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新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中の人々が行動変容を迫られています。感染予防に徹しながらも、社会活動をどう維持していくかが大きな課題であり、ウィズコロナ、ポストコロナ時代においては、もとの姿に戻れないとの見解から、「ニューノーマル」(新常態)がキーワードとして語られるようになりました。
そもそもニューノーマルという言葉は、新型コロナウイルスの発生以前から存在していたもので、2007年から2008年にかけての世界金融危機や、2008年のリーマンショック後に世界経済が陥った構造的な低成長状態をニューノーマルと呼んだことが始まりといわれています。
また、2014年には中国の習近平国家主席が中国経済について「新しい常態に適応、戦略的な平常心を保っていかなければならない」と述べたことから、これがニューノーマルであるとして話題になりました。
新型コロナウイルスがもたらした影響は、人々が集まることによって生まれる感染拡大へのリスクを避ける必要があったことから、さまざまな業界に多大なダメージを与えてきました。旅行業界、航空業界、飲食業界、スポーツやコンサートなどの興行分野、さらには医療や教育分野と、その影響は計りしれません。
政府は一連の「Go To」施策によって、経済の回復を図ろうとしていますが、季節性インフルエンザとの同時流行なども懸念されており、非常に困難な状況が続いています。
そうした中にあって、ビジネスの現場においては、リモートワークやオンライン会議、時差通勤といったワークスタイルの変化、学校教育においてもいまだにオンライン授業が続いており、入試にもオンライン入試が登場するなど、さまざまな変化が生まれています。
飲食業界ではデリバリーサービスの比率が高まり、小売業界ではさらなるECの隆盛、通勤・通学では自転車の人気が高まる一方で、都市部の鉄道事業社は運行本数や運行時間の見直しが検討されるなど、業態転換やビジネスモデルに大きな変化が起きていることも、コロナ禍における課題を克服しようとする切実な対応であるといえます。
三菱総合研究所が発表した「新型コロナウイルス感染症の世界・日本経済への影響と経済対策提言」においては、短期から長期まで3つの柱による提言がなされています。
その中の長期的な視点からの提言「第三の柱:社会構造変革の契機に」には、以下の項目を挙げ、ニューノーマル時代にふさわしい内容となっています。
1. デジタルシフトで感染症・自然災害・人口減に強いスマート社会を創出
・遠隔診療・遠隔投薬(適用範囲拡大、医療機関のオンライン診療導入支援)
・オンライン学習(人材育成等ソフト面の支援、リアル・リモート最適事例の横展開)、キャッシュレス、デジタル・ガバメント(給付手続きのオンライン化等デジタル化基本三原則の徹底)
・自動運転、MaaS、ドローン物流の加速等
2. 人々の行動変容を踏まえた成長基盤整備、新ビジネス創出支援
3. レジリエントな経済社会モデルを世界へ提示・貢献
また、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)がまとめた「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」においても、リモート、オンライン、分散化、自動化、省人化をキーワードとした「デジタルシフト」、レジリエントなエネルギー社会、強靭なサプライチェーンによる「低環境負荷社会へのさらなる転換」を、ニューノーマルを実現するイノベーションの核であるとしています。
さらにイノベーション創出に重要な技術として、以下の4項目が紹介されています。
1.オンライン・コミュニケーション:テレワーク、オンライン化(授業、診療、会議等)
2.リアリティ:バーチャル会議、オンラインイベント、自動化・省人化(スマート農業・工場等)
3.信頼性・セキュリティ:接触抑制技術全般、smart決済(スーパー等)、インフラ、交通
4.環境・エネルギー対策:3R、環境材料、バイオ生産、天然物合成技術、再生可能エネルギーへの移行、エネルギーシステムの強靭性増強策
たとえ有効なワクチンが開発され、新型コロナウイルス感染症が終息したとしても、もとの常態(オールドノーマル)に戻ることはなく、ニューノーマルへの移行が進むといわれています。
グローバル化が進んだ現在においては、次々と新たな感染症が起きる可能性も指摘されています。さらに新興国を中心とした貧困や環境汚染、世界的な気候変動による自然災害なども、パンデミックを拡大させる要因となることから、国連が定めたSDGs(持続可能な社会)を意識した新たな社会変革への動きと捉えることができます。
コロナ禍で受けたダメージの短期的な回復を目指すのにとどまらず、長期的視野に立ち、ITを中心とした新たなイノベーションによってデジタルシフトを加速させ、新しい価値の創出と地球規模での持続的な社会の実現を目指すこと。それがニューノーマル時代に生き残りをかけた企業経営に求められる姿勢ではないでしょうか。
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