・大津章敬さんは、あるメディアのインタビュー記事で「多様な人材がいない職場は、パワーハラスメントが起こる可能性が高くなるとも思う」と答えています。
多様な人材のいない職場とはどのようなものか。それを大津氏の発言から要約すると、社長や役員と似たタイプの管理職が多い会社では、上司は「自分と似たような仕事の仕方をする部下を“使える”と高く評価する」傾向があり、意見や考え方の相違を受け入れない一面的な物の見方が強くなる職場であるといえそうです。
そのような職場では、上司と違う意見や考え方を主張する社員を、デキナイ社員、異質な社員として扱う風潮があり、正当な人事評価もできなくなるようです。また、上司は自分と似たタイプを安易に管理職に昇格させてしまうケースも目立つそうです。
その結果、意見や考え方の違う社員に対して精神的・身体的苦痛を与えるような言動や行動を繰り返すような、管理職としてはふさわしくない人が職場を仕切るようになり、まさにパワハラの温床になる職場環境が出来上がる、というわけです。
ところで、パワハラ(パワーハラスメント)の定義ですが、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・肉体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」とされています。
さらに、何が“業務の適正な範囲を超えている”かは、業種や企業文化によっても違いますが、パワハラに該当すると思われる6種類型も示されています。
職場でパワハラ防止対策に懸命に取り組んでいる担当者にとっては、“釈迦に説法”でしょうが、職場からパワハラをなくすためには、すべてのビジネスパーソンが、パワハラの定義、パワハラに該当する6種類型を、意識の片隅に置いておく必要があります。
パワハラが横行する職場では、被害を受けた社員の心身に影響を及ぼすだけではなく、生産性の低下や人材の流出など、会社にも悪影響を及ぼすことになります。また、パワハラ加害者だけでなく、会社も法的責任が問われることもあります。
パワハラが起こる背景には、職場内コミュニケーションの希薄化や企業間競争の激化などもありますが、加害者本人が自分の発言や行為を「パワハラに該当する」と認識していないことも大きな要因です。
では、職場からパワハラをなくすためには、何をするべきでしょうか。例えばパワハラ防止規定(ルール)を定める、相談窓口の設置、職場環境の改善、社員への周知などが挙げられますが、そのほかに職場環境の改善のため、人材の多様化という視点を加味して取り組んでみてはいかがでしょうか。
パワハラが起きやすい職場では、仕事への意欲が失われ、社員の心身の健康を脅かしかねません。それはパワハラ被害者だけでなく、それを目にしている周りも不快にさせてしまい、職場環境をどんどん悪化させてしまうでしょう。それが、会社の評判を落とすだけではなく、業績にも悪影響を及ぼすことは明白なだけに、誰もがパワハラ防止への意識を持つ必要があるようです。
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