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従業員が妊娠した時に管理部門が行う対応は?

公開日2020/01/06 更新日2020/01/07
従業員が妊娠した時に管理部門が行う対応は?

総務省の『労働力調査2019年』によれば、女性の就業率(15―64歳)は71.2%に達し、前年同月比1.2ポイントの上昇。女性の就業率は年々上昇しています。この調査結果からも明らかなように、今や「女性の活躍がなければ企業が立ち行かない時代」になっています。このため「女性が働きやすい職場環境整備」は、今や企業の重要経営課題の1つであり「女性社員の仕事と育児の両立支援」はその最たるものでしょう。

今回は「自社の女性社員がめでたく妊娠した、育児休業を付与しなければならない。」そんな時、総務担当者はどのような対応をすれば良いかについて解説します。

出産前に事前に確認しておきたい項目

自社の女性社員から「妊娠しました。出産予定日は○月△日です」との報告を受けた時、総務担当者は女性社員の出産・休業に伴う手続きを速やかに進めなければなりません。その際、当の女性社員に確認しておくべき事項があります。それは出産予定日と「出産育児一時金直接支払制度」の確認です。

●出産予定日の確認

「産休(産前産後休業、以下同)の開始日は出産予定日によって決まります。自社の就業規則に産休規定がない場合は、労働基準法の規定に従います。

この場合、産前休業は出産予定日を含む6週間(双子以上は14週間)以内、産後休業は出産日から8週間以内です。産前休業は本人の申請に基づき付与しますが、産後休業は本人の申請に関わりなく6週間以内は就業させることができません。なお、出産日から6週間経過後、本人が職場復帰を望みかつ医師が支障ないと認めた場合に限り、企業は就業させることができます。

●出産育児一時金直接支払制度の確認

健康保険適用外の難産等になった際に支給される「出産育児一時金直接支払制度」は大半の医療機関が取り扱っています。この場合は本人と医療機関が支給申請をするので問題はありません。しかし、同制度を取り扱っていない医療機関の場合は、企業が医師・助産師の出産証明を「健康保険被保険者・家族出産育児一時金請求書」に添付して健康保険組合等へ提出しなければなりません。

このため、総務担当者は出産する予定の医療機関が出産育児一時金直接支払制度を取り扱っているか否かを、忘れずに確認しましょう。

●誕生した子供の扶養関係の確認

誕生した子供を本人の扶養親族とする場合は、前回の年末調整の際に提出された「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」にその子供を追加し、同申告書を変更する必要があります。このため、総務担当者は誕生した子供を本人の扶養親族とするのか、配偶者の扶養親族とするのか、の意思確認をしましょう。

実務上の手続き

女性社員の妊娠に伴う総務担当者の実務上の手続きは、「産休の手続き」、「育休(育児休業)の手続き」、「復職の手続き」に大別できます。

<産休の手続き>

●産前産後休業取得者申出書の提出

本人から産休に入る1カ月前までに「産前産後休業届」を提出してもらい、総務担当者は「産前産後休業取得者申出書」を作成し、健康保険組合等に提出します。

この手続きにより、本人の健康保険加入資格と年金受給期間はそのままで、産休中の事業主分と被保険者分の保険料支払いが免除されます。

●出産手当金給付の申請

産休中は、休業保障として健康保険の「出産手当金」を受給できます。給付額は標準給与月額の2/3です。

出産手当金の支給期間は、出産日前の42日から出産日翌日以後56日目までです。出産手当金給付申請手続きは、企業が本人の出産日から2年以内に行わなければ無効になります。

この手続きを行う際は、医師・助産師の出産証明を記載した「健康保険出産手当金支給申請書」と次の書類提出が必要です。

・本人の出勤簿写し

・申請期間と期間前1カ月分の本人の賃金台帳写し

・本人の母子健康手帳写し

・本人の健康保険証写し

●健康保険被扶養者異動届の提出

誕生した子供は、その日から健康保険被保険者資格を持ちます。このため総務担当者は、本人から「無事出産」の報告を受けたら、速やかに「健康保険被扶養者異動届」を管轄年金事務所へ提出し、健康保険被保険者の扶養手続きを行います。

<育休の手続き>

産休明けに育休を取る女性社員は珍しくありません。育休は「育児・介護休業法」が規定している休業制度です。企業は合理的な理由なくしてこの休業取得を拒否した場合は「不利益な取り扱いをした」とみなされ、行政指導を受ける可能性があるので、総務担当者には適切な対応が求められます。

育休は子供1人につき、産休明けの日(産後57日目)から原則としてその子供が1歳になる日(誕生日の前日)まで取得できます。さらに子供が保育園に入園できないなど社員側に合理的な理由がある場合は、子供が1年6カ月になる日まで休業を延長できます。

女性社員から育休取得の申し出を受けた際、総務担当者は次の手続きをします。

●育児休業取扱通知書の交付

女性社員が産休に入ったら、総務担当者はなるべく早くその社員に育休取得の意思を確認し、その意思がある場合は、育休開始予定日の遅くとも1カ月前に社内所定の「育児休業申請書」を提出してもらいます。それに基づき企業は「育児休業取扱通知書」をその社員へ交付します。

