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日本の給与水準は、相変わらず低レベルの状態が続いています。しかし、厚生労働省の調査(2022年7月~8月)によると、従業員100人以上の企業2020社のうち、賃上げ実施、または上げる予定の企業が85.7%だったことがわかりました。多くの企業が賃上げを実施したようです。はたしてビジネスパーソンの実感はどうでしょうか。
賃上げを実施した企業の割合は、新型コロナウイルス感染拡大の影響などで、2年連続で減少していました。昨年より5ポイント増え、3年ぶりに上昇に転じたことは、暗いニュースが多いなかで、唯一明るい話題といえるかもしれません。
しかし、平均引き上げ額は月額5,828円です。電気代やガス代をはじめ、食料品や日用品などあらゆるものの値上げラッシュが続いているだけに、賃上げといっても“まさに焼け石に水のような引き上げ額”といった、切実な声も聞こえてきます。
賃金を引き上げた割合が高かったのは建設業などで、引き下げた割合が高かったのが娯楽業などです。コロナ禍の影響が色濃く反映した結果となったようです。また、厚労省は「コロナ前の状況には完全に回復していない」という見解を示しています。
さて、物価高騰が加速しているなかでの今年度の賃上げ額は、“焼け石に水”という皮肉交じりの声もありますが、連合は「ベースアップと定期昇給分を合わせ5%程度の賃上げ」を、来春の春闘方針として固めました。
一方、経団連も賃上げには前向きな姿勢を見せていますが、基本給を一律に引き上げるベースアップについては「慎重に検討すべき」と、どちらかといえば消極的な姿勢を示しています。
というのも、日本企業の給与体系が基本給をベースに残業代やボーナス、退職金を算定する仕組みになっていることが多いため、基本給を上げると人件費の総額が膨れ上がることになります。
業績が悪化したからといって、簡単に基本給は下げるわけにもいきません。そのため、一時的に手当などを増額することで賃上げに対応する企業が多いのですが、基本給を上げなければ、実質的な賃金水準の底上げにはつながらないとされています。
岸田首相も、「新しい資本主義実現会議」で、成長と分配の好循環に賃上げが必要という認識を示し、「物価上昇に負けない対応を労使の皆さんにお願いしたい」と、賃上げの実現を求めています。
政府も経団連も、賃上げを目指す姿勢ですから、春闘での賃上げ要求は、ますます勢いを増すことになりそうです。しかし、国内労働者数の7割を占める中小企業は、賃上げの流れに乗ることすら難しいのが現実問題です。
上場企業では軒並み業績を回復し、とくに輸出産業は円安が追い風となり、9月の中間決算の最終利益は、過去最高水準となっています。
しかし、中小零細企業はエネルギーや原材料の高騰が経営を圧迫し、従業員の賃金を上げたくても上げられない状態です。賃金を上げなければ人も集まらず、大手企業との格差は、ますます広がることが懸念されています。
また、賃上げの流れが、低賃金で働く非正規労働者にまで及ぶかどうかは、なかなか見通せない状況です。労働者全体の実質賃金が上がっていかなければ、成長と分配の好循環も景気回復も夢物語となってしまいます。来年は、給料が上がったと実感できる賃上げを実現してほしいものです。
日本では、給与から物価変動の影響を差し引いた実質賃金が、20年以上も低下傾向が続いています。つまり、5%程度の賃上げでは、いつまでたっても物価の水準に追いつかないのではないでしょうか。
■参考URL
テレ朝ニュース 85.7%の企業が賃金引き上げ 3年ぶりに上昇 引き上げ額は月額5828円 厚労省
テレ朝ニュース 大手企業の賃金の引き上げ率 4年ぶりに上昇 業績回復背景に
テレ朝ニュース 「来春の賃上げ必要」岸田総理 成長と分配の好循環に
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