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赤字でも上場できる!?赤字上場とは

公開日2020/01/30 更新日2020/01/31
赤字でも上場できる!?赤字上場とは

オンリーワン製品の開発に成功し、売上も順調に伸びているけど販促費が嵩んでいるので、創業以来業績は赤字続き。それでも経営基盤を盤石なものにするため、売上を早期に3倍にする計画があり、そのためにはもっと販促投資をしなければならない・・・。そんな中、業績赤字が続いているので銀行融資が期待できない場合にベンチャー企業が銀行融資以外の資金調達手段にしているのが株式市場への「赤字上場」です。

赤字上場とは

赤字上場とは、一般にベンチャー企業が株式市場へ業績赤字のままで新規株式公開すること。先行投資が必要な業態だったり、収益化まで時間がかかる事業だったりなどの理由から、直近の利益が出ていないベンチャー企業の資金調達手段の一つとされています。

株式市場へ新規株式公開をする場合、証券取引所は「形式基準」と「実質基準」の2つの新規株式上場審査基準を設けています。

このうち、形式基準とは流通株式時価総額、事業継続年数、経常利益額など上場会社としての適合性を審査するための定量的基準です。

実質基準とは上場会社としての適格性を審査するための定性的基準です。

例えば東京証券取引所の大企業向け「市場一部・二部」とベンチャー企業向け「マザーズ」の形式基準の相違点は次のようになっています。


市場一・二部マザーズ
流通株式時価総額10億円以上5億円以上
事業継続年数3年以上1年以上
純資産額10億円以上不問
経常利益額最近2年間合計5億円以上不問


このように形式基準において、マザーズの審査基準は一・二部よりかなり緩いのが特徴です。また実質基準の定性的要件も、次のように3つの項目が一・二部とマザーズは扱いが異なっています。

<市場一・二部><マザーズ>
第1項ː企業の継続性および収益性

継続的に事業を営み、かつ安定的な収益基盤を有していること
第1項ː事業計画の合理性

当該事業計画を遂行するために必要な事業基盤を整備していること。または整備する合理的な見込みがあること
第3項ː企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性

コーポレートガバナンスおよび内部管理体制が適切に整備され、機能していること
第3項ː企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性

コーポレートガバナンスおよび内部管理体制が企業規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること
第4項ː企業内容等の開示の適正性

企業内容等の開示を適正に行える状況にあること
第4項ː企業内容、リスク情報の開示の適切性

企業内容、リスク情報等の開示を適切に行える状況にあること


2つの基準を見ると、マザーズでは形式基準の純資産額と経常利益額は不問となっており、実質基準の要件でも「赤字上場は不可」とする文言はありません。

そこで日本取引所グループの『2019 新規上場ガイドブック マザーズ編』の「高い成長可能性に係る事項」のQ&Aを読むと、赤字上場に関して次のように説明しています。

Qː当社はメーカーです。今後3年間の利益計画で赤字が見込まれている場合でも、マザーズへの上場は認められますか。

Aːマザーズでは、上場直後における経営成績が必ずしも良好である必要はなく、過去の経営成績が右肩上がりではない場合でも、今後において高い成長可能性があると認められる場合には上場可能です。仮に上場時点で赤字となる計画であっても、例えば事業拡大のための研究開発や設備投資、営業活動等が先行しているなど現状の赤字理由が合理的であり、かつ長期的には利益を計上できる計画となっている場合には上場可能です。

経営赤字で資金調達に悩むベンチャー企業が、マザーズへ「赤字上場」する根拠がここにあると言えます。

赤字上場する目的

日本の株式市場では、上場の目的は一般に社会的信用力の向上、人材採用力の強化、キャピタルゲイン獲得の3つとされています。

このため、「マザーズに赤字上場銘柄の新規公開が続くと、個人投資家の投資意欲が削がれ、新規株式公開銘柄には値が付かない(買い手がいない)。したがって、事業基盤が脆弱なベンチャー企業の赤字上場は、株式市場全体へ悪影響を及ぼす」との意見があり、株式市場関係者の間では「赤字上場への警戒感が強い」と言われています。

ところが、日本よりベンチャー企業の赤字上場が活発な米国の市場関係者の場合、日本のそれとは違った「赤字上場観」を持っているようです。

米国の投資家の場合、「良い赤字上場と悪い赤字上場がある」との割切りがあると言われます。

ベンチャー企業は創業期、どうしても研究開発費や販促費の投資が先行します。この先行投資を売上拡大しながら回収してゆくのが、ベンチャー企業創業期の経営特性とされています。

