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公認会計士を目指す人にとって、監査トレーニーは実務経験を積みながら試験勉強を続けられる環境として絶好の機会です。
しかし、監査トレーニーに応募しても、なかなか受からないという現実もあるのではないでしょうか。
この記事では、監査トレーニーの仕事や採用基準、受からない場合の具体的な対策をまとめてみました。
監査トレーニーとは、公認会計士試験に合格する前に、トレーニー(研修生)として監査法人で実務経験を積みながら受験勉強ができる制度を指します。
Big4など大手監査法人をはじめ複数の中小監査法人がこの制度を導入しており、働きながら試験合格を目指す受験生にとっては貴重な機会となっています。
監査トレーニー制度の主な目的は、有望な人材を早期に確保し、育成することにあります。
従来、公認会計士の採用は試験に合格した新卒者を中心に行われていましたが、人材不足が深刻化する近年では、優れた人材を早期に確保するための手段が課題です。
この制度によって、監査法人は試験合格前の段階で優秀な人材を囲い込み、長期的に育てていく見通しが立ちます。
さらに、採用した人材が働きながら実務経験を積むことで、試験合格後には自社の戦力として期待できます。
合格後にゼロから育てる必要がなく、すでに業務に慣れているトレーニーが現場へスムーズに移行できるため、効率的な人材活用が可能です。
こうしたプロセスを通じて、育成にかかる時間やコストを抑えながら、組織全体の生産性向上にもつながります。
一方で、監査トレーニー制度にはリスクも伴います。
トレーニーが試験に合格できなかった場合、せっかく育成しても監査法人としては期待していた見通しが立たない事態になりかねません。
また、合格できたとしても、その後に他へ転職してしまうリスクも考えられます。
そのため、監査法人はトレーニーを採用する際に、試験合格の見込みだけでなく、長期的に自社で活躍できる人物かどうかを重視します。
一般的な新卒採用以上に厳しい人物評価が行われ、ポテンシャルの高さやコミュニケーション力といった要素も重要な選考基準となるのです。
将来を見据えた組織の人員として、職場での適応力やチームでの協調性なども求められます。
監査トレーニーの仕事は、公認会計士の補助として業務を行いながら実務経験を積むものです。
ここでは、監査トレーニーの主な業務内容と1日の流れについて解説します。
監査トレーニーとしての業務は、公認会計士の監査業務をサポートする形で進められます。
具体的には、財務会計資料の整理や監査調書の作成補助などが主な仕事です。
例えば、貸借対照表(B/S)の現金預金や貸付金、借入金の項目について、データを確認し、正確性を担保するための突合作業が含まれます。
また、監査チームの一員として、確認状の発送手配や、Excelを用いたデータ集計作業などの業務も行います。
これらは公認会計士試験合格後の実務経験としてもカウントされるため、将来的に有用なスキルを身につける機会となります。
業務内容は基本的に実践的なものが多く、公認会計士の仕事を間近で体験することができますが、大きな責任が課せられることは少なく、プレッシャーが過剰にかかることはありません。
そのため、業務が原因で勉強が進まないというような状況に陥ることもないでしょう。
監査法人側もトレーニーが無理なく勉強と両立できるよう、業務範囲を調整するケースが多いようです。
監査法人におけるトレーニーの勤務時間は、通常9時半から17時半で、基本的に残業はありません。
午前中は、チームでのミーティングを行った後、担当するクライアントの監査業務に取り組みます。
クライアントごとに業務内容は異なりますが、突合作業や確認状の手配、データ整理といった業務を進めながら、会計監査に必要な知識を学んでいきます。
午後は、チームメンバーとの進捗確認や指導を受ける場もあり、スキルが身につきやすいOJTが豊富です。
退勤後は、1日の残りの時間を試験勉強に充てることになります。
しっかりとスケジュール管理を行えば、勤務後に4時間程度の勉強時間を確保することが可能です。
監査トレーニーの仕事は、公認会計士としての基礎を築くための貴重な経験です。
実務を通じて監査の流れやポイントを学ぶことができ、業務と試験勉強を効率よく両立させる仕組みが整っています。
このような環境での経験は、他の受験生にはない大きな強みとなるでしょう。
監査トレーニーとして受け入れられるためには、一定の基準をクリアする必要があります。
主な採用基準について、資格と年齢の観点から見ていきましょう。
監査トレーニーとして監査法人から求められる資格としては、公認会計士試験の一部科目合格者が有利です。
監査トレーニーは将来、公認会計士として活躍することを前提にしているため、公認会計士資格の取得に近い人ほど採用されやすくなります。
