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クックパッド株式会社は、レシピサービスを軸に事業会社として2014年に創業。料理レシピを投稿・検索するサービスが人気になり、当時のサイト登録者は最高で約6,000万名を突破。その後、海外事業の展開、生活サービス事業との提携で事業を多角化しました。
しかし、2016年に創業者と当時の社長との間で経営方針に相違があり、創業者が取締役に再就任し、経営方針が刷新されるという出来事がありました。その後はコア事業の「料理サービス」に軸足を戻し、海外展開や料理から派生した事業、クックパッドマートで流通事業に参入しています。
今回は事業を原点回帰し、新たな成長を目指すクックパッドの執行役 / 取締役 / CFOである犬飼氏に、同社のCFOになるまでの経緯や経営刷新騒動を経てからのクックパッドの会社のあり方、バックオフィスに求める資質について、株式会社MS-Japanの執行役員・清水悠太が伺いました。
犬飼 茂利男(いぬかい もりお)/ クックパッド株式会社 執行役 / 取締役 / CFO
公認会計士試験合格後、朝日監査法人(現 有限責任あずさ監査法人)入所。
その後、ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパンに入社。
ベンチャー企業を経て、2016年7月クックパッドに入社。財務本部長を経て執行役 / 取締役 / CFOとなる。
経営革新後のコアメンバーとして活躍中。
――(清水)まずは簡単に、犬飼さんのご経歴を教えていただけますか?
私大学卒業後に公認会計士試験に合格しまして、当時の朝日監査法人(現 有限責任あずさ監査法人)に入社しました。
経験した業務は、主にM&Aに関する業務で、新卒から企業の重要な経営戦略に関わる責任のある仕事をさせていただき、非常にやりがいを感じていました。ただ、どうしても案件ベースの仕事で、一社に長く深くかかわることができないことに物足りなさを感じてしまい、ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパンに転職をしました。
その後、ベンチャーリパブリックという企業の立ち上げを経て、現職のクックパッドに参画しました。
――(清水)監査法人、外資金融、ベンチャー立上げと多様な環境を経験していますね。その上で、クックパッドへの参画を決めたポイントは何でしたか?
まずクックパッドは「毎日の料理を楽しみにする」というミッションに魅力を感じていたことがあります。加えて創業者の佐野が経営ボードに戻り、このミッションから軸をぶらすことなく、改めて世の中にチャレンジしていくという佐野の話に強く共感しました。
クックパッドのミッションの実現に自分も主体的にかかわりたいと思いました。
――(清水)犬飼さんは経営体制が刷新され、佐野さんが経営ボードに戻った2016年に参画していますね。その時のエピソードをお聞かせいただけないでしょうか?
ちょうど騒動の真っ最中に入社しました。入社後1年間は、多角化展開していた事業の整理に追われていました。
経営陣が変わり、元々クックパッドが強みとしていた「料理」に事業の主軸を戻すことは決まっていましたが、急激な変化だったので組織として統制が取れているとは言えない状態でした。
ここでお話しできない部分もありますが、私にとっては、これまで会社機能を整える経験があったので、クックパッドの再スタートのために、自分が貢献すべき役割だと考えて、仕事に没頭することができました。
――(清水)クックパッドの経営体制刷新は、世間的にも話題になりましたね。正直、ネガティブな意見もありましたが、結果的には良かったということでしょうか?
まだ「料理」に軸足を戻して、これから良くしていく過程ですが、事業を整理したことで、クックパッドという会社の特徴や強みを明確にできる状態になりました。
当時は料理と直接的には関係ないサービスも広く展開していたため、逆に単に「料理レシピを展開」している企業ということしか対外的には認識されていない状態になっていました。昨今、同様のサービスが出てきていることに加えて、Googleを中心とした検索サイトでも必要な情報が得られるようになっています。
明確な強みを持たなければ、競合に負けてしまうどころか、世の中に必要ないサービスになってしまいます。
ミッションを明確にして、クックパッドがどんな会社やサービスなのかを明確にすることは非常に重要と考えていました。定款でも「毎日の料理を楽しみにする事業」と明記しており、生活の中の作業として、ではなく生活の活力としてより積極的に料理を作る人を増やすための事業を展開するのがクックパッドの役割だと考えています。
具体的な変化としては、料理レシピサービスのUI/UXを重視しています。それを軸にシナジー効果がある料理に関する事業開発に取り組んでおり、積極的に投資も行っています。また、事業を広げていく方向性としても、料理を通じてフードロス問題や食にまつわる環境問題にも取り組んでいきたいと考えています。
――(清水)ハードな環境に飛び込まれましたが、組織としては健全化が進んでいるようですね。ただ、直近は3期連続赤字で厳しい道は続いていますが、今後の展開はどのように考えていますか?