この特性に対して、米国の投資家はベンチャー企業投資に対して2つの判断基準を持っていると言われます。それは、売上高成長率と営業利益率です。2つの合計が40%以上なら「良い赤字上場」と判断され、これが投資家の「40%ルール」と言われています。

例えば売上高が前年同期比2倍、営業損失が55%の銘柄なら40%ルールクリアなので「投資ゴー」。しかしその後、売上の勢いが鈍化し、例えば売上高が前年同期比25%増で営業利益率が10%増でもその銘柄は「投資ストップ」との判断です。

米国の投資家はこの判断基準でベンチャー企業投資の良し悪しを判断すると言われています。

しかし、ベンチャー企業投資の歴史が浅い日本の投信家の場合、米国投資家のような明確な判断基準を確立していないようです。

それはさておき、近年マザーズへ赤字上場し、投資家の間で話題になった新規株式公開銘柄にはこんなケースが見られます。

<営業損失19億円・純損失34億円で赤字上場したメルカリの場合>

中古品のフリーマーケット市場をスマホアプリで運営しているメルカリは2018年6月、東証マザーズへ赤字上場し、話題になりました。同社の新規株式公開時の業績(2018年6月期第3四半期)は売上高261億円、営業損失19億円、当期純損失34億円と、まっかっかの業績。そんな状態で上場した同社は「東京証券取引所マザーズへの上場に伴う当社決算情報等のお知らせ」の中で、業績について次のように説明しています。

当社グループが事業展開している「フリマアプリ市場」は世界的な環境意識の高まりに伴う消費者の消費スタイルの変容を受けて、さらなる成長が見込まれます。当社グループが

展開するサービスは主にC to Cのビジネスモデルであることから、ユーザ基盤の拡充や将

来のサービス拡大のための先行投資として多額の広告宣伝費を要します。現在、当社グループは海外における事業展開も進めており、競争環境等を踏まえて戦略的に多額の広告宣伝費を投入する可能性があります。広告宣伝費の投入状況によって当社グループの利益が左右されます。

また同社は、自社の事業展望を概略次のように説明しています。

「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げ、日本、米国、英国で「メルカリ事業」を展開すると共に、日本国内においては決済・金融関連事業を行う株式会社メルペイを設立するなど積極的な事業拡大を進めています。―中略―当社グループ主力事業のフリマアプリ市場には高い成長可能性があると考えています。平成30 年4月の経済産業省の報告書によると、日本における平成29 年の中古品市場規模は約2.1 兆円、そのうちネット上のC to C市場は約8404億円で、同市場において当社グループが運営するフリマアプリ市場は約4835 億円(シェア58%)となっています。同じく平成29 年の経済産業省の報告書によれば、1年間に排出される不要品の価値総額は約7.6 兆円にものぼり、中古品市場はさらなる拡大余地があることを示しています。このような事業環境において、事業成長に向けた戦略的かつ販促活動継続は不可欠と考えています。

当社グループの海外事業や新規事業も先行投資段階にあり、これらの戦略的投資により短期的な連結営業損益・純損益の損失額が拡大する可能性がありますが、中長期の事業成長を重要視した経営を行ってまいります。

同社の説明を要約すると、

➡売上高は順調に伸びている(前年同期比62%増の358億円/2018年6月期通期、以下同)が、事業拡大のために多額の販促費を戦略的に投入しているので、赤字決算(営業損失44億円、純損失70億円)が続いている

➡しかし、日本国内のネット中古品市場ではシェア58%の競争優位性を確保している

➡経済産業省の推定では、1年間に約7.6兆円の不要品が排出されており、中古品市場は今後も拡大が予測できる有望成長市場である

➡当社は中古品市場でさらなる成長を続けるため、今後も販促活動に戦略的投資を行い続ける

と言うことであり、これが同社の赤字上場の目的となっています。

この他、2019年はクラウド型名刺管理サービスのSansan、クラウド型経理サービスのfreeeなどが赤字上場して話題になっています。両社の赤字上場目的と赤字理由もメルカリのケースとほぼ共通しています。

赤字上場企業の将来性については誰も予測できません。しかし競争優位性の高い製品開発やビジネスモデル確立に成功したベンチャー企業は、業績が赤字続きでも株式市場から必要な資金を調達できる時代になっていることだけは確かなようです。

まとめ

赤字上場には錬金術的な魔力があります。この魔力に魅かれて安易に上場し、赤字経営からの早期脱却と経営健全化の努力を一刻でも怠ると、「倒産の道へまっしぐら」が間違いないと言えるでしょう。実際、赤字上場の先進国と言われる米国では、そうした例が珍しくないようです。

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