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国策として押し進められる健康経営。その概要と取り組む上での注意点を解説

公開日2023/08/17 更新日2023/08/16


先日、民間シンクタンクが、国内企業の健康推進担当者を対象として、従業員の健康関連のデータをどの程度活用しているかの調査結果を発表し注目を集めています。

調査結果によると、健康経営推進度の高い企業ほど、健康増進につながる経営理念や体制づくり、外部サービス(健康管理システム)の活用が進んでいることが明らかにされました。

そこで今回は、健康経営(※)の概要、国の施策、企業が取り組む上での注意点などについて考えていきます。

※「健康経営®」は特定非営利法人健康経営研究会の登録商標です。


注目が集まる「健康経営」

健康経営とは、従業員の健康管理を戦略的な視点で行うことです。従業員の健康を守るために企業が支援体制を整えることで、従業員の活力向上、生産性向上などの効果が期待できます。つまり、従業員の健康増進を実現することで、企業の業績・株価アップを目指すというのが、健康経営の基本的な考え方です。


健康経営の概念は、アメリカの臨床心理学者であるロバート・ローゼン博士が提唱した「ヘルシーカンパニー」の考え方を参照したものです。従来、労働者を雇用して利益追求を目指す企業経営と、従業員の権利保護にもつながる健康管理は、全く別のもの、時として相反する概念として捉えられるのが通例でした。


しかしロバート・ローゼン博士はこの常識を打ち破り、労働者の健康管理を適切に行うことこそ、利益追求につながるという、新たな考え方を打ち出したわけです。


健康経営が重視される背景にある少子高齢化、働き方への意識の変化

ロバート・ローゼン博士がヘルシーカンパニーの概念を提唱したのは1994年のことです。当時の日本企業ではバブル崩壊後の混乱期だったこともあり、この概念はそれほど大きく注目されることはなかったようです


しかし21世紀になってから、日本社会における少子高齢化の問題が深刻化しています。生産年齢人口が減少することで人材確保が難しくなり、現在の人材を有効に活用する必要性が生じます。


従業員が健康面に問題を抱えて入退院を繰り返すようになると、高度成長期など生産年齢人口が多い時代であればすぐに代替人材の確保も可能でしたが、少ない時代の現在ではそうはいきません。


従業員に健康を維持してもらって、企業に継続して貢献してもらうことの重要性が高まったわけです。少子化の進展により職場全体の平均年齢も高まり、健康管理に対する意識をより高めることが必要となりました。


また近年では、政府が2019年以降に推進してきた働き方改革の影響もあり、従業員自身の働き方に対する考え方が変わっています。かつては従業員に残業を求めるなど、長時間労働を強いることが多くの企業で当たり前のように行われていました。


しかし政府がワーク・ライフ・バランスの実現を重視する法整備を推進してきたことで、従業員の間でも過剰な労働を避ける考え方が広まりつつあります。


こうした風潮の中では、従業員の健康管理を軽視するような企業は、若い人材・優秀な人材が避けるようになります。つまり企業側としては、人材を確保して業績アップにつながる体制づくりをするという意味でも、健康管理を重視した経営が欠かせなくなったわけです。


経済産業省は健康経営優良法人認定制度を実施

健康経営の考え方は経済産業省も注目しています。平成26年度から「健康経営銘柄」の選定を実施し、平成28年度からは「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。取り組む省庁が国民の健康・福祉を管轄する厚生労働省ではなく、財政・経済を管轄する経済産業省である点も注目に値します。


この点からも「健康経営」の概念が、従業員の健康管理を企業の業績アップ、ひいては日本経済の活性化につなげることを重視するものであることが伺えます。


健康経営銘柄

上場企業を対象に、健康経営に優れた企業を選定して投資家にとって魅力のある企業を紹介する制度です。健康経営に関して、「経営理念・方針に位置づけられているか」「組織体制が整っているか」「制度・施策が行われているか」「取り組み内容を評価し、改善を図っているか」「法令遵守しているか」などを基準に選定が行われます。


健康経営優良法人認定制度

地域の健康課題への取り組み、日本健康会議が進める健康増進の取り組みを実践している企業を顕彰する制度です。「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の2つの部門があり、両方の部門で健康経営優良法人が認定されます。


健康経営を推進する上での注意点

健康経営に取り組む上で、企業としては以下の点に注意する必要があります。


健康経営への費用対効果が把握しにくい

健康経営に取り組む場合、従業員の健康増進・健康管理のためのコストが継続的に発生します。たとえば、健康経営の実現には医学的なサポートを受ける必要があるため、外部の専門事業者を活用することが多いですが、そのサービス利用には当然費用がかかります。


しかし、費用をかけて健康経営に取り組んだ結果、最終的にどのくらいの業績アップにつながったのか、その因果関係の把握が難しいのが実情といえます。企業の業績の増減には多様な変数が関わっており、「健康管理」の影響力だけを抽出するのは難しいのです。


従業員にストレスを与える

健康経営に取り組むことは、従業員に健康管理を求めることを意味します。もともと健康な人であれば問題ないものの、すでに生活習慣病・持病のある人にとっては、企業が健康経営を打ち出すことで「健康増進に取り組まないといけない」という義務感・ストレスを与える恐れがあります。


そのことで悩んで職場での活力をなくしたり、生産性を下げたりすると、まさに本末転倒です。健康経営は、従業員に負担を与えないような形で進めることも必要といえます。


まとめ

健康経営の普及は日本経済の活性化につながるとして、今や国策として実施されています。従業員の健康状態が悪く、欠勤や求職が相次ぐようになると、企業としては生産性低下・業績低下を招かざるを得ません。


とくに管理職など企業の中核人材となる中高年世代の健康が悪化すると、多大な損失を企業に与える可能性もあります。健康経営の促進が、日本経済再生の一助になるのは間違いないでしょう。


しかし健康経営には、費用対効果が把握しにくい、従業員にストレスを与える恐れがある、といった注意すべき点もあります。実際に企業として取り組む際は、新たな問題を生じさせないように配慮しながら進める必要があるでしょう。


■参考サイト
NTT DATA|企業による従業員の健康関連データ利活用の実態調査
経済産業省|健康経営


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