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長く終身雇用が続いてきた日本では、定年前に自らキャリアを終わらせることは考えられませんでした。しかし働き方にも大きな変化が生じ、近年は自分の意思で早期退職を選ぶ人も増えています。
この記事では、企業側と従業員側との両方の視点から、早期退職について検証します。制度の仕組みの概要から、実際に早期退職をすべきかどうかまで、労使双方の立場で考えるきっかけになるはずです。
過去における早期退職は、経営再建の一環として、いわばリストラの手段としての位置づけでした。あまりよいイメージではありません。しかし現在は業績が好調な企業でも、経営戦略の1つとして早期退職者を募ることがあります。
早期退職制度とは、企業側が定年前の退職を促し、それに対して自分の意思で応じる従業員が、一定の優遇条件のもとで退職する制度です。法的な拘束力はありませんが、以下に挙げる2つの制度が適用されます。
・希望退職制度
企業の経営再建のためなどに、一時的に行われるケースが多く、退職者には通常の退職金のほかに優遇措置がプラスされます。会社都合による退職という扱いになります。
・早期退職優遇制度
経営が悪化した企業に限らず、長期的計画に従って定年前の退職者を募る制度です。企業内部の刷新を目的とし、退職者の生活支援も視野に入れて実施されます。自己都合による退職という扱いになります。
何よりも重要な「人=人材」を削ってまで企業が早期退職を促すのは、日本の伝統的なビジネス慣習である終身雇用が、社会構造と合わなくなっていることが大きな理由でしょう。
ほかにも「2020年問題」として、景気がよかった時代から在籍する従業員への給与負担が、今の経済に比して重すぎるという問題もあるようです。
これらの問題を解消すると同時に、企業のフットワークをよくする意味で、早期退職制度が活用されています。いわば企業内の新陳代謝の働きもするわけです。
そのメリットはいくつかありますが、まず企業側からすると、早期退職で人件費単価の高い世代が減少すれば、大幅な人件費の削減効果が期待できます。その分のコストを、新たな経営戦略に充当することも可能になるでしょう。
将来会社を支えるべき人材を、早めに育てられるというメリットもあります。また、早期退職では退職者本人の意思が尊重されるため、企業側も従業員もリストラという感覚ではとらえません。社内外へのイメージが、経営合理化のためのリストラとは全然違うのです。
その反面、必要な人材まで流出してしまうという危険性があるため、なんらかの対策を立てておかなければなりません。さらに経験豊富な人材が退職してしまうと、場合によっては一時的に生産性が下がり、経営力にまで影響が及ぶというデメリットもあります。
早期退職者にとってのメリットは、企業側が提示する優遇措置が受けられることです。一般的には退職金の増額や、特別休暇の取得などが早期退職の条件に加えられます。
退職後に別な企業に就職し、早めに次のキャリアをスタートできることもメリットの1つでしょう。
一方では、再就職をしない場合安定した収入が見込めなくなることや、年金受給額が減額されるなどのデメリットもあります。早期退職に応じるべきかどうかは、将来のことまで見すえて検討する必要があるでしょう。
早期退職制度は今後も継続することが予想されるため、企業内での人事対応としては、第一に制度の詳細を策定して社内規定化することが求められます。
そしてもう1つ忘れてはならないのは、どのような従業員を早期退職の対象にするか、全体的な人事評価を行うことです。
ただし、企業の人事から見た従業員には、仕事を高く評価できる人とそうではない人とがいます。とはいえ早期退職とは、業務能力が低い従業員を整理する制度ではありません。人事では客観的な視点から、公平に従業員の評価を行わなければなりません。
こうした事前準備を整えてから、必要に合わせて早期退職者を募集することになります。募集要項を決定した上で、従業員に対して説明を行い応募者を募ります。
その後は応募者と面談を行うことになりますが、優遇措置などでトラブルが起こらないように注意する必要があるでしょう。また、会社として退職されては困る人材が応募してきた場合には、説得してでも思いとどまらせることを考えなければなりません。
そのほかにも、退職者の再就職をサポートすることや、退職後の生活支援なども人事対応として念頭に置いておきましょう。退職者からの業務引き継ぎを円滑に進め、それに代わる人材を育成するなど、管理職および人事が行うべきことはいろいろあります。
日本有数のメーカーが早期退職を募集したところ、およそ3,000人が応募したというニュースがありました。同社では数百億円の費用を計上するそうですが、結果的には株価が大幅に上昇し、社内外からも高い評価を得ているということです。
このように現代の早期退職制度は、ネガティブなイメージのものだけではありません。企業が将来的な経営戦略の一環として、早期退職制度を活用するケースも多いのです。今後は企業側も退職する従業員側も、それぞれがプラスになるような早期退職の活用法に目を向ける必要があるでしょう。
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