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関税とは、輸入品に課される税のことです。貿易摩擦による米中の追加関税の報復合戦により、世界経済全体に影響を及ぼす懸念があるなど、関税をめぐる動きは、大きな国際問題に発展することがあります。
今回は、ビジネスパーソンとして押さえておきたい、関税についての基本を解説します。
輸入品に課される関税は、かつては、有力な国家財源の一つでした。しかし最近は、グローバル化や貿易の自由化の潮流により、関税を撤廃する方向へと広がっています。
アメリカが離脱したことで、最近は話題にものぼらなくなったTPP(環太平洋パートナーシップ協定)も、関税という障壁を取り除くことで、加盟国同士の自由な貿易を促進し、経済成長しようというものでした。
輸入品に関税が課されるということは、その分が価格に上乗せされることになりますから、輸入品と国産品に価格差が生じます。つまり、国内産業を保護するという役割も、関税にはあるのです。
アメリカと中国は、追加関税の報復合戦を展開しています。その理由は、安く輸出して高く輸入していては、国際収支のバランスが崩れて赤字となるからです。お互いに、自国に有利になるように関税率を設定します。
外国から輸入する商品より、国内で生産した商品が安ければ、消費者は国産品を買い求めるでしょう。ところが、輸入品の方が安ければ、同程度の品質であれば、輸入品を選ぶことに多くなります。そうなると、国内生産者にとっては死活問題となります。当然、反発の声も高まってくるでしょうから、対抗手段を取らざるをえなくなり貿易摩擦に発展します。
自国の利益だけを考えての保護貿易政策を続けると、貿易相手国にとっては不利な立場にさらされることになります。
1929年の世界恐慌では、各国が自国を守るため、関税の引き上げに走りました。その結果、世界の貿易量が激減し、領土拡大をめぐる侵略へと発展し、第二次世界大戦の一因となったとされています。
その反省から、自由貿易を拡大するための関税一般協定「GATT」が設けられたのです。そして、そのGATTを発展させたのが、現在の世界貿易機関「WTO」です。
貿易摩擦といえば、日米間でもいろいろとありました。1960年代後半は繊維製品、1970年代後半は鉄鋼製品、1980年代には自動車や電化製品半導体などが標的にされました。
いま、元徴用工問題や輸出規制で、関係が悪化している韓国が、日本製品をボイコットするため、踏みつけて破壊する行為などがテレビで流されていますが、アメリカでは日米貿易摩擦の標的となった日本車を破壊する行為がテレビで報じられていました。
かつては、高性能で低価格の日本車が、大量にアメリカに流れ込んだことで、アメリカの自動車産業は大打撃を受けたのです。その後、日本の自動車メーカーがアメリカに工場を建設して現地生産に踏み切り、雇用も現地で調達することで摩擦を解消していきました。
貿易摩擦は、貿易相手国との経常収支の不均衡や、輸出・輸入による急激な経済情勢の変化による国内産業の停滞によって生じるものです。しかし、自由な貿易が拡大することは、消費者にとっては商品選択の幅が広がり、よりよい品をより安く入手することができるようになります。
自国の産業を守り、育てていくことも大切です。しかし、世界経済が高度成長から熟成へと向かい、マーケットが縮小傾向にある中、関税という障壁を取り除き、グローバルな貿易を展開していくことも経済成長につながる要素といえるでしょう。
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