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ステークホルダーという言葉をご存じでしょうか。企業経営において関係性を重視すべき相手を差し、使用される場所や時代によって言葉が意味する内容が変わってきます。ビジネスに携わる上では、十分に理解しておきたい専門用語の一つです。
今回はステークホルダーの定義、企業が考えている重要なステークホルダーとは何か、さらに近年変化している意味などついて解説していきます。
ステークホルダーとは、日本語に訳すと「利害関係者」です。具体的に含まれるのは、従業員、消費者、株主、顧客、取引先、地域社会、行政機関など多岐にわたり、企業が経営活動を継続していく上で、関係性を良好に維持することが求められる対象です。
「ステーク(stake)」とは賭け金や出資金といった意味を持ち、ステークホルダー(stakeholder)とは企業の動きによって利・害(損)のどちらかが生じる人・団体すべてを指します。
ステークホルダーと類似した言葉に「ストック(stock)ホルダー」があります。「ストック」とは株式のことを意味し、ストックホルダーはもっぱら株主のことのみを指す用語です。一方、ステークホルダーはより広義の意味を持ち、株主以外のあらゆる利害関係者を含む概念です。
ステークホルダーはあまりにも幅広い意味をもつため、使用される場所によって意味する内容が変わってきます。
たとえば、経営者や役員が集まり、経営戦略について論じるトップ層の会議の場だと、ステークホルダーは株主、消費者全般、政府、労働組合、地域社会、環境団体(NGO・NPO)などが念頭に置かれます。
一方、より下位組織である職場(部・課・班)の単位で行われる会議の場だと、ステークホルダーは、職場で担当する商品・サービスのターゲット層である消費者、潜在顧客、取引先、職場で関わる従業員など、より狭義の意味で使われるのが通例です。
また、新規に工場を設立する場合の会議の場だと、ステークホルダーはもっぱら地域住民、地域社会を意味するでしょう。
つまり、ステークホルダーは使われる文脈によってどのような対象を念頭に置くかが変わるわけです。会議などに参加し、誰かが「ステークホルダーとの関係を良好に保つ」と発言した場合、それが具体的にどのような人・団体を想定しているのかを瞬時にイメージする必要があります。
ステークホルダーに対しては、経済産業省が平成30年に、上場企業435社を対象にアンケート調査を行っています。この調査では、「企業価値を高めるために対話・コミュニケーションがとくに重要と思われるステークホルダー」を「株主など投資家(国内)」、「株主など投資家(国外)」「債権者」「従業員」「顧客」「取引先」「就職希望者」「地域住民」「その他」から選んでもらうという質問が行われています。
結果は、「1番目に重要」との回答で最多となったのは「顧客」でした。対象企業435社のうち167社が顧客を選択しています。顧客についで多かったのは「株主など投資家(国内)」で129社が回答しました。以下、「従業員」(97社)、「株主など投資家(国外)」(32社)と続いています。
回答を見ると、やはり企業の存続に直接関わるため、国内の株主などの投資家、顧客、従業員の回答が突出して多いです。これら3者との関係性を良好に保つことを、多くの上場企業が重視しています。
また、近年ではステークホルダーとの関わり方が変化しています。かつて「投資家」「顧客」「従業員」との関係性というと、メインとなるのは「お金」に関わる話題でした。つまり投資家であれば企業のROE(自己資本利益率)などの利益率、顧客であれば商品・サービスの値段、従業員であれば給与額・待遇であったわけです。
しかし現在ではそうした価値観が変化しつつあります。ステークホルダーは「利害関係者」を意味する言葉ですが、その「利害」の概念が金銭的なものではなく、倫理的・価値観的なものを重視するものへと変わりつつあるのです。
たとえば現在、国連が定めたSDGs(環境問題や貧困問題、差別の解決など17の目標から構成される「持続可能な開発目標」)に対して全世界的な取り組みが行われています。このSDGsにどれだけ関与しているか、どれだけ取り組みを行っているかが、ステークホルダーにとって重要な指標となりつつあります。SDGsへの取り組み意識が低いと、株主、従業員、顧客をはじめ、あらゆるステークホルダーからの評価が下がり、企業価値の低下を招く恐れがあるのです。
同様に重要な概念となりつつあるのがCSR(企業の社会的責任)です。CSRとは企業が自社利益の追求のみを考えるのではなく、社会全体に対して責任を持ち、貢献していくべきとする考え方を意味します。
たとえば従業員に対しては、適切な給与さえ払えばよいわけではなく、働きやすい職場環境を整備し、人権に配慮した管理体制を整えることが求められます。他にも、地域コミュニティへの参画、文化・スポーツ活動への貢献などの取り組み状況などが、ステークホルダーの重要な関心事となりつつあるのです。
ステークホルダーとは直訳すると「利害関係者」ですが、何を「利」とし「害」とするかの価値観は現在多様化しており、単純な金銭的な側面(利益、給与、価格)を重視するだけででは、ステークホルダーとの関係構築は難しくなりつつあります。
ステークホルダーからの評価を高め、良好な関係性を高めるには、「価値観」としての側面を重視すること、たとえばSDGsやCSRに注力することも重要です。
社会の中で重要とされている価値観は時代・情勢によって変化します。ステークホルダーからの評価を高く維持するには、自社の利益追求を図るだけでなく、倫理的・社会的な取り組みを進めることも欠かせないのです。
※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁や専門家にご確認ください。
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