育児休業取扱通知書には、

 ① 育休取得の申し出があったこと

 ② 育休開始予定日と終了予定日

 ③ 育休を認めない場合は、その旨と理由

 ④ 育休中の待遇事項、復職後の賃金と職場配置

 ⑤ その他の労働条件に関する事項

    などの明示が育児・介護休業法で企業に義務付けられています。

    ●育児休業等取得者申出書の提出

    「育児休業等取得者申出書」を管轄年金事務所へ提出すれば、育休中の本人と企業の社会保険料支払いが免除されます。

    保険料支払いの免除期間は、育休開始月から終了月の前月まで(育休終了日が月末日の場合はその月まで)です。

    育休終了予定日より前に育休を終了する場合は「育児休業等取得者申出書・終了届」の提出が必要です。

    ●育児休業給付金の給付申請

    育休中は、休業保障として雇用保険の「育児休業給付金」を受給できます。給付額は標準給与月額の67%です。

    ただし、育休開始から6カ月経過後は、給付率が50%に減額されます。

    育児休業給付金の給付申請には「育児休業給付受給資格確認票(初回)」と「育児休業給付金支給申請書」を企業が管轄公共職業安定所(ハローワーク)へ提出しなければなりません。その後も2カ月に1回、企業は管轄公共職業安定所が指定する申請日に「育児休業給付金支給申請書」を提出しなければなりません。いずれの場合も「被保険者休業開始時賃金月額証明書」とその他所定の書類添付が必要です。

    <復職の手続き>

    復職については、産休・育休明けの女性社員がスムーズに職場復帰できるよう、総務担当者は本人と復職日前にメールや面談で復職予定日、勤務時間、担当業務などの打合せを行い、職場復帰態勢を整えておく配慮が求められます。

    ●育児休業等取得者申出書/終了届の提出

    健康保険・厚生年金保険の「育児休業等取得者申出書)/終了届」を管轄年金事務所へ提出します。

    ●育児休業等終了時報酬月額変更届の提出

    女性社員が職場復帰した際、産休・育休前と同一労働条件で勤務できるとは限りません。労働条件が変化すれば給与も変化します。給与が変化した場合、総務担当者は管轄年金事務所へ健康保険・厚生年金保険の「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出します。

    ●養育期間標準報酬月額特例申出書の提出

    3歳未満の子供を養育している女性社員は、子供養育のための時短勤務で給与が低下しても、「養育期間標準報酬月額特例申出」をすれば厚生年金制度の特例措置により、本人が将来受給する厚生年金額は減少しません。

    養育期間中の標準報酬月額が養育開始月の前月の標準報酬月額を下回る場合、総務担当者は管轄年金事務所へ厚生年金保険の「養育期間標準報酬月額特例申出書」を提出します。

    なお3歳未満の子供を養育している女性社員は、育児・介護休業法により子供が3歳の誕生日を迎える前日まで残業が免除されます。このため企業は1日の所定労働時間を原則6時間とする「短時間勤務制度」を導入しなければなりません。さらに子供が小学校へ入学するまでは、その子供を養育している女性社員の時間外労働や深夜労働も制限されます。ともすれば見過ごしがちな育児・介護休業法の規定なので、総務担当者は注意が必要です。

    育児休業を支援する助成金

    厚生労働省は女性社員の仕事と育児の両立を支援するため、企業に対して助成金措置を行っています。このうち、助成金給付要件が緩やかで、給付申請がしやすいポピュラーな助成金とされているのが次の3措置です。

    1.育児休業等支援コース 育休取得時・職場復帰時

    女性社員の育休取得と職場復帰の支援措置を実施した企業に給付される助成金です。

    ・育休取得の際は「育休復帰支援プラン」に基づき、対象女性社員の業務引継ぎを実施し、3カ月以上の育児休業を取得させた

    ・職場復帰の際は「育休復帰支援プラン」に基づき、対象女性社員に職場情報・資料の提供をした

    など、所定の要件を満たした場合に給付されます。給付額は育休取得時も職場復帰時も各28.5万円です。

    2. 育児休業等支援コース 代替要員確保時

    対象女性社員が3カ月以上の育休を取得し、その間に代替要員を確保し、育休を終えた対象女性社員を休業前の原職等に復帰させた企業に給付される助成金です。

    給付額は対象女性社員1人当たり47.5万円です。

    3. 再雇用者評価処遇コース

    育児・養育、介護、配偶者の転勤などでいったん退職した女性社員が、就業が可能になった時に復職を促し、適切に評価・処遇する再雇用制度を導入し、実際に退職した女性社員を復職させた企業に給付される助成金です。

    給付額は1人目が38万円、2―5人目が28.5万円などとなっています。

    この他にも「女性活躍加速コース」、「事業所内保育施設コース」など「女性が働きやすい職場環境整備」に向けた様々な助成金措置があります。総務担当者は自社顧問の社会保険労務士と相談し、優秀な女性社員を離職させない・復職させる「女性社員活躍プラン」を練ると良いでしょう。

    (注)本稿では女性社員に則して解説しましたが、育休は男性社員が取得するケースもあります。しかし、育休と復職の手続きは女性社員と基本的に同じです。

    まとめ

    産休取得から育休明けまでの期間は長い上に手続きも多く煩雑です。手続きに漏れがないよう、その手順をマニュアル化しておくと便利です。また、産休・育休の手続きは法改正の度に変わることが多いので、その際は手続きの確認と変更点のマニュアル修正も忘れないようにしましょう。さらに育休支援の助成金措置も年度ごとに変わる可能性があります。こちらも年度ごとの確認が必要です。

    ※本記事の内容について参考にする際は、念のため専門家や関連省庁等にご確認ください。

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