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今後はクラウドサービスを利用した電子取引の運用で、さらなる規制緩和が進む見込みだ。その背景には何があるのか。法令の解説と最新動向を、SKJ総合税理士事務所の所長で帳簿書類電子化のスペシャリスト、袖山喜久造税理士に聞いた。
令和元年の終わりに、「電子帳簿保存法(以下、電帳法)」の改正方針が盛り込まれた2020年度税制改正大綱が発表された。国税庁OBの袖山氏は、国税局調査部在籍時には電帳法担当の情報技術専門官として納税者指導や事務運営等に携わってきた、電帳法の第一人者だ。今後は、規制緩和による税務関係書類のペーパーレス化が加速すると指摘する。
「電帳法は、法人税法や所得税法等で基本的に7年間の保存が義務づけられている国税帳簿関係書類の特例法で、保存にかかる負担を軽減するために制定されました。施行以来、何度か改正され、電子化を推進する国家戦略に沿って規制緩和されています。
電子取引にあたる電子請求書に関する保存義務は、法人税法上ではなく電帳法上での規定において保存義務が定められ、税務署への申請は不要でした。ただし、タイムスタンプを付与するか、改ざん防止に必要な対策を講じた社内規程を整備して運用する必要があったのです。今後は、外部からデータの書き換えができないクラウドサービスを利用して授受と保存を行い、一定の要件を満たしたクラウド上で発行側、受取側の双方が請求データを確認できる状態であれば、タイムスタンプや社内規程も不要になる見込みです」
正しい手順で電子化したデータは、紙の書類よりも信憑性が高いと見なされる。クラウドサービスの広がりを追い風に、経費精算や請求書業務の電子化は、ますますハードルが下がるだろう。
こうした電帳法改正の背景のひとつには、2019年10月から実施された消費税の軽減税率制度がある。さらに2023年10月からは適格請求書等保存方式、いわゆるインボイス制度が導入され、税務手続きはさらに厳格化する。
「インボイス制度導入後は、適格請求書発行事業者が交付する領収書や請求書、納品書等の保存がなければ消費税の仕入税額控除を受けられません。請求書の発行事業者も、発行控の保存が求められます。そして、納税者は会計処理の際には『適格請求書発行事業者登録番号』を照会し消費税処理を行う必要があり、請求書等の件数が多い場合には手作業ではとても処理できません。データ化による対応は必須で、そのためにも、電帳法の規制緩和で運用しやすくして電子取引を推進していこうという動きになっているのです」
請求書の業務処理プロセスで電子化を進めている企業は確実に増えている。データの改ざん防止など、いかに安全かつ確実に電子データを保存するかが、電子取引を推進していく上での課題となっている。
「現時点では、紙の書類上での法人印に相当する電子的な証明手段がありません。電子証明書はあくまで個人に対してしか発行できないのです。今後は、欧州連合(EU)で法制化されている『eシール(※)』の導入などが検討されています。eシールは法人名や住所、代表者、また適格請求書の登録番号もすべて登録することが検討されているため、付与された適格請求書なら、受け取った側は確認業務が不要になるという仕組みです。
現在は検討段階ですが、どのような形であれ、今後は国際的にも通用する仕組みが整備されていくでしょう」
※法人格や組織を証明する電子証明書。日本では2021年度を目途に制度化予定となっている。
ただ、インボイス制度は国税庁が電子取引を推進する理由のひとつでしかないという。電子化がもたらすものは、業務負担の軽減や効率化だけではない。内部統制の側面でみれば税務コンプライアンスの向上、税務調査リスクの軽減といったメリットもある。
「国税庁では、税務会計処理の監査機能の整備や、税務コンプライアンスが良好と評価される法人については調査期間や頻度を緩和する運営を行っています。税務コンプライアンス向上に取り組み、税務調査を必要としない会社を増やそうという考え方です。
『BtoBプラットフォーム 請求書』のようにクラウドでやりとりをして、そのサーバで発行側、受取側の双方が請求書データを見られる状態であれば、取引の透明化、プロセスの確実化といった意味で統制がきいています。つまり、税務調査の項目にならない可能性があるのです」
電帳法上の要件がさほど厳しくなく、税務署への申請・承認も不要なクラウドを活用した電子取引は今後も拡大するとみる袖山氏。
「電帳法の本質は、紙の書類をデータ化して保存することではありません。本来の電子化の意義は、データの活用にあります。紙を介さない電子データのみのやりとりは、今後も不可逆的に進んでいくでしょう」
※本記事は更新日時点の情報に基づいています。法改正などにより情報が変更されている可能性があります
帳簿書類電子化のスペシャリストである袖山喜久造税理士に、時代に則して改正されてきた「電子帳簿保存法」の最新動向について聞いた。袖山氏は、2020年10月の改正も見据え、規制緩和による税務関係書類のペーパーレス化が加速すると指摘する。
「電子帳簿保存法」に対応した『BtoBプラットフォーム 請求書』のようなクラウド型電子請求書プラットフォームであれば、紙で受け取った請求書を電子保存し、プラットフォーム上で電子請求書として一元管理が可能になり、ペーパーレス化を促進する。企業間で発生する請求書の受け渡し業務すべてを、ひとつのWeb(クラウド)システム上で行うことができ、これまで時間・コスト・手間のかかっていた経理業務を大きく改善することができる。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、最新情報や具体的対応は公式情報や専門家にご確認ください。詳細はご利用規約をご覧ください。
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