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最近、世間の耳目を集めたTOB(株式公開買い付け)といえば、伊藤忠商事による子会社のファミリーマートへの株式公開買い付け(TOB)の成立や、コロワイドによる大戸屋への敵対的TOBの成立でしょう。
この2つのTOB事例を中心に、最近のTOBの状況をおさらいしておきましょう。
企業がさらに成長するため、あるいは経営危機から脱するために、合併やM&Aによる企業の再編が進んでいます。また、TOB(Take-Over-Bid)で、証券市場を通さずに株式を大量に買い付け、経営権を手中に収めるという手法もあります。
TOBには、対象企業の経営陣の同意を得て公開買い付けする友好的TOBと、同意を得ずに行う敵対的TOBがあります。先日成立した大戸屋V.Sコロワイドの株を巡る攻防は、敵対的TOBの典型的なケースといえるでしょう。
「牛角」などを展開する外食大手のコロワイドは、定食チェーンの大戸屋ホールディングスを子会社化して、経営陣の刷新と店内での調理スタイルを見直すことを大戸屋経営陣に迫りました。
大戸屋の筆頭株主であるコロワイドの狙いは、店内調理からセントラルキッチンにすることによる、仕入れ・調達のコスト削減による効率化と、不採算店舗の整理です。しかし、「店内調理こそが大戸屋の持ち味」と反発して、敵対的TOBに発展しました。
大戸屋の経営方針を巡って対立するコロワイドは、45%の株式を取得して経営権を手にする予定でしたが当初の期限日に目標には届かず、取得目標を40%に引き下げ買い付けの期限を延長しました。
大戸屋は、対抗手段として食品宅配大手の「オイシックス・ラ・大地」と業務提携を発表、経営権を巡る攻防は激しさを増していましたが、9月8日コロワイドは自社保有分を含め株式の約47%を取得し、TOBが成立したことを発表しました。
一方、友好的TOBのケースが、伊藤忠商事による子会社・ファミリーマートへのTOBの成立です。
伊藤忠商事は、買い付け価格を1株2,300円で9.9%以上の株を取得し、ファミマ株の60%以上保有することでしたが、目標を上回る応募があり、保有比率は50.1%から65.71%となりました。
また、TOBに応じなかった株主の分は株式併合の手法で買い取り、保有比率をさらに高める方針で、伊藤忠はファミマとの一体経営を目指していくことになりそうです。
しかし、ファミリーマートの海外事業の立て直し、デジタル技術活用による次世代型のリテール事業構築、国内事業の立て直しなど課題も多く残されています。とくに、国内事業の立て直しは急務です。
サークルKサンクスなどとの経営統合で、規模では業界2位に浮上したものの、1日あたりの1店舗売上高では、国内首位のセブンイレブンとの差は大きく水をあけられています。
伊藤忠は、デジタルトランスフォーメーション(DX)をこれからの主力戦略として掲げ、ファミマを中心としたリテール事業で本格展開する方針ですが、これまでにない大型事業モデルとなるだけに、一体経営による意思決定の迅速化を実現できるかが、カギとなりそうです。
TOBにより、業績が上向くケースもあれば、逆のケースもあります。それぞれの長所を活かし、欠点を補うことができれば、業績向上も期待することができますが、かならずしもスムーズに運ぶわけではありません。
なかには、TOBの買い付け期間を何度も延長しながら、決着していないTOBもあります。ユニゾホールディングスを巡るTOBや澤田ホールディングス(HD)に対するTOBは、TOB開始から半年以上経過しても、未だに決着がついていません。
長引けば長引くほど、本業に集中できないばかりか、資金面でも大きな負担となるはずです。ましてや、コロナ後の経済状況も見通せないだけに、攻める方も守る方も、まさに抜き差しならぬ状態になるのではないでしょうか。
テレビドラマのテーマにもよく取り上げられる株の買い占め劇ですが、外野席で眺めている分にはスリル満点で、なかなか興味深いものです。
しかし、当事者となると、そんな悠長なことは言っていられません。ビジネスパーソンとしては、自社はもちろん、取引先の株の値動きにも、注意を払う必要がありそうです。
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