特に短答式試験合格者や論文式試験の科目合格者は高く評価される傾向があります。
昨今では人材不足の影響もあり、監査トレーニーの採用枠が広がりつつあるものの、実際の公認会計士試験にトライしている人材が受け入れられやすいことは明らかです。
また、USCPA(米国公認会計士)の科目合格者でも、監査トレーニーとして採用される可能性はあります。
ただし、USCPAは資格取得後も、日本国内で公認会計士としての独占業務ができないため、求人数が絞られる傾向があります。
USCPA科目合格者は、この点を理解した上で、自身の強みをしっかりアピールする必要があるでしょう。
前述のとおり、監査法人は、トレーニーとして採用した人材が試験合格後に長期的な自社の戦力となるかを重視しています。
採用において基本的に年齢制限はないものの、若い方が優先的に採用されることは事実です。
多くの場合、30代前半までが受け入れの目安とされており、30代半ば以降になると採用基準から外れることも少なくありません。
監査法人の目線に立つと、将来性のある若い世代を優先して採用したい意図は汲み取りやすいでしょう。
採用枠の拡大により、監査法人によっては多少の柔軟性が見られるものの、資格と年齢に厳しい判断が下される傾向は理解しておきましょう。
監査トレーニーには多くの公認会計士志望者が集中するため、内定をつかむのは容易ではありません。
なかなか受からない場合は、どのような対策が考えられるのでしょうか。
大手監査法人でのトレーニーへの応募は、人気が高く競争が激しいため、受かりにくいことが実情です。
一方、中小監査法人であれば倍率が低めで、監査トレーニーを採用する法人も増加傾向にあります。
全国には250社以上の中小監査法人が存在し、意外に待遇がいい法人を含めて、勉強に専念できる環境も整っています。
大手監査法人にこだわらず、中小監査法人にも積極的に応募しましょう。
ただし、中小ゆえに情報発信が少ないため、監査法人や会計業界に精通した転職エージェントを活用することが得策です。
監査トレーニーを採用する監査法人は、人件費やスタッフの負担が増加するリスクがあるため、採用の決定には慎重を期します。
監査法人側の立場になって考えると、リスクを負ってでも応募者が価値のある人材であることを示す必要があります。
受からない場合の対策は、この視点を踏まえることが重要です。
多くの応募者の中から自身が選ばれるためには、相手のニーズに応じられる素養を身につけなければなりません。
応募書類や面接では、トレーニーとしてどのような価値をもたらすことができるのかを具体的にアピールしましょう。
面接の準備は非常に重要で、十分な対策を行えば受かる可能性が高まります。
まずは、各監査法人の事前質問リストを入手し、Q&Aを作成することから始めましょう。
これらの質問に対する回答をしっかりと暗記し、即座に応答できるように練習することが肝心です。
転職エージェント経由で応募すれば、過去の質問例や面接の流れなど、詳細な情報を収集することができます。
事前準備の質が選考での評価を大きく左右するため、しっかりと対策を講じましょう。
監査トレーニーに受からない場合、会計事務所で働きながら公認会計士を目指す道も選択肢の一つです。
実は、会計事務所での勤務経験を持つ公認会計士試験受験者の合格率は高く、特に税務知識を身につけることで試験への対応力が向上します。
税務の実務に携わりながら資格取得を目指せることは、受験者にとって大きなメリットです。
監査法人での経験は叶わないものの、会計事務所での経験が将来的に監査法人への就職に役立つでしょう。
参考:「公認会計士を目指しながら会計事務所で働くのはあり?監査法人との違いを徹底比較!」
これから監査トレーニーの求人を探そうと考えている場合、自力で求人を探すことは、あまりおすすめできる方法ではありません。
例えば、監査法人の求人一覧ページを総当たりするようなやり方では、そもそも求人自体が見つからない可能性があります。
監査トレーニーの求人を探したい場合は、転職エージェントが取り扱っている「非公開求人」をチェックするのが効率的です。
自力で求人を探す手間を省けるだけでなく、書類添削・面接対策などのサポートも受けられるため、本気で採用を勝ち取りたいのであれば転職エージェントを利用しましょう。
監査トレーニーへの道は決して平坦ではありませんが、対策次第で採用を勝ち取る可能性は高まります。
大手に固執せず中小監査法人への応募を視野に入れることや、監査法人側の立場を踏まえ、面接準備を周到に行うことが打開策です。
また、会計事務所で働きながら公認会計士を目指す方法も一考に値します。
受からないことを理由にあきらめず、柔軟な考え方で資格取得に向けた一歩を踏み出しましょう。
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