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近年、顧客や取引先からの悪質なクレームが増えているという調査結果があり、「カスタマーハラスメント」としても問題視されています。国でもこの問題を重く見て、消費者庁が「クレーマーへの対応マニュアル」を作成したほどです。
さらに最近になって、クレームに対処する時に使うべき言葉についても、新しい見方が出てきました。この記事では「D言葉」「S言葉」という二つのキーワードと、その上手な使い方について解説します。
企業にとって顧客満足度の向上は、企業ブランドを左右するほど重要な取り組みです。そのため各企業は、戦略的に顧客満足度を高める取り組みを行っていますが、それが顧客が求める満足度レベルを引き上げるという副作用が生じています。
カスタマーハラスメント(カスハラ)に関する最近の調査*でも、カスハラが増えていると感じる人の割合と、実際に経験した人の割合は共に4割程度に達しています。
実際に職場で働く人たちの声を聞いてみると、最近特に高齢者によるクレームが増えたこと、待つことを我慢できない人が増えたこと、ちょっとしたことで怒りをぶつけてくる人がいることなど、クレームの質も変化しているようです。
その一方で、具体的なクレーム対応策を準備している企業はまだ少なく、対応できる人材を育成するため、積極的に研修などを行っている企業は、全体の1割にも満たないという現状です。
上手なクレーム対応のポイントとして、最近注目されているのがD言葉とS言葉です。クレームに対処する時、ますます問題をややこしくしてしまうのがD言葉で、相手の感情を和らげる作用があるのがS言葉です。
それぞれ、言葉の先頭が「だ」「で」もしくは「し」「す」などで始まることから、そのように呼ばれています。では、ここからD言葉とS言葉の例と、それを使用することによる効果を検証してみましょう。
D言葉の代表が「だから」と「ですから」です。どちらも相手に再考を促した上で、あらためて説明をするための言葉ですが、興奮状態でクレームをつけている相手にとっては、バカにしているように受け取られる恐れがあります。 クレーマーは、この言葉の後を次のように考えてしまうかもしれません。
・だから(さっきも言ったでしょう)
・ですから(そんなことも分からないんですか)
もちろん、顧客に向かってそんな言葉を使うはずはないのですが、興奮している相手にとっては、自身の不明を指摘されたように感じられ、いっそう不満が大きくなります。 この二つのD言葉を返してしまうと、クレームに対処するはずが、ますます事態を悪化させてしまうでしょう。
同じように「でも」と「だって」も危険な言葉です。これらの言葉には、相手の言ったことを否定して自分の意見を押しつける働きがあります。この言葉から始めると、クレーマーは次のように続きを想像するかもしれません。
・でも(それは違うでしょう)
・だって(あなたが間違っているからでしょう)
クレームをぶつけてくる相手は、冷静に考える能力を失っている場合がほとんどです。それを正面から受け止めて反論するようなD言葉は、クレーム対応では決して使ってはいけない言葉なのです。
D言葉の危険性に対して、クレーマーの怒りを鎮める効果があるのがS言葉です。代表的なS言葉には、「その通りです」「承知しました」「失礼しました」「すみません」などがあります。
クレームに対処する最善の方法は、まず相手が言いたいことをすべて言わせてしまうことです。それから相手の話をよく聞き、冷静な状態で話し合うことが重要だといわれます。
S言葉には相手の主張を受け入れ、共感を表現する働きがあります。これらの言葉には相手の強い言葉を受け流す作用があり、場合によっては謝罪の意味も含みます。クレーマーも、S言葉に接続する反論は想像できないでしょう。
ほかにも「そうなんですね」や「そうなんですか」など、相手に同調する表現もS言葉に含まれます。ついD言葉を使いそうになったら、ひと呼吸入れて、それをS言葉に変換して口にすることが重要です。
クレーム対応という緊張するシーンでは、つい相手のペースに引き込まれて、D言葉を使ってしまうかもしれません。いざという時に、すぐにS言葉で対応するのはかなり難しいでしょう。
クレーム対応能力を高めるためには、研修などを定期的に行い、自然にS言葉が出てくるような訓練をする必要があります。まずはD言葉を避けることから始め、徐々にS言葉で対応できるように、職場全体で取り組むことが大切です。
クレームは大切な顧客からの意見であり、理不尽な言いがかりではない限り、その意見を尊重する姿勢が求められます。クレームに対処する時には、まず相手に言いたいだけ言わせてしまうことがポイントです。その上でD言葉を避け、S言葉で対応すればトラブルに発展するケースを減らせるでしょう。
しかし、最近は度を越したクレームが増えているともいわれています。クレーム対応でストレスが溜まり、仕事を続けられなくなった事例もあると聞きます。企業は対応を担当者任せにせず、しっかりとした対応策を整えておく必要があるでしょう。
*【調査概要】
調査期間:2021年3月25日~26日
調査対象:全国の20代から60代の男女
調査対象職種:営業・販売、一般事務、専門職、総務・人事、カスタマーサポート、
顧客管理・品質管理、技術・設計、情報処理システム、生産・製造等
対象条件:企業でクレーム対応を行った経験のある会社員1030人
調査方法:インターネット
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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