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経理の日常業務で使っている会計ソフトはもちろん、営業の顧客リストや人事関連の資料など、会社のパソコンにはさまざまなデータが入っています。皆さんは、これらデータのバックアップはとっているでしょうか? バックアップをとっていないと、データが破損したときに復旧に大変な手間がかかります。ここでは、経理・総務担当者が知っておきたい「データ」のバックアップの知識をレクチャーします。
こんにちは。税理士の佐竹正浩と申します。
私の妻は麻酔科医をしていますが、「オンコール」という勤務体系があり、休日や夜間であっても緊急手術が決まると病院からの緊急電話で呼び出されることがあります。一般の会社では通常「オンコール」はありませんが、緊急電話での呼び出しが発生するときがあります。
それは、会社の経理や営業、人事など重要データの紛失や破損が発生したとき。休日や夜間であっても経理・総務担当者に緊急電話が掛かることがあります。特に休日や夜間の家族団らん、大事なデートの時間での緊急電話による呼び出しは避けたいものです。
もし、会社の重要データの紛失や破損が発生したとしても、「データ」のバックアップが確実に取られていて、自分以外の会社にいる誰かがバックアップされている「データ」から復旧することができればどうでしょうか。
休日や夜間の緊急電話での呼び出しはなくなるでしょうし、もし緊急電話があったとしても、電話で必要事項を伝えれば済むはずです。平日に定時退社をしていても責められるなんてこともありません。
データ紛失は会社の信用問題にも発展する
ところで、税理士である私がなぜ「データ」バックアップについて関心を持つようになったかというと、2つの理由があります。
一つは、人事システムを扱うシステムエンジニア時代にバックアップの重要性を感じたことからです。
大学卒業後、私はIT企業に就職しました。そこではシステムエンジニアとしてお客様の人事システムを管理、運用するという仕事を担当し、数千人、数万人の従業員データを扱っていました。従業員のボーナス計算に必要な何万件もの人事評価のデータ、どの従業員がどんな部署に所属していたのかという経歴データ、毎月の給与計算に必要な基本給や手当といった給与データなど様々なデータが存在しています。
もし、これだけの重要かつ大量のデータのバックアップができておらず、しかも、誤ってデータを紛失する、そんな事態が発生すればどうでしょうか。とても個人でなんとかできるというレベルではありませんし、自社だけでなくお客さまの会社も巻き込んでデータの復旧作業が必要になるでしょう。
その復旧作業で発生する時間とコスト、復旧作業をしなければ生まれたであろう売上や利益、更には会社の信用問題にも発展することを考えると何千万円、何億円という金額に換算できるはずです。
バックアップデータの価値は何千万円、何億円、あるいはそれ以上かもしれません。
そして二つ目の理由は、税理士になってバックアップデータの重要性を目の当たりにしたからです。
独立前と独立後ともに、担当しているお客様のほとんどは自社で会計ソフトへのデータ入力していただいています。そんな中、入力した会計ソフトのデータがなくなってしまった、そんなことが2度ありました。いずれもパソコンが壊れて、その中に入っていた会計ソフトのデータも使えなくなったのです。
幸いなことに1社は、USBメモリーにバックアップデータを保存していたので、入力中のデータはなくなったものの、1ヶ月前の状態に戻ることができました。もう1社はバックアップデータが同じパソコンの中にあり取り出せなかったのですが、税理士事務所と毎月やり取りをしていた前月までのデータから復旧することができたのです。
いずれもバックアップデータがあったからこそ、1ヶ月分のデータの紛失で済みましたが、これが決算時になってから1年分の会計データがなくなってしまった、となればどうでしょうか。
バックアップデータがあれば、そのデータから復旧作業をして終わりです。でも、「デバックアップデータがなければ、1年間これまで日々、会計ソフトに入力してきた時間を失うことになります。会計ソフトに入っている経理データだけでなく、営業や人事などのデータも同様です。1年分では済まず、会社設立以来のデータを失うことにもつながりかねません(図表1参照)。
2つのバックアップでトラブルを防ごう
バックアップデータがあるかどうかで、トラブルを防ぐことができるかどうかが変わるわけです。とはいえ、どんなバックアップをすればトラブルを防ぐことができるのでしょうか。トラブルを防ぐためには大きく2つのバックアップが必要になります。
(1)データを失わないためのバックアップ
まず1つめのバックアップは、「データ」を失わないためのバックアップです。
「データ」を失わないためのバックアップとは、パソコンやサーバーなどに保存している「データ」とは物理的に別の場所に「データ」を保存することです。
会社の重要データが1台のパソコンにしか保存されていないのと、2台のパソコンに同じデータが保存されていることを比べてみましょう。2台のパソコンに保存されている、つまり「データ」のバックアップができているだけで、データの紛失を防ぐ可能性は一気に高まり、安心感が生まれます。
また、物理的に「データ」を保存する別の場所には、別のパソコン、サーバー、USBメモリやDVD-Rなどのディスクといったものがあります。さらに、火災や台風、地震などの大規模災害に備えて、東京と大阪など、地域や場所を分けて保存するという観点も必要です。
最近は、インターネット上のスペースを利用することで、物理的にデータの保存場所を分けつつ、地域を分けて保存することも可能になっています。
(2)誰が見ても何がどこにあるか分かるようにするバックアップ
「データ」のバックアップというと、「データ」を失わないためのバックアップのように、物理的に別の場所に「データ」を保存するイメージを持つものです。しかし、もう1つ大切な「データ」のバックアップがあります。それは、誰が見ても何がどこにあるか分かるようにするためのバックアップです。
せっかく「データ」のバックアップをとっていたとしてもそのバックアップの存在を知っているのが担当者である自分だけだったらどうでしょうか。データの紛失や破損が発生したときに、バックアップの存在を知っている担当者と連絡が取れないなんてことになるとバックアップを取っていないのも同然です。
「データ」のバックアップを1人の担当者任せにせず、別の担当者であってもバックアップデータからの復旧作業ができるようにしておくことが大切です。
<後編へ続く>
記事提供:研修出版「月刊経理ウーマン」
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