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Q:弊社はそんな制度がしっかりした会社ではないのですが、先日内定を出した候補者の方に、内定通知書と入社承諾書をお渡ししました。
今は返事をまっているところですが、その方から採用通知書はどのタイミングで頂けますか?との質問がありました。
私的には、内定時には内定通知書か採用通知書のどちらかがあれば大丈夫かと思っておりますが、この認識でよかったのでしょうか?
A:結論としては、貴社の認識でよいですが、入社承諾書の提出を求めていることから誤解が生じている可能性があります。
採用内定の通知書を送付すると、入社日を始期とする労働契約が成立したと解されることになります。
ただ、具体的な内容が不明であるものの、貴社では入社承諾書の提出を求めているので、内定通知書が始期付き労働契約の申込み、入社承諾書が労働契約締結の承諾であるとも考えられます。
法律論としては、このように考えても、入社承諾書を提出した時点で労働契約が成立したと解されますが、内定者は、入社承諾書を提出する以上、労働契約が成立した証しとして、採用通知書を送ってほしいと考えたのかもしれません。
改めて採用通知書を発行する必要はないですが、以上の点を説明して理解を得た方がよいでしょう。
内定通知は、あくまで採用の意思を伝えておくもの
内定通知は、採用する意思を伝えておくもので、正式な採用通知とは別物です。
新卒採用を例に挙げると、日本経団連の「採用選考に関する企業の倫理憲章」では、正式な採用内定の通知(連絡)は、卒業・修了学年の10月1日以降と定めています。
ですから、採用の意思を伝えていたものの、たとえば採用予定者が、卒業できなかったときや、採用に支障をきたすような行為があった場合などは、内定を取り消すことができるのが“内定”です。
よほどのことがない限り、内定=採用というのが、一応のルールのようなもので、就活中の学生は内定をもらうために活動し、企業の側は、できるだけ多くの優秀な人材を確保しようと、あの手この手の戦略を立てています。その一つが、内定を出すという約束をする“内々定”というのもあります。
始期付解約権留保付労働契約
正式な内定は、法律上「始期付解約権留保付労働契約」を意味します。
「始期付」とは、あまり聞き慣れない用語ですが、働き始める時期で、新卒の場合は4月となります。また、「解約権留保」とは、働き始める4月までの間に、何らかの不都合が生じた場合、内定を取り消す権利を、企業側が有しているということです。
内定を取り消す権利といっても、むやみやたらに内定を取り消すことができるわけではありません。客観的な合理性や、社会的にも相当と認められるケースに限ってのことです。
たとえば、内定者が犯罪や、反社会的行為にかかわった、あるいは経歴詐称が発覚した場合などです。また、企業が、採用が困難になるほどの業績悪化に陥ったときも、内定取り消しが認められることがあります。
ただし、国籍や思想信条、政治活動、組合活動などによる内定取り消しは、不当差別や不当労働行為に該当する場合がありますので、取り消す場合には注意が必要です。
お互いに安心するためにも説明が必要
人手不足を背景に、今年も就職戦線は売り手市場のようですが、就活中の学生にとっては、内定をより確実なものにしておきたいと考えているはずです。曖昧な口約束だけではなく、確約がほしいと思っているのでしょう。
もっとも、企業にとっても、それは同じです。筆記試験や面接を通じて、将来の戦力になると期待して内定を出したわけですから、内定辞退ということになれば、採用計画にも狂いが生じてきます。雇う側も、雇われる側も、お互いが信頼しあい、安心できるのが一番です。
そのためには、管理部門として、内定者に単なる口約束の内定と「始期付解約権留保付労働契約」について、詳しく説明しておくことも必要ではないでしょうか。
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