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「人的資本の開示」が企業の未来の価値を計るものさしになる日は近い!?「コーポレートガバナンスコード改訂と人的資本開示」シンポジウムレポート

公開日2022/02/09 更新日2022/02/14

2022年1月27日、一般社団法人日本パブリックアフェアーズ協会は、HRテクノロジー活用やデータ分析を経営に活かすことの有用性を啓発・推進する一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム(以下HRT)と共催でオンラインシンポジウム「コーポレートガバナンス・コード改訂(以下、CG改訂)と人的資本のこれから」を開催した。

冒頭の基調講演は、立教大学大学院ビジネススクール前特任教授で、東証一部上場企業の社外取締役を複数歴任する中川有紀子氏が登壇した。

グローバルの人的資本開示や組織改革などに精通する中川氏からは、世界各国と日本の人的資本開示に関する違いや、岸田新政権の「新しい資本主義」から見た今後の人的資本開示の流れなどを解説した。

2021年6月に施行された改訂コーポレートガバナンス・コードにも含まれていたが、今後の上場企業においては労働力をコストとしてとらえるのではなく、人材を資産と考えて投資していくことが主流となっていく、と予測した。

その人的資本への考えや計画、実施状況などが企業の「模倣困難なケイパビリティ」になるとし、企業の未来の価値を測るものさしは、これまでのPLにおける人件費や教育研修費の情報からではなく、B/S上の資本、資産の蓄積と開示を通じて評価されることになるだろうと予測した。

まだ明確なルールがなくこれから作っていく段階ではあるものの、国内市場再編後のプライム市場を選択した企業や同市場を目指していく企業は、人的資本開示に対して何らかの対策を始める必要がありそうだ。

2つ目の講演では、株式会社東京証券取引所の上場企画グループの池田直隆氏による「コーポレートガバナンス・コードの改訂と人的資本開示」、2021年のコード改訂の3つの項目について、現時点の上場企業がどのような対応をしているのか、最新の情報を紹介した。

取締役会の機能発揮に関する項目のうち、補充原則4-11①「取締役会にて必要なスキルを特定し、取締役の有するスキル等の組み合わせを開示すべき:その際、独立した社外取締役には他社での経営経験を有するものを含めるべき」に関しては、2021年12月末時点のTOPIX100対象企業の対応状況は、94社が満たしており残りの6社も対応予定であった。東証一部上場企業全体で見ても71%が満たしており、ここについては対応していない企業の方が少ない状況のようだ。

企業の中核人材における多様性の確保に関する対応状況では、補充原則2-4①「女性・外国人・中途採用者の中核人材への多様性の確保の考え方、目標、状況を公表すべき」「多様性の確保に向けた人材育成方針・佐内環境整備方針をその実施状況と合わせて公表すべき」の2点に関しての調査結果を共有した。TOPIX100社のうち89社が満たしているという結果だったが、内容を見ると女性活用に関しては多くの企業が対応しているものの外国人と中途採用者に関しは100社中20社程度と、まだまだ対応が進んでいない様子がうかがえる。

他にも、人的資本への投資の重要性に関する投資家と企業の意識のギャップや、人材投資の国際比較などを解説した。

CG改訂以降、人材投資の重要性が高まる中、今後のプライム上場企業を中心とした上場企業の対応がどの程度のスピードで進んでいくのか気になるところだ。

最後のグループディスカッションでは、上記2名に楽天証券副社長執行役員の平山忍氏、慶應義塾大学大学院特任教授の岩本隆氏、HRT代表理事の香川憲昭氏の3名を加えた5名によって、各専門分野の知見を活かした人的資本開示に関する議論が展開された。

ディスカッションに先駆け、モデレーターの香川氏は人的資本の開示に関する最新情報として1月17日の国会での岸田首相の発言を受け「政府の動きは想定以上に早く、2022年夏頃には、日本における人的資本の開示新ルールが発表されるだろう」というメッセージを伝えた。

ディスカッションでは、まず「CG改訂を受けて、企業経営者の人的資本に関する意識がどう変わったか?」という問いに関して、社外取締役として複数の企業に参画している中川氏は「金融機関の投資先に関する意識が変わったことで、経営者の意識も変わってきている」という私見を述べた。

次は「CG改訂で「人的資本開示」に関する項目がここまで多く追加されたウラにはどのような議論があったのか?」に関して、東証の池田氏からは東証内の議論の場で、有識者からの意見の一つとして「世の中の変化に合わせて企業がダイナミックな変化を遂げるにはそのための人材が必要」であるとの意見が挙がったことが伝えられた。

また、岩本氏は自身による日本企業の無形資産に関する調査分析や海外の調査レポートを引用し「企業価値に締める無形資産の割合が90%を占めるところまで来ている」ということを解説した。人的資本も含めた無形資産がこれほどまでの割合を占めるということは、公開されている財務諸表だけでは企業価値が判断できない状況になっていると言えるだろう。

平山氏からは楽天証券の現状を基に、経営者としてどのような考えで人的資本開示に取り組んでいるか、とそれによる自社の業績の変化に関して解説した。「新規口座開設が大きく伸びた要因は、新型コロナや気候変動などを端緒に世の中のデジタル化が進んだことが影響している」としつつも、それに適用するよう人的資本のマネジメントを変えた効果が徐々に出てきていることをうかがわせた。

今回のシンポジウムの各講演を通じてわかったことは、欧米各国でスタンダードになった「人的資本開示」の流れはすでに日本でも始まっているということだ。

コーポレートガバナンス・コードの改訂や政府・投資家の動きもあり、今回の人的資本開示に関する動きは予想以上に早い。早ければ2022年の株主総会辺りから、人的資本の開示は企業の資本の健全性を示すことにつながり、ひいては企業の将来性を判断する非常に有効な情報となっていくことだろう。

経営者や管理部門として、人的資本に関してどのように考え、どのようにステークホルダーと対話をしていくべきか、真剣に考えるタイミングがすぐそこまで来ている。まだ先の事と目をそらすことなく、しっかりと準備を進める必要がありそうだ。

協力:一般社団法人HRテクノロジーコンソーシアム

(取材・文:マネジー編集部 有山智規)

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