開示資料から不安を感じられるのはもっともなことだと思います。
しかし、私としては今まさに変わらなければならないこの状況だからこそ、新しいことに挑戦できるチャンスだととらえているんです。具体的な一例として、生鮮食品EC「クックパッドマート」の立ち上げがあります。料理を作るためには欠かせない多様な食材が、手軽に手に入るよう流通サービスに参入しました。
既存の流通網では難しい食材の販売や在庫の問題にも注目し、フードロス削減にも取り組んでいます。食材自体や食材を手に入れる選択肢を増やすことで、「毎日の料理を楽しみにする」ことにもつなげたい。世界中の人を料理で幸せにできることはまだまだあります。私含め経営陣は、やろうとしていることの1%しか実現できていないと考えています。
――(清水)犬飼さんはじめ経営陣の気持ちが伝わってきます。
今、新しい挑戦が必要なクックパッドにとって、必要なのはどんな人材ですか?
職種や職位などに関わらずリーダーシップがある人材です。ベテランも若手も、リーダーシップを重要視しています。
私どもの考えるリーダーシップとは、問題に対して社員それぞれが自発的に行動することを意味しています。そのため、自分の意志を持って行動できることを、人事評価の基準にしています。一般的に組織は俗人化を嫌いますよね?しかし、クックパッドでは、会社にとってプラスになる取り組みならば、属人化されていてもよいと考えています。組織としての調和も重要ですが、必要なことを実直にできる人が、結果的に周囲を巻き込み組織をリードしていくと考えています。
実際に最近あった出来事では、株主総会の運営業務は、おおよそ前年と同じような流れで行う企業が多いと思います。しかし、当社で「株主総会を通じて、株主の皆様に提供するゴールは何か?」といった、根本的なところから議論をスタートします。何をするにも、意志を持って決断することを役職問わず求めます。自分がする業務の判断を自分なりに考え決断していく経験が重要だと考えています。その分、成功も失敗も強く自分に返ってきますが、ぜひ失敗を恐れずに取り組む姿勢がある方に来て欲しいですね。
――(清水)御社には良い経験が積めそうなタイミングと環境があるようですね。「Manegy」のユーザーの管理部門の方々へ、これまでの犬飼さんのご経験からメッセージをいただけますでしょうか。
昨今は管理部門の人材にもリーダーシップが求められてきていると思います。
そのような会社から求められていることを理解し、意識的に仕事に取り組んでください。
管理部門は業務を定型化して効率化することが求められますが、その中でも日々、意志決定する場面があります。
常に自分事として、業務に取り組むことが大事だと考えています。
それによって、管理部門から組織の変化を起こすことも可能になるのだと思います。
――(清水)以上になります。本日はありがとうございました。
経営陣の刷新があり、足元では経営状態が悪い状況が続く中で、そのタイミングだからこそ自分が主体となってクックパッドの存在価値を高めていく気概を持った犬飼さんの熱い気持ちが伝わってきました。厳しい環境にこそ、個人としても組織、会社としても成長のチャンスがあり、安定していて変化がない環境では求められることがない、必然的なリーダーシップやハードシングスを乗り越える経験が存在するのだと思いました。
インタビュアー
清水 悠太(しみず ゆうた)/ 事業企画Division / 執行役員
2005年3月法政大学卒業後、株式会社MS-Japanに入社。
ベンチャー・IPO準備企業を中心とした法人営業を経験した後、キャリアアドバイザーとしてCFO、管理部長、会計士、税理士、弁護士を中心に延べ5000名のキャリア支援を経験。
現在は事業企画Division/執行役員として、マーケティングと新規事業・新規サービスの開発を担当。
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