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2019年4月から始まった「働き方改革」により、職場環境の改善が企業にとっての喫緊の課題となっています。
仕事に関して何も不満を抱えていない人はいないかもしれませんが、実際にメンタルの不調によって休職・離職をする労働者は少なくなく、会社存続のためにも対策が必要な問題です。
しかし、必要なことだとわかってはいても、日々の業務の中でどこから手を付けていくべきか迷っている担当者も多いことでしょう。
今回は、職場におけるメンタルヘルス対策について、その必要性や取り組みのステップなどを解説します。
メンタルヘルス対策は精神障害や自殺などのリスクにさらされている人を支援するための取り組みで、特に労働者のための職場内における対策のことを言います。厚生労働省の定義によれば、メンタルヘルス不調は「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの」とされています。
近年、メンタルヘルスで問題を抱える労働者が増えてきており、政府は労働安全衛生法の改正や啓発活動などを通じて、労働環境の改善を訴えてきました。
メンタルヘルス対策は、労働者の健康を守ることはもちろんですが、同時に会社を守ることでもあります。
労働者がメンタルで不調を抱えれば、生産性の低下や業務上の事故を招くリスクが増します。精神障害などによる労災認定も近年急増しており、月80時間以上の残業で過労死レベルとされるようになりました。労働者がメンタルに問題を抱えることは会社の損失に直結するばかりか、社会的な信用を落とすことにもなりかねない問題です。
労働者が職業生活で感じるストレスの原因トップ3は次のとおりです(厚生労働省「平成24年労働者健康状況調査」より)。
1位:職場の人間関係(41.3%)
2位:仕事の質(33.1%)
3位:仕事の量(30.3%)
*( )内はストレスなどを感じる労働者を100としたときの割合
最もストレスを感じるのは対人ストレスです。職場でのいじめ・嫌がらせに関する相談が年々増えていることも無縁ではないでしょう。
2位と3位が仕事の質または量です。自分の能力に合わない業務ややりがいのない仕事をさせられたり、裁量権も与えられずに評価も報酬も不十分だったりすると、労働者は強いストレスを感じるようになります。
アメリカの連邦機関である国立労働安全衛生研究所(NIOSH)では、ストレス対策として次の7つのポイントを挙げています。
①過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること
②労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること
③仕事の役割や責任が明確であること
④仕事の将来や昇進・昇級の機会が明確であること
⑤職場でよい人間関係が保たれていること
⑥仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされていること
⑦職場での意志決定への参加の機会があること
概ね日本の労働者のストレス要因トップ3(人間関係、仕事の質と量)は、NIOSH が挙げている7つのポイントに含まれていることがわかります。やはり国は違えど労働者が感じるストレスの種類は似たようなものだと言えそうです。
メンタルヘルス対策を進める前に、まず大きく分けて3つの段階に分けられることを理解しておきましょう。
まずは労働者が体調不良を感じ始めるのを未然に防ぐことです。
そのためにできることは、ストレスチェックの実施と職場環境の改善です。
従業員にストレスチェックを受けてもらうことで、ストレスへの気づきを促し、不調を感じる前の対処をしてもらいます。
職場環境に関しては、室内の温度、照明、機械音といった物理的なものから、多すぎる会議、張りつめた雰囲気などの人為的なものまで、あらゆる要因が考えられます。まずは従業員全員に、職場内で感じるストレスについて無記名アンケートをするといいでしょう。
不調が出るのを未然に防げなかった労働者に対しては、悪化しないように適切な措置を行います。
ストレスチェックで不調の兆候が見られる労働者が、管理監督者や人事担当者などに相談したり、産業医や主治医の面談・診断を受けたりといった対応ができやすくします。労働者が自己判断で無理をしないように、相談しすい仕組みや雰囲気を整えておくことが大切です。
場合によっては、不調を訴える労働者には休養や治療が必要です。有給休暇の利用や傷病手当金の申請など、収入の不安を和らげるための情報提供も有効です。
療養後に職場復帰しやすいように、職場の雰囲気づくりが求められます。また、無理のない業務時間や人事配置などでも対処しましょう。
3つある段階のうちで最も重要なのは一次予防です。
残念ながら、メンタルヘルスの不調で会社を休職した労働者の離職率は42.3%で、がんによる離職と並ぶ高水準でした。しかもメンタルヘルスの不調は30代以下の若年層が多く、会社の将来設計にも大きく影響します。
まずは一次予防を徹底して、できるかぎりストレス要因を除去することです。メンタルヘルスは不調を感じ始めるとリカバリーが難しく、時間も長くかかります。
メンタルヘルス対策を進めるためには、厚生労働省が勧める5つのステップで取り組むといいでしょう。
まずは現状調査を行いましょう。ストレスチェックを実施したり、残業時間の実態把握をしたりして、従業員にどれだけのストレスがかかっているかの評価を行います。
職場環境の改善を主体的に進めるワーキンググループを組織します。
構成としては、産業医や衛生管理者などの産業保健スタッフ、社内からは人事・労務担当者、管理監督者、従業員などです。安全衛生委員会との連携も重要です。
おおよその構成メンバーが決まったら、職場環境の評価と改善のための勉強会や研修会を実施しましょう。
調査と組織づくりが完了したら、次は改善計画の立案です。
各メンバーからストレス要因となっている問題を話し合ってリストアップし、物理環境や作業環境などで分類するなどしながら改善計画を立てます。
計画立案をサポートするものとして、
・職場環境改善のためのヒント集(メンタルヘルスアクションチェックリスト)
・メンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)
・快適職場調査
といったツールが便利です。
計画に従ってメンタルヘルス対策を実施します。
計画通りに進んでいるか、何か問題は起きていないかなどを定期的にチェックします。
対策の効果や進捗など、実施状況の報告会を定期的に開くことにより、さらに円滑に対策を進められるでしょう。
改善計画完了後にその効果を評価・分析します。
計画通りに改善されたか、改善されていなければ何が問題になっているのかなど、具体的な数値や事例で明確な情報に落としこみます。中には改善が見られるには数年単位の時間がかかるものもあるので、評価を急ぎすぎないことも重要です。
効果評価を行ったら、改善計画を見直してさらに継続実施していきましょう。
もともとメンタルヘルス対策は労働者の権利や健康を守ることを目的に始められましたが、最近では会社の労務リスク対応としても取り組むべきものという考えに移行しています。
また、労働者が心地よく働ける職場環境を整えることは、生産性の向上や社会的な信頼にもつながります。
メンタルヘルス対策に最も重要なことは、そもそも心身に不調を来すストレス要因を除去して、未然に防ぐことです。そのために会社が着手すべき具体策は単純ではありませんが、実態調査と組織づくりの準備を行い、PDCAサイクルと通して実践可能です。
メンタルヘルス対策については厚生労働省が具体的な指針や方法を示しています。産業医などの産業保健スタッフと相談しながら進めていくのも一つです。専門家の意見を聞きながら、会社全体で取り組むことが大切です。
「心理的安全性」と「エンゲージメント」を可視化できるツール。通常のストレスチェックだけでは見えづらい心の状態が可視化されることで、社員が安心して働ける職場環境をつくり、人材の定着と組織改善に繋げられることができ、組織エンゲージメント・ハラスメントリスク・離職リスクなども含めた包括的な診断が可能です。
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