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東京オリンピックは開催の是非や感染症対策の問題だけでなく、思わぬところにも問題が波及しました。その一つが危機管理体制です。
企業における危機管理は、事業活動を行う上で必要不可欠な取り組みであり、事件や事故、不祥事などを未然に防止する努力はもちろんですが、いざ起こってしまったときの対応などが問われています。
東京オリンピック・パラリンピックの重要テーマに掲げられていたのが、「多様性と調和」です。しかし、大会関係者の女性蔑視発言問題、容姿蔑視発言、雑誌インタビューで過去のいじめを武勇伝のように語っていたアーティストなど、人権関連の不祥事が多発しました。
この危機管理問題で、いま、戦々恐々としているのが、芸能人の広告起用や、アーティストなどとのコラボ企画を立案する、企業の広報・PR担当者です。
今回のオリパラでも明らかになったように、過去の不祥事や不謹慎発言・行動、いわゆる“黒歴史”を有する、「ブラック著名人」も決して少なくありません。しかも、どんなに昔のことでも、ネットやSNS上に過去のスキャンダルなどがすぐにアップされてしまう時代です。
では、「ブラック著名人」の起用を、事前に防ぐことができるのでしょうか。広報・PR担当者が取るべき危機管理対策は、CMやコラボ先の候補として名前が挙がったタレントを、ネットやSNS上でどのような評判・風評があるのかをチェック、いわゆる“身体検査”をすることですが、これがなかなか難しいのが現実でしょう。
危機管理の専門家によると、不祥事が明らかになったときには、「すぐに会見を開く」「真摯に謝罪する」「原因を明らかにし、改善すべき点を示す」などが、危機管理の基本対策のようです。
確かに、不祥事発覚後の会見の良し悪しによって、企業に与えるダメージが違うことは、これまでにも、何度も目の当たりにしてきたことでしょう。自己保身のためだけの会見を開いたことで、むしろダメージを大きくしてしまったケースもあります。
不祥事発覚による危機管理対応の過去のケースを見ていくと、社長直轄の部署が危機管理を担うような組織は、不測の事態にも十分対応できていることが多いようです。
つまり、企業の危機管理の成否は、経営トップの危機管理の重要性に対する認識と、それに基づく明確な方針指示にかかっていると言えるのではないでしょうか。
社会の複雑化、価値観の多様化に伴い、過去にはさほど問題とならなかったことが、企業に多大な損失・悪影響を与えることが増え、企業を取り巻くリスクは確実に多様化しています。
「ブラック著名人」とのコラボや広告起用を避けるためには、可能な限り危機を事前に予知することですが、広報・PR担当者がそのために費やす時間が取れない場合は、外部機関・評価会社・コンサルティング会社・SNS監視サービス等の活用なども検討する必要がありそうです。
不祥事が多発するのは、組織が何を大切にすべきか、何を優先すべきかを見失っているからだ、という危機管理専門家の指摘があります。危機管理の本質は、「組織づくり」そして「経営トップのリーダーシップ」にかかっているといっても過言ではなさそうです。
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