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先日総務省は、資本金が1億円超で、都道府県が課税する外形標準課税の対象となった企業数が、2020年度において約2万社であったことを公表しました。最も対象企業数が多かった2006年度と比較すると約1万社減少する形となり、現在注目を集めています。
そこで今回は、外形標準課税の課税対象となるかどうかを図る指標である資本金に注目し、財務上の位置づけや、企業が増資・減資をする理由について解説します。
資本金とは会社を設立するときに必要な資金のことで、株式会社では投資家、自己財産の出資によって形成されます。会社を立ち上げる際は何かと費用がかかりますが、資本金が重要な元手となるわけです。
決算書である貸借対照表においては、資本金は「純資産」として扱われ、「貸方」(表の右側)に計上されます。
「借方」(表の左側)に計上されるのは、企業の資産である「流動資産」(売掛金、受取手形など)や「固定資産」(土地、建物など)などです。貸方には、資本金などが含まれる純資産のほかに、資産を構成するための元手となっている「流動負債」(買掛金や支払手形など)や「固定負債」(長期借入金や社債など)なども含まれます。
2006年の会社法改正に伴い、株式会社の資本金は1円でも問題ないことになりました。ベンチャー企業が市場に多数参入するなか、ビジネスの場における事業形態が多様化しており、少ない資本金でも起業できる環境が整えられたわけです。
しかし、実際に資本金1円でゼロから事業を立ち上げて成功できるかというと、難しい面があります。というのも、資本金の大きさが、会社の信用の大きさと比例するからです。
たとえば、企業が金融機関から融資を受ける場合、先方から返済能力や財務的な体力が問われます。その際、返済する必要のない資本金をどれだけ有しているかは、企業体力を測る指標となります。いわば、資本金が大きいほど貸し倒れのリスクが少ないと考えられ、より信用されて融資を受けやすくなるわけです。
また融資だけではなく、取引先から掛買いや手形での取引をする際も、資本金の額は信用度を測る上での指標となることが多いです。
資本金は大きいほど財務基盤を強化でき、社会的な信用性の増加にもつながりますが、増やせば増やすほどいいのかというと、必ずしもそうとはいえません。
たとえば、資本金を増やすために株式を発行すると、既存の株主にとっては不利です。発行株式数が増えるほど、既存株主にとっては1株当たり利益や議決権の割合が減ってしまうからです。そのため、資本金増資に対しては株主が反対する可能性があります。
また、資本金が大きいと、税制上の優遇措置を受けられなくなります。
たとえば、会社を設立した際に資本金の金額が1,000万円以下の事業者は、設立後1~2期の事業年度において、消費税が免税されます。
また、資本金3,000万円以下の企業が機械等を購入する際、「中小企業投資促進税制」に基づき、購入額の7%が税額控除の対象です。ほかにも、2022年現在の法人税率は23.3%ですが、資本金1億円以下の法人は、年800万円以下の所得部分に対しては基本15%の法人税率が適用されます。
資本金が大きすぎると不利になってしまう典型例ともいえるのが、冒頭でも紹介した外形標準課税です。
外形標準課税制度は、外形基準に基づく課税を行う制度です。外形基準とは、事業所の床面積や従業員数、資本金、付加価値など、企業の外部から客観的に判断できる指標のことで、外形標準課税制度は「付加価値割」「資本金割」などを基準として課税が行われます。
ここでいう付加価値割とは、報酬給与額、純支払利子、純支払貸借料の合計額と1年度分の損益を合算した額で、いわゆる企業が創出した「付加価値」とみなされるものです。一方、資本割とは各事業年度の資本金などを元に算出される額を指します。
この外形標準課税は、法人が立地している都道府県が課す税ですが、課税されるのは資本金1億円超の企業のみで、1億円以下の企業には課税されません。2006年時点では資本金1億円超の企業は約2万社がいたことを踏まえると、総務省の指摘通り、節税を目的として企業側が意図的に減資を行い、資本金を1億円以下に設定していると考えられます。この外形標準課税制度もまた、企業が資本金を増やしすぎない方がいいことの理由の一つであるわけです。
ただ、こうした方策を取る企業が増えることは、各都道府県にとっては税収の減少に直結します。2020年度における都道府県の税収は、2017年度比で約1,500億円減少していますが、外形標準課税逃れをした企業の急増が大きく影響していると考えられています。
資本金がどれだけあるかは、企業にとっては信用度にも関わる重要な指標です。しかし、資本金は多いほどいいというわけではありません。
その典型例の一つが、外形標準課税制度をめぐる大企業の動きです。資本金1億円超になると課税対象となるため、あえて減資を行い、課税を逃れる行動を取っていると考えられます。しかし都道府県はこのために大幅な税収減に陥っているので、今後何らかの対抗策を取るべく、動きを活発化させていくとも予想されます。
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