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働き方改革が本格化する中、年次有給休暇の取り扱いを一層厳格にしていこうという風潮が強まっています。いわゆる有休は労働基準法で最低限付与すべきタイミングや日数が定められていて、今後ルールに外れた運用をしている企業には、行政や世間の厳しい目が向けられるようになるでしょう。
今回は、企業によってセンシティブな問題となっている、年次有給休暇の付与するタイミングや具体的な運用方法についてご紹介します。
大企業を中心に週休二日制が一般的な現代。土日祝日またはシフト制による休日以外に、労働者が自由に取得できる有休は、通常の休日では消化できない予定や突発的な病気やケガの療養など、労働者が自分の意思でいつでも休める制度です。
企業側は労働者に有休の権利を一定のルールで与えなければなりません。有休の付与方法は労働基準法で定められています。
労働基準法で定められている有休は勤続年数によって異なります。
| 勤続年数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 |
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
この表の付与日数は法に定められた最低限の日数です。企業の判断で上乗せすることもできます。
有休をもっともシンプルに運用する場合は、法定日数を従業員の入社日に付与する方法です。従業員Aが4月1日に新卒入社したとしましょう。最初の有休の付与条件は勤続年数6ヶ月なので、新入社員は入社の4月1日から6ヶ月後の10月1日に初めて10日間の有休を付与されます。
その後は、勤続年数1年6ヶ月の入社翌年の10月1日に11日、2年6ヶ月後に当たる入社2年後の10月1日に12日というように、法定のタイミングに従って付与されていきます。
実は、労働基準法の運用に従ったこの方法はとても単純に見えます。しかし、全社員に適用すれば便利というと、そう簡単にいきません。
たとえば、毎年入社する社員がすべて4月1日なら有休の人事管理はとても楽です。しかし、企業の多くは中途採用の社員を雇用するため、新卒で4月1日採用入社以外の社員は、入社日がさまざまです。
もし、1月から12月まですべての月に勤続年数の異なる従業員がいる場合、有休の管理は非常に細かくなってしまいます。
では、人事管理の負担を軽くする方法はないのでしょうか。
従業員が多くなるほど、労働基準法の基本ルールに従った運用では煩雑になりがちです。そこで、全従業員に有休を付与するタイミングを社内で統一する方法がおすすめです。
前提として、1回目の勤続年数6ヶ月の付与するタイミングは従業員の入社日に合わせます。その後、2回目以降の有休付与は新年度の始まる4月1日にするなど、まとめて行うのです。
例として、8月1日に中途採用されて入社した従業員Bさんがいるとします。
この場合、1回目の有休10日分の付与のタイミングは入社日から6ヶ月後の2月1日です。
次の2回目の有休付与のタイミングがポイントです。原則通りならBさんの入社日から1年6ヶ月後に当たる入社翌々年の2月1日に11日付与されます。これを、全社員4月1日にまとめると、Bさんには入社翌年の4月1日に2回目の有休を付与するのです。
それからは3回目も厳密な勤続年数の付与条件のタイミングを迎える前の4月1日に付与していきます。
こうすると、入社日から1回目の有休付与のタイミングは従業員によってバラバラになっても、2回目以降からすべて4月1日になるので、管理が簡素化できます。
ただし、この「社内で同じ付与日にまとめる」方法は、勤続年数の条件を超える以前に前倒しで付与しなければいけません。極端な話、2回目の有休付与のタイミングが4月2日だからといって、ほぼ1年先の4月1日まで先延ばしすることはできないので注意してください。
勤続年数によって法で定められた有休日数が与えられますが、実はもう一つ、出勤率も付与の条件に含まれます。
ここで、年次有給休暇について定めた労働基準法第39条を見てみましょう。
「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。」
ここでの使用者は雇用側の企業のことです。つまり、有休は勤続年数にくわえて8割以上の出勤率をクリアした従業員に付与することになっています。
実際の運用の際には、従業員ごとの入社日から計算する勤続年数と合わせて、出勤率にも注意しておきましょう。
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有休制度は労働基準法によるルールに沿って従業員に付与しなければならないものです。ただし、法律通りに付与しようとすると、人事管理が煩雑になってしまう恐れがあるため、最低限法律で定められた付与タイミングを押さえた上で、前倒しで付与する方法が一般的です。
法定通りにいくか、前倒しで付与日をまとめるか。ぜひ従業員数や社内の人事管理の状況を見ながら付与するタイミングを判断してみてください。
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