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先日、日本労働組合総連合会(連合)が2023年の春闘における目標を5%程度まで引き上げるつもりである、との報道がありました。直近7年は4%程度を目標にしていましたが、昨今の物価高を考慮し、より高い目標値を設定したわけです。
今回はこのニュースを踏まえ、春闘とはそもそも何か、日本の賃金状況はどうなっているのか、実質的な賃上げを実現するのに必要なことは何か、について解説します。
春闘とは「春季闘争」を略した言葉で、毎年春に、全国の労働組合が企業に対して一斉に労働条件の改善を求める交渉のことです。ここでいう労働条件の改善とは、最近では過労死などの社会問題が生じたので、労働時間短縮や職場環境改善も取り上げられていますが、基本的には「賃上げ」です。
賃上げの要求には大きく分けて「ベースアップ(ベア)」と「定期昇給」の2種類があります。ベアとは全体としての賃金水準の引き上げを求めること、定期昇給とは年齢・勤続年数に基づく賃金の上昇を求めることです。冒頭で紹介した「賃金引き上げの目標5%」とは、ベースアップと定期昇給の両方を合算した目標値を意味します。
そもそも、労働組合とは労働者が団結して労働条件の改善を図るために作る団体のことですが、日本では企業別労働組合が主流なので、そのままだと企業単位でバラバラに行動することになってしまい、全国規模・産業規模でまとまった行動は取れません。
そのため、労働組合のナショナル・センター(全国中央組織)として設立されている「日本労働組合総連合会(通称、連合)」が、全国の労働組合の総意としての基本方針を定め、経済界全体に提示・要求するという形式を取っています。
例年の春闘の流れとしては、前年12月までに連合が基本方針を定め、1月に産業単位での方針を確定し、大手企業で具体的な交渉が始まるのは2月からです。交渉の山場となるのは3月中旬頃で、新年度が始まる前の3月末までには終了します。
春闘における特徴の一つが、企業規模によって開始時期が異なる点です。通例として、まずは大手企業の春闘が始まり、それが終わってから中小企業の春闘がスタートします。大手企業は財務体力が安定していることもあり、労働組合の要求に対して好条件を示しやすい傾向があります。そのため、賃金水準が低めの中小企業の労働組合は、大手企業での結果をモデルケースとし、モチベーションを高めながら活動を開始するわけです。
春闘の始まりは、1955年1月に東京で行われた「春季賃上げ共闘総決起大会」であるといわれています。当時、日本経済に好況をもたらした、いわゆる朝鮮特需が終了し、不況の時代が到来していました。各企業では労働者のリストラが相次いだため、労働組合が産業単位で結束し、企業側に労働者側の要求を訴えるようになりました。
では実際のところ、日本の労働者の平均賃金は、他国と比べた場合、どの程度の水準なのでしょうか。
西欧諸国など先進国の多くが加盟しているOECDが、加盟国内の平均賃金を提示しています。それによると、2021年時点における日本人の平均年収額は3万9,711ドルです。2021年当時のレートで1ドル=110円と想定すると、日本円で約436万8,210円となります。
一方、同時期のアメリカの平均年収額は7万2,047ドル、日本円では792万5,170円で、日本より約340万円も高いです。隣国・韓国は4万2,747ドル、日本円で470万2,170円なので、日本の平均年収額はそれよりも低い数値となっています。日本の順位は、加盟国の下から数えた方が早いという状況です。
他国と比較した場合の日本の賃金水準の低さを見ると、すぐにでも賃上げすべきと考えたくなります。
しかし、単純に労働者の給与額だけを上げても、実質的な効果は期待できません。企業が端的に賃上げをした場合、人件費が増えます。企業としては、増えた分の人件費を埋め合わせる必要があり、そのための手段となるのが自社商品・サービスの値上げです。
賃上げしても、それに伴って商品・サービスの物価が上昇すれば、賃上げの恩恵は得られません。つまり、受け取る給与額である「名目賃金」だけ上げても、物価変動の影響を差し引いた「実質賃金」は上がりにくいのです。
実質賃金を増加させるには、賃上げしても企業が商品・サービスの価格を上げずに済むようにすること、つまり各企業における労働生産性を高めることが不可欠です。労働生産性とは、各労働者がどれだけ付加価値(事業活動によって生み出す価値=利益)を生み出しているか、を示す指標を意味します。
労働生産性が上がれば、商品・サービスの価格を据え置いたままで、純粋にその生産性向上の成果によって労働者一人ひとりの賃金アップを図れます。この方法だと、物価上昇を抑えた賃上げができ、実質賃金を高めることが可能です。
つまり、労働者の側が真に待遇アップを求めるなら、春闘などを通して単純な賃上げ要求をするだけでなく、生産性を高められる労働環境を整備するよう求めることも重要になります。
近年、労働生産性向上のカギとして指摘されているのがDX化です。現在、日本政府もデジタル化推進を国家戦略に位置づけ、各企業にも取り組みを進めるように求めています。各企業がこの時代の流れにうまく適応し、労働者が効率的に業務に取り組める環境を整備することが、労働生産性を高め、実質賃金の上昇にもつながります。
連合が2023年度の賃上げ目標を5%にしていくとの方針を固めましたが、国際比較をした際の日本における平均賃金の低さを踏まえると、賃上げを推し進めたいと考えるのはもっともなことです。
しかし、労働生産性の向上が伴わなければ、実質賃金の上昇は望めません。ただでさえ物価高の中、単純に賃上げしてもその恩恵は期待できないといえます。実質賃金アップを目指すべき労働者側としては、生産性を高められるような職場環境の整備、たとえばDX化の推進などの取り組みを進めるよう企業側に求めることも重要です。
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