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人事業務に携わり30代を迎えた方の中には、日々のオペレーション業務に追われるだけではなく、「もっと経営に直結する人事戦略に関わりたい」「一歩踏み込んだキャリアアップを実現したい」とお考えではないでしょうか。
特に戦略人事の経験を積み、最終的は経営幹部であるCHRO(最高人事責任者)という高みを見据えている方もいるかもしれません。
少子高齢化による労働力不足が深刻化し、多くの企業が4大経営資源の中でも「ヒト」に少なからず課題を抱えています。
その中で、事業拡大に貢献する人事の役割として、「戦略人事」への注目が高まっています。
しかし、「具体的に何をすれば『戦略人事』に携われるのか」「『戦略人事』に必要なスキルはどう身につけるのか」など、具体的な道筋が見えにくいのも事実です。
この記事では、将来的にCHROも視野に入れた「戦略人事」に求められる具体的なスキル、その習得方法、そしてキャリアを切り開いた転職成功事例を解説します。
あなたの目指すキャリアを実現するための明確な指針と具体的な行動への一歩を見つけてください。
戦略人事は、経営層のパートナーとして事業戦略と連動した人材戦略の構築とその実行を通じて、事業拡大に貢献する役割を担います。
そのキャリアの到達点には、CHRO(最高人事責任者)が視野に入ります。
戦略人事が注目される背景には、主に二つの要因があります。
一つは、「人手不足に起因する人的資本経営へのシフト」です。
労働人口の減少に伴い、企業の人事に求める期待は、優秀な人材の採用から人材の育成と定着に軸足が移ってきています。
社員の最大限のパフォーマンスをいかに引き出すかが、企業の成長に大きく寄与する時代になりました。
これに伴い、人事はコストセンターではなく、企業経営の源泉である「人的資本」を最大化するプロフィットセンターとしての役割が期待されています。
もう一つは、「経営と現場、そして人材の『橋渡し』役としての重要性」です。
変化の激しい事業環境下で、経営層が描くビジョンや戦略を理解し、それを具体的な人事施策(採用、配置、評価、育成など)に落とし込み、現場の社員に対して実行・浸透させる「翻訳と実行」の機能が不可欠となっているためです。
この戦略人事の対極にあるのが、旧来の人事業務の大半を占めているオペレーショナル人事です。
| 項目 | 戦略人事 | オペレーショナル 人事 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 事業成長と企業価値向上に貢献する人事戦略の策定・実行 | 規定・法令順守と円滑な業務遂行(給与計算、勤怠管理、入社・退社手続きなど) |
| 業務の性質 | 未来志向・変革的 (制度企画・組織設計・M&A対応など) |
過去・現在志向・定型的 (ルーティンワーク・現行制度の運用) |
| 求められる 能力 |
・企画力 ・経営理解 ・データ分析 ・対話、合意形成力 |
・正確性 ・法令知識 ・事務処理能力 |
| 視点 | 経営全体・中長期 | 人事制度・短期 |
戦略人事と呼べるレベルの経験として、「単に制度を作った」だけでなく、「経営層との対話を通じて、経営戦略の実現のために人事戦略を描き、実行できるかどうか」という点が特に重視されます。
この「対話」を成立させ、戦略を具現化できる人材は、将来的にはCHROといった経営層に近いポジションを目指すことが可能です。
ご自身の業務をオペレーショナル業務から戦略領域にシフトしていくための具体的な行動として、以下のようなタイミングでの行動が重要になります。
これを経験できるか否かが、転職市場でのあなたの評価に関わってきます。
戦略人事に求められる核となるスキルは、企画力と経営理解を土台とした客観的なデータ分析力、合意形成力、そしてHRテックの活用能力です。
これらはすべて、経営課題を人材戦略に落とし込み、関係者の合意を得て実行するためのツールとなります。
戦略人事は、経営課題を人材戦略に落とし込むことが最初の仕事です。
具体的には、「売上を〇〇%伸ばす」「新規事業を成功させる」といった経営層の目標に対し、「そのために必要な人材は?」「現行の組織・評価制度で足りるか?」という問いを立て、具体的な施策に変換する能力です。
この際、経営者のビジョンや意図を正確に理解するための経営知識(財務、事業構造、市場動向)が不可欠となります。
特に経理・経営企画経験者は、財務諸表を基に人的投資対効果を論じる能力が大きな強みとなります。
また、自身の企画を経営層に採用してもらうためには、論理的かつデータに基づいた説明能力、すなわち経営者とのコミュニケーション・折衝力も必須です。
戦略人事が打ち出す施策が「なんとなく良さそう」ではなく、「効果が見込める」ものであることを証明するには、客観的なデータが不可欠です。
人材データ(採用経路、離職率、パフォーマンス、エンゲージメントなど)を収集・分析し、課題の特定や施策効果の検証を行います。
具体的には、ハイパフォーマーの特性を分析して採用基準を改善したり、離職予備軍を特定して手厚いフォローを設計したりします。
会計士や税理士といった数字に強いバックグラウンドを持つ方は、この分析スキルや論理的思考力を戦略人事のキャリアで活かすことが可能です。
施策の成否を測るためのKPI設計を行い、PDCAサイクルを回す能力も含まれます。
経営層との折衝において、人事が最も失敗しやすい、あるいは「足りていない」と指摘されがちなスキルとして「客観的なデータを使った分析ができないこと」が挙げられています。
戦略人事の経験を積むのであれば、自身の提案が「感覚論」ではなく「数字と論理」に基づいていることを証明できる必要があります。
それができなければ、経営に判断を促すことはできません。
例えば、新しい評価制度を提案する際、「現行制度下での人件費対効果」や「制度変更によるシミュレーション」をデータで提示できることが、経営層との対話の出発点となります。
人事施策は、経営、現場の管理職、一般社員、場合によっては労働組合といった多様な利害関係者に影響を与えます。
戦略人事は、これらのステークホルダー間の意見の対立や、制度変更への抵抗感を解消し、円滑に施策を導入するためのファシリテーションと合意形成力が極めて重要です。
「制度の押し付け」ではなく、対話を通じて「自分たちにとって必要な変化である」と納得してもらうための調整力が必要となります。
近年、タレントマネジメントシステムやBIツール(ビジネスインテリジェンス)などのHRテックの導入が進んでいます。
戦略人事は、これらのツールを単なるデータ管理システムとして利用するだけでなく、「いかに経営判断や人材戦略策定に役立てるか」という視点で活用できるスキルが求められます。
HRテック活用スキルの本質は、単にツールを導入することではありません。
「現状の課題に応じて、その解決のために導入を主導できるか」が重要視されます。
つまり、課題解決のために最適なツールを選び、データを活用して成果を出す戦略的な視点こそが、転職市場で評価されるポイントとなります。
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後編では、戦略人事に求められるスキルを発揮する具体的な実務シーンと、現職での小さな変革や外部ネットワーク活用によって戦略人事の経験を積む実践アプローチを解説します。
後編は、管理部門・士業特化型転職エージェント「MS-Japan」のサイトにて公開中です。
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記事提供元
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