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電子署名を行うことについて、「そんなの面倒だよ。せっかく簡単に電子契約できるようになったのに」という意見はよく聞きます。
しかし、果たして言われるほど負担ばかりなのでしょうか。
確かに、携帯電話を取り出して、ポチっとするだけで契約締結完了というものを見せられると、電子証明書を利用して電子署名をすることは、単純に作業が多いわけですから面倒という気分はわかります。
しかし、前述したように電子証明書を利用して電子署名を行うことには、現時点における電子契約システムの中で、ベストを尽くし、生じる可能生の低い紛争のためにも万端の準備をするという重要な意味があるのです。
比較対象を電子証明書の利用の有無ではなく、「紙、実印」を用いて契約を締結している状況にしてみてください。契約書作成2通、送り状つけて送付、返送待ち、ファイルで管理・・・これから比べれば、電子証明書の取得、電子署名行為なんて負担の範囲に入りません。
また、見方を変えてみると、一定の負担感があったほうが実はよいという見方もできるのです。利便性の高いものは、その性質から濫用されるリスクがあるのです。
最初はおそるおそる利用していた電子契約も、時がたてば、「さしたる意識もなくポチっと契約。」、「権限ないかもしれないけど私がポチっと契約。」、「上司は、契約は待てと言っていた気もするけどポチっと契約」「俺の代わりにポチっと契約しておいて。」といったように利便性に引っ張られ、契約行為の重要性が希薄化される危険があるのです。
電子契約の導入段階においては、あえて負担感を残すことにも意味はあるような気がします。
もちろん、重要度の低い契約にまで電子署名を使う必要はありません。そこは利便性を最大限に享受するところです。
ただし、使い分ける場合には、しっかりした運用ルールを。最初はルールを厳しめに定め(無署名電子契約範囲の限定、電子署名権者の限定、広義の電子契約締結権限の限定・・)実際の利用状況を見ながら、徐々にハードルを下げていくような方向にもっていくのがよいでしょう。
連載記事一覧
1.電子契約って何?(広義の電子契約と狭義の電子契約)
2.電子署名を当事者が行うシステムが重要なのはなぜ?
3.電子署名法からのプレゼント?
執筆者情報
啓明法律事務所 弁護士 小山 征史郎(おやま せいしろう) 第一東京弁護士会所属
2005年弁護士登録(58期)。
弁護士法人ポート法律事務所を経て、2016年から啓明法律事務所に所属。これまでは訴訟を中心に活動していたが、近年は電子契約に関心を持ち、これまでの訴訟を通じた弁護士経験を電子契約にフィードバックすることに注力している。
本年1月より、ペーパーロジック株式会社のLegal Teamとして、コラムの執筆や法的アドバイスを行っているほか、ペーパーロジックの各法対応製品(特に電子契約)に対して、関係法律法令等をふまえた法的バックグラウンド強化を支援している。
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