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自社ビルとは、会社の費用で取得したビルのことで、土地を購入して一からビルを建設するケースと、中古のビルを購入するケースとがあります。自社ビルを持つには巨額の費用がかかるので、ある程度規模の大きい企業、もしくは昔から立地している老舗企業が所有していることが多いです。
今回は自社ビルを持つことのメリット、デメリットは何かについて詳しく解説していきます。
いわゆるオフィスビルには、購入して自社の資産とする自社ビルと、毎月賃貸料を支払って借りる賃貸ビルとがあります。自社ビルを保有するには多大の費用がかかるので、上場企業であっても自社ビルは本社ビルに限り、全国に点在する支店や事業所は賃貸ビルで済ませるケースが多いです。
高度成長期の頃は、都市部に自社ビルを建てることが積極的に行われていましたが、近年では出費を抑えるため、かつてほど作られてはいません。都市部に自社ビルを建設・購入できるほど会社が成長しても、賃貸ビルのままで経営を続けるというケースも少なくないようです。
企業向けの不動産業社である「CBRE」が2013年9月に公表した調査結果によると、東京23区内の上場企業1,720社のうち、本社が自社ビルである企業は全体の26%(450社)で、全体の7割以上にあたる1,270社が賃貸ビルでした。一定以上の規模を持つ上場企業であっても、自社ビルを購入して本社としている企業は少数派であるわけです。
また、企業の自社ビルの保有割合が高い業種としては、「食料品」(全企業の54%)、「機械・電機製造」(同41%)、「建設」(同41%)などが該当します。一方、賃貸ビルに本社を構える割合が高い業種は、「情報通信」(同89%)、「サービス」(87%)、「金融」(82%)等です。情報通信とサービスは9割近い企業が賃貸オフィスで経営を行っています。
さらに本社の所在位置についての調査では、自社ビルの所有企業では「都心3区」が43%、「周辺7区」が30%、「その他13区」が27%となっていましたが、賃貸ビルだと「都心3区」が59%、「周辺7区」が34%、「その他13区」が7%でした。同じ23区内でも、自社ビルだと都心部から離れた区に立地することが多いのに対して、賃貸ビルだと都心部に本社を構える企業が多いことが明らかにされています。
では本社を自社ビルにすることにはどのようなメリットがあるでしょうか。
まず挙げられのが、自社ビルを所有していることは企業として一定水準以上の資産を保有している証明となるので、信用度が上昇するという点です。金融機関からより融資を得やすくなる、ビジネス上の取引において相手に信頼されやすいなどの利点が得られます。
また、自社ビルなので建物の内装を自由に設計することができ、職場環境の快適性を向上させやすいという点も大きなメリットです。
自社ビルは購入時に大きな資金が必要ですが、長期的にみればオフィスの賃貸料を毎月払っていくよりも費用を抑えることができます。自社ビルの建設・購入後に計上する減価償却費も、企業の内部留保の蓄積や節税効果を発生させるので、損益計算書上においては大きな利点です。急な賃貸料の値上げなどがなく、コスト計算もしやすいでしょう。
一方で、自社ビルを持つことのデメリットも少なくありません。第一に、やはり初期コストが高いという点は大きな難点です。さらに建設・購入後も、賃貸料ほどではないものの一定額の固定資産税、維持費用・補修費用が発生します。もしビルを取得する際にローンを組んでいるなら、利息分を加えた費用の負担も毎月必要です。
また、一度自社ビルを所有して本社として設定すると、会社の移転がしにくくなるという欠点もあります。建設・購入してから手放すとなると、資金面で大きなロスが発生しかねません。そもそもよほど立地条件の良い物件でなければ、売却する、または賃貸物件に転用する等は難しいです。こうした状況を考えると、一度自社ビルを取得してしまうと、そこから本社を転居することが難しくなることも予想されます。
さらに急成長している企業の場合、早い段階で小さな自社ビルを買って本社にしてしまうと、企業規模の拡大により社屋が早々に狭くなる恐れもあります。逆に、自社ビルを所有後に業績が悪化して企業規模を縮小した場合、使用しない無駄なスペースが増えてしまうでしょう。
自社ビルを所有することは、賃貸ビルを借りることに比べてメリット、デメリットがそれぞれあります。どのようなメリット・デメリットが強く現れるかは、企業が置かれている状況によって異なるので、購入を決断する前にできるだけ情報を収集し、十分に損益を検討することが大切です。なお現状としては、上場企業の約4分の3が賃貸ビルを使用しており、自社ビルを所有するケースは少数となっています。
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