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SMBC日興証券は、東京証券取引所の第1部に上場している1327社(3月期決算企業)の2020年3月期の純利益合計が、前期比4.9%減の27兆7656億円となる見通しだと発表しました(2019年9月中間決算時の見通しを集計)。これは、原発事故の影響をいまだに受けている電気・ガス業界と金融業は除いた数値ですが、2年連続の減益となり、特に製造業の落ち込みが目立っています。いったい何が原因なのでしょうか?
SMBC日興証券の集計をもう少し詳細に見てみると、2019年11月に9月の中間決算値を発表した1327社は全体の99.9%にあたり、非製造業では増益となっているものの、製造業では14.7%の減益で、全体の足を引っ張る結果になっています。
製造業の業種内訳を見てみると、石油・石炭製品、鉄鋼は約80%減、非鉄金属は約50%減、電機や機械、自動車も軒並み減益です。9月の中間決算では多くの企業が通期業績予想を下方修正しましたが、その80%程度を製造業が占めています。
これは日本の上場企業の集計ですが、世界の上場企業に目を向けるとその結果はどうなっているのでしょうか?世界の約1万8000社を対象にした調査によれば、2019年7月から9月の純利益は前年同期比で8%減益となっていて、2018年から1年間連続して減益傾向が続いています。製造業の業績不振は、日本だけでなく世界中で起きている事象のようです。
シンクタンクやアナリストが、世界的な製造業不振の原因として挙げているのが米中の貿易摩擦です。2018年3月、米国のトランプ大統領が中国から輸出される鉄鋼製品に25%の関税をかける大統領令にサインし、中国との貿易摩擦が始まりました。これ以降ロボットや半導体製品などにも適用範囲を拡げていく米国に対し、中国も報復措置として大豆や牛肉、自動車などに25%の関税をかけ始めます。その結果、2018年中には米国に輸入される中国製品のほぼ半分、中国は米国からの輸入品の約70%に関税の上乗せを行い、完全に報復合戦となってしまいました。
2018年末にアルゼンチンで開かれたG20では、トランプ大統領と習近平国家主席とのトップ会談が行われ、一時休戦に向けて話し合うことで合意。何回か閣僚級の話し合いの場が設定されましたが、2019年5月、ワシントンでの交渉で結局物別れに終わってしまいました。この時の中国側の交渉姿勢に不満を持ったトランプ大統領は、さらに適用範囲を拡げ中国からのほぼすべての輸入品に対して関税を上乗せする手続きを開始、中国も報復の姿勢を見せましたが、本年6月のG20大阪サミットで再び交渉再開を決定したのが現在の状況です。
米国は当初、一般の消費者が購入しない原材料や部品を中心に関税をかけていましたが、家電製品や家具、衣料品にまで範囲を拡げてきています。米国内での消費意欲の減退が問題になり始めているほか、中国国内で製造を行っている米国企業(アップルやナイキ)からも、(高い輸入関税により)競争力が失われることへの懸念が提起されています。米国国内でも、この貿易摩擦は大問題となっているのです。
中国と米国の関係は、貿易摩擦の問題だけではなく中国の通信機器大手への締め付けに端を発する情報セキュリティに関わる問題、軍事力の均衡問題など多岐にわたる問題で悪化しています。つまり経済の問題以外でも両国は摩擦を起こしており、関税に関わる報復合戦はその摩擦が別のハケ口として表面化したものとも言えるのです。この先の見えない貿易摩擦は、世界や日本の製造業にどのような影響を与えているのでしょうか?
2018年の日本の主な輸出先を見てみると、米国と中国がそれぞれ約19%、続いて韓国7%、台湾5.8%、香港4.7%、それ以外が約44%(財務省貿易統計)となっています。関税と聞くと単に貿易収支の問題だと思われるかも知れませんが、関税がかかり原材料が高くなれば、その影響は最終製品の価格に反映されます。これは国内消費にも影響を及ぼしますし、輸出にも影を落とします。結果として両国の景気の減速に影響を及ぼすのです。
日本の2大輸出先である米国と中国がいがみ合って両国内の景気が減速してしまうと、製品や部品の輸出に依存する日本の製造業は、もろに影響を受けてしまいます。上場企業2期連続減益の元となったのは製造業ですが、これは体力のある上場している製造業の話です。日本に多く存在する中小の製造業では、今後減益だけでなく経営そのものに影響が出てくると考えられます。
また中国国内の景気減速と貿易摩擦は、中国に製造拠点を置く日本企業の経営状況にも影響を及ぼします。今までは原材料や加工代の安い中国で製品を作り中国や米国で販売していた製品が、中国国内では景気減退によって売れず、輸出品は関税上乗せの影響により米国で売れなくなってしまうからです。精密な加工や高品質を売り物とする日本の製造業は、強烈なダブルパンチを受けた格好となっています。
単に貿易に関わる問題だけで摩擦を起こしているのではない米国と中国。2030年にはGDPが並ぶと言われている両国の動向には、日本の経済も大きく影響を受けます。現在表面化しているのは製造業の減速ですが、景気は日本全体にすぐ伝播します。今後、非製造業やサービス業などでも当然その影響を受け始めるでしょう。この状況を決して他人事とは思わず、世界経済の状況を常に注視していきましょう。
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