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働き方改革による多様な働き方への取り組み、さらにコロナ禍の影響もありジョブ型雇用を検討する企業が増加しており、日立製作所や富士通などの大手企業を中心に、ジョブ型の人事制度を導入する動きが加速しています。はたして、ジョブ型雇用は日本に定着していくのでしょうか。
リーマン・ショック後の決算で巨額赤字を計上した日立は、事業構造の転換に取り組み、人事制度の変革に着手しました。しかし、その前に立ちはだかったのが、これまでの新卒一括採用や年功序列の人事制度です。
このままでは「多様な人材を確保することができない」ことから、日立本体の一般社員にもジョブ型の導入を進める方針に舵を切ったようです。
また、富士通では2020年度から管理職にジョブ型を採用しており、来年度からは一般社員への適用を目指しています。NECも2023年度を目途に、全社員を対象にしたジョブ型人事評価制度を採用する方針を示しています。
このように、日本を代表する大手企業が相次いでジョブ型雇用を検討しているのは、デジタル化やグローバル化などにより経営環境の大きな変化に対応していくためです。これまでのような新卒一括採用・年功序列といった日本型の雇用システムでは、海外企業との人材獲得競争で負けてしまうという危機感があるからです。
では、ここでジョブ型雇用について改めて整理しておきましょう。ジョブ型雇用とは、職務に応じて適切な人材を雇用するというフレキシブルな考え方で、欧米ではスタンダードな雇用形態です。
つまり、企業が必要とする知識や経験、能力、資格を有する人材を、それぞれの職務(ジョブ)に応じて配置するという雇用形態で、年齢にかかわらず幅広く起用できるというのが特徴です。
一方、日本の企業が採用してきた雇用形態は、メンバーシップ型と呼ばれる雇用方法で、新卒一括採用で、入社後の研修で育成し、それぞれの適性に合わせて勤務地や職務を決めていくという雇用形態です。
ジョブ型は、必要に応じて専門スキルを有する人材を幅広く集めやすくなるだけでなく、一つのプロジェクトごとに募集し、雇用期間はそのプロジェクトが終了するまでという契約もできます。
メンバーシップ型は、終身雇用・年功序列という日本的な慣習が根底にあるため、能力が不足しているからといって簡単に解雇することもできませんし、新卒一括採用で雇った社員を戦力として育成するのは企業側の責任です。
この日本型の雇用形態を支えていたのは、高度経済成長です。企業の成長には労働力の確保が何より大切となりますから、企業は長期間にわたって人材を囲い込む必要があります。社員を長く会社にとどめておくために生まれたのが、長く勤めれば勤めるほど給料が上がっていく年功序列の賃金制度や、社員の生活の安定を保障する終身雇用制度です。
新卒一括採用・年功序列・終身雇用という、日本型のメンバーシップ雇用で競争力を高めた日本的経営手法は、社会学者エズラ・ヴォーゲルの著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で、高く評価されていたことを覚えているでしょうか。
この本が刊行されたのは1979年で、1980年代の日本経済はまさに黄金期です。日本製品が世界を席巻し、半導体メモリーも世界トップ、誰もが“電子立国ニッポン”を信じて疑わなかった時代です。
それが、デジタル変革の波に乗り遅れ、少子高齢化による労働力人口の減少、そしてグローバリゼーションによって国際的な競争にさらされ、日本経済の競争力の低下は目を覆うばかりという状況です。
そこで、こうした時代の変化に対応するために、ジョブ型雇用を検討する動きが加速しているわけですが、会社という組織のあり方をはじめ、雇用制度や労働環境自体を見直す必要性もありそうです。
ジョブ型雇用によって、自分のスキルを活かすために転職する人が増えることになるでしょう。そうなると、人材の流動性が高まることになります。しかしその反面、組織への帰属意識やチームワークの弱体化、さらには雇用の確保という課題もあります。日本の労働環境に合わせた制度設計が必要になるのではないでしょうか。
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