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2023年3月期決算以降、有価証券報告書における「従業員の状況」について、女性管理職比率や男性育児休業取得率などの記載が義務付けられるようになりました。いわゆる「人的資本開示」であり、岸田首相の発言も相まって、注目を集めています。
しかし「人的資本の意味って何?」「どの視点で人的資本を捉えれば良いの?」といった疑問を抱えている方も多いかもしれません。今回の記事では、人的資本について理解すべき視点を、大きく4つに分けて解説します。
目次【本記事の内容】
人的資本(human capital)は、人々のスキルや知識、能力、経験、など人間の持つ特性や能力のことです。元々は経済学の概念であり、企業や国家などが競争力を持つために必要な要素として理解されていました。これを開示するのが、「人的資本開示」です。
人的資本開示は、企業が自社従業員のスキルや能力など、人的資本に関する情報を開示することです。企業の社会的責任や持続可能性の観点から、人的資本開示が注目されるようになりました。
例えば、人的資本開示によって投資家や株主が「企業の人的資本に関する情報」を入手できるようになります。企業の将来的な成長や競争力を評価でき、投資判断がしやすくなります。
ただし人的資本開示は、当然、プライバシー保護や個人情報の取り扱いについての配慮が必要です。企業は、人的資本開示をするだけでなく、情報を適切に管理することが求められています。
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ここでは、人的資本を理解するために必要な4つの視点を解説します。
まずは「社会的役割の視点」です。社会的役割とは、単に利益を追求するだけでなく、社会全体の利益や環境保護、人権や労働基準の尊重など、社会的な価値を追求することです。
近年、企業の社会的役割に関する関心が高まっており、企業の社会的責任が企業価値や顧客満足度にも影響を与えることが示されています。
具体的には、社会的課題への取り組みやCSR活動(企業の社会的責任)、環境保護などです。社会との関わりが重視されるようになり、企業には、持続可能な社会に向けたコミットメントの表明が求められています。
2つ目は「企業価値評価の視点」です。昨今では、企業価値の源泉が「財務資産」から「非財務資産」へ移行していると言われています。
財務資産は、現金や銀行預金、債券、株式、投資信託などの金融商品としてある資産です。いわゆる「流動資産」に分類され、比較的容易に現金化できるのが特徴とされています。
一方、非財務資産は、不動産や機械、設備、特許、商標、著作権、ソフトウェア、人的資本などの資産です。「固定資産」に分類され、現金化が相対的に難しいとされています。
投資家の投資判断では、後者の非財務資産が大きな影響を与えており、まさにこれが「人的資本開示」の重要な背景となっています。
上記の2つのポイントは、人的資本開示に大きく関わる項目です。人的資本と社会の関わり、人的資本と投資家の関わりが増えるのと引き換えに、様々な要素が比べられることになります。
3つ目は「事業戦略の視点」です。従来にも増してイノベーションが重視されるようになり、革新的なアイデアを生み出せる組織作りが求められるようになっています。
当然の話ではありますが、人的資本は有限です。限られたリソースをいかに活用するか、もっと言えば「組織に所属している人をいかに活かし切れるか」が重要になります。
4つ目は「組織風土の視点」です。組織風土・カルチャーは、組織構造や戦略など、ビジネスの成功を左右する重要な要素になります。
組織風土は、組織内の人々が組織に所属することで共有する、ある種の「集合的な心理状態」を表しています。組織の成員がどのような価値を重視し、どのような行動が望ましいかを共有することによって、徐々に形成されていくものです。
日本の組織風土では、若手がマイノリティであり、ベテラン社員との価値観の相違が問題になることもあります。特に「沈黙が得をしやすい」など、負の側面もありがちです。このような風土を打破していくのが、人的資本の有効活用に役立ちます。
3つ目と4つ目の視点は、人的資本の価値向上のために重要な影響を及ぼします。人的資本は、伸び縮みする存在であり、どう活用するかによってビジネスの成功を左右するといっても過言ではありません。
企業価値向上のために、人的資本を戦略的に活用することを「人的資本経営」と言います。現代のビジネス環境はますます複雑化しており、企業が保有している人材も、より多様で高度なスキルを持つようになりました。
投資家の話に限定するのであれば、未上場企業などにとって、人的資本開示はそれほど重要でないかもしれません。しかし「労働市場との対話」や「組織の成長」という観点で考えれば、規模の小さな企業であっても、人的資本について考える価値は十分にあります。「開示」だけでなく、「活用」や「改善」もセットにして考えることが重要です。
※本記事の内容について参考にする際は、念のため関連省庁や専門家にご確認ください